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34.智紀、田植えを見学す

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 週末は田植えだった。
 思ったより赤点の生徒が多かったらしく、見ててもいいけど参加は見合わせてほしいと言われた。というわけでピー太、ピーコも共に田植えの見学をすることになった。(何がというわけでなんだか)
 山根は農業管理部だから普通に参加し、緒方は一教科赤点だったから参加するらしい。内申点は大事だ。

「お前ら、赤点じゃなかったんだろ? なんでいるんだよ」

 緒方に恨みがましい目で見られた。

「見学だよー」

 稲村と村西も本当に付き合いがいい。稲村が答えた。

「見学だとう!?」

 緒方がヒートアップしている。

「だって、赤点の生徒以外は手伝っちゃいけないって言われたんだよー。でも見たいじゃん」
「貴様、期末を覚えてろよ!」

 緒方はやられ役の科白みたいなものをはいて、田植えに参加する生徒たちのところへ向かった。悪役かな。稲村がクスクス笑っている。なかなかいい性格だと思った。
 ピピーッ、ピーッ! と鳴き声が聞こえてきた。
 バサバサッと音がして、ピー太が飛んできた。そして俺の頭に留まる。

「ピー太」
「ピータ、ピータ、トモーノリー!」
「うんうん」

 かわいい奴め。時間差でまたバサバサと音がする。ピーコだった。ピーコもまた稲村の頭に留まった。

「わあ、ピーコちゃん。おはよう~」
「オハヨー」

 ピーコが返事をした。ピーコも少しはしゃべれるインコらしい。初めて知った。
 つーか、インコって普通に言葉覚えるよな。ずっと話しかけてれば。ってことは、毎日誰かが話しかけてて覚えたってことだ。ここにいるセキセイインコはやっぱり元から野生ではなかったんだろう。
 田植えはたいへんそうだった。
 ピー太がここにいるせいか、スズメやカケスも飛んできて近くの木に留まっている。そしてチイチイジェージェー鳴いててうるさいぐらいだ。

「鳥うるせええええ!」
「お前の方がうるさい」

 田植えをしている生徒からそんな声が上がったが、越野先輩に軽くはたかれていた。ああ、泥だらけに。
 そういうのも含めて、なかなかたいへんそうだった。田植えが終わった頃に食堂のおばさんたちがおにぎり等を運んできた。おいしそうだなと思ったけどさすがに俺たちがもらうわけにもいかない。

「山根、緒方、またなー」

 と立ち上がって声をかけたら何故か引き止められた。

「お前らもおにぎり食ってけよ」
「俺ら働いてないんだからダメだろ」
「大丈夫よ~、いーっぱい作ってきたからねー」

 おばさんが笑顔で言う。そして鳥の餌まで持ってきてくれた。ピー太、ピーコ、スズメ、そしてカケスにはどんぐりなどを持ってきてくれたらしい。カケスはどんぐりを食べるみたいだ。
 みんな餌をつついている姿がなんかかわいい。
 悪いとは思ったが俺たちもおにぎり1個と漬物をいただき、鳥たちが餌を食べ終えるのを待っていた。

「なかなかに賑やかだね~」

 嵐山さんが来た。

「明日は鷹匠の飛山君が来るから。来たら呼ぶからよろしくー」
「タカも一緒に来るんですか」
「うん、来るみたいだよ。タカのユーリ君だったかな。あの子もここが気に入ったみたいだから」
「そうなんですね……」

 ピー太だけでなく他の鳥たちとも仲良くできるならいいと思うけど、どうなんだろうな。どうしてもタカの方がピー太よりもでかいから心配でしょうがない。
 ピー太がカプッと俺の鼻を齧った。

「わぁっ!?」

 痛いというよりびっくりした。

「何すんだよ、ピー太」

 ピー太はふんすとしている。なんか心配スンナって言われているみたいだった。嵐山さんは笑って寮へ戻って行った。

「タカかぁー、近くで見ると緊張するよねー」
「留まってるかんじはあまりでかくないが……飛ぶとでかいな」

 稲村が軽くため息をつき、村西が考えるように呟いた。
 明日は顔合わせだっていうから、その時に無理だと思えば言えばいいだろう。嵐山さんだってピー太たちを大事に思ってくれてる……はずだ。
 だよな? そうなんだよな?
 俺の腕に留まっているピー太が俺を見てコキャッと首を傾げた。何を心配しているんだ? と言わんばかりである。お前のことだよと言いたかったけど、ピン、と立っている毛が安心しろと言っているみたいで、俺はつい笑ってしまったのだった。
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