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26.智紀、ピー太の小屋をまた見に行く

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 高校生の食欲舐めんな。
 昼食の後で寮の表に出ると、ピー太が頭に乗った。だから頭はだな……以下略。

「ピー太、肩には乗りにくいのかー?」

 ピピッ! とピー太が鳴く。なんとなく首を傾げたような気配がした。つっても頭の上に留まってるから見えないんだけど。
 生物管理部の先輩たちは帰省中だから、俺たち三人と生徒会長と副会長、そして嵐山さんの六人で林の中へ入っていく。
 工具は副会長の河野先輩が持ち、脚立は村西が持った。その他薪を板状に切った物を生徒会長の藤沢先輩と稲村が持っている。俺はピー太係だから荷物は軽い物しか持ってはいけないらしい。ピー太係ってなんだよ。
 林の中に入った途端ひんやりするのがいつも不思議だ。地面がアスファルトじゃないというだけの理由なら、林の周りの地面はもう土だし、寮の周りも寮を囲んでいる一部分がコンクリで固められているだけである。やっぱり木が陽射しを遮っていたりとか、木からなんか出てるからなんだろうかとか考えたりした。
 ピー太は俺の腕に移動している。
 嵐山さんがピー太に、「ピー太君たちの小屋を見に行ってもいいかな?」と聞いたらピーッ! と元気に鳴いた。
 そんなわけでピー太はなんか得意そうに俺の腕に留まっている。とてもかわいい。
 ピピッ、チチチッ、ガサガサッと林の中はいろんな音や鳴き声がする。
 けっこう騒がしいもんだよなーと思いながらピー太の小屋があるところへ向かった。

「さっそく小屋を確認させてもらうね」

 嵐山さんが声をかけた。ピー太が飛び立ち、自分の小屋だけでなく周りの小屋を巡る。
 ピー太の小屋があるのは太くて大きな木だ。ピー太の小屋の他にも少し小さな小屋が三つばかり周りにあり、そこにはセキセイインコがそれぞれ一羽ずつ住んでいる。
 一つの小屋からセキセイインコが一羽顔を覗かせた。
 手を振ってみるとピピーッと鳴かれた。あれは威嚇なんだろうか。
 ピー太に比べればみんな小さいから、あんな小さくて林の中で暮らしていけるのかななんて心配になってしまう。
 それを言ったらスズメや他の小鳥だってそうか。でもセキセイインコは多分元からノラではないだろう。
 やっぱり心配である。

「あの小屋は下の台に両面テープで貼り付けてあるだけだから外そうと思えば外せるよ~。上の屋根も蝶番で蓋みたいにしてあるから、屋根は開けられるように作ってあるんだ~」
 嵐山さんがそう説明してくれた。そういえばフクロウの家の屋根も蝶番で蓋みたいにしてたな。なんでそんな面倒なことをしているのかと思っていたけど、掃除をしやすくする為だったのか。
 脚立を木の側に置き、小屋の様子を村西に見てもらう。

「どうかな?」

 嵐山さんが聞く。

「そうですね……けっこう傷ついていますから、できれば作り直した方がいいと思います」

 村西が屋根の蓋を開けて中を確認しながら言う。外側からはそうでもないけど中がたいへんなんだろうか。

「そっか。じゃあまた新築にしようか」
「新築の物件、いいですね~」

 嵐山さんの言葉に稲村がにこにこする。ピー太は自分の小屋から出るとまた俺の頭の上に飛んできた。

「頭は止めろっての~」

 ピー太自身がそれなりに大きいから頭が留まりやすいのは間違いないだろう。だからって頭に乗られるのが嫌なものは嫌なわけで、やっぱり文句は言いたくなるのだった。

「……そうなると、もっと薪を調達すべきだな」

 藤沢先輩が眼鏡の真ん中の部分をクイッと指先で押し上げた。あの真ん中の部分、なんて言うんだっけか。

「そうですね。森林管理部に提供させましょう」
「え」

 河野先輩がさらりと言ったけど、提供させるのは違うだろうと思う。

「提供って……交渉していただくものじゃないんですか?」
「? 交渉しないといけないものか? 薪だろう?」

 あ、これ藤沢先輩と河野先輩はわかってないなと思った。稲村がむーっとした顔をする。

「……先輩方、薪って乾かさないと使えないんですよ。それも一年以上とか。木を割りました、すぐ使えますじゃないんですから、ただとか安い価格でもらっていいものじゃないと思います!」

 稲村がはっきり言う。藤沢先輩と河野先輩はハッとしたような顔をした。

「そうか。薪も大事な財産なのだな。ではどうやってもらい受けようか」
「フクロウの小屋を作った時は、薪割りや雑用を1時間ぐらい手伝いました」
「そうか。では交渉しに行こうか。森林管理部の部長は……」
「二年の越野ですね」

 河野先輩がさらりと答える。越野先輩があの部の部長だったらしい。そんなことは特に言ってなかったけど、そういうものなんだろう。

「今どこにいるか調べてみようか~。活動しているならGPSを持ってるはずだし」

 嵐山さんがそう言ってスマホを取り出した。
 その途端バサバサッと大きな羽音がし、俺の腕に移動していたピー太が飛び上がった。

「え?」
「わぁっ!?」

 カラスだった。どうやらスマホの画面が反射したらしく、スマホをつつこうとしたところでピー太が気づいてカラスに体当たりをしたみたいだ。

「ピー太!」

 俺は急いで駆けつけてピー太をどうにか両手で包み、そのまま倒れた。
 クァーッ! とカラスが側にいて威嚇してくる。
 ピピーッ! ピーッ、ギャギャギャギャッ! とピー太が鳴く。
 すると鳥が何羽もまとめて飛んできた。カラスが慌てたように飛んで逃げていく。

「え」

 茶色っぽい鳥だった。目の周りは黒っぽい。

「カケスか」

 藤沢先輩が呟いた。カケスという鳥たちだったらしい。俺は慌てて起き上がり、ピー太の様子を見た。胸を圧迫するといけないというから両手で受け止めたかんじである。

「トモーノリー」
「ピー太、よかった……」

 ピー太とカケスはお互いにピー、ジェーと鳴くと離れた。どうやら危険が迫った時などはお互いに助け合ったりするようにしているらしい。なんかすごいなと思ったのだった。
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