26 / 77
25.智紀、GWに外出す
しおりを挟む
GWになった。
部費の予算の一部がさっそく下りたので、ホームセンターまで工具等を買いに行くことになった。
わざわざ嵐山さんが車を出してくれるらしい。というのも麓の町にはホームセンターはなく、その隣町まで行かないとホームセンターがないかららしかった。
「まー、でもホームセンターなんか週一とかで行かないもんねー」
稲村がフォローしている。うん、まぁ俺も全然行かなかったな。
工具とか通販でもいいのではないかと思ったけど、やっぱり実物を見た方がいいらしい。
そんなわけで、嵐山さんがワゴン車を用意してくれた。ピー太が当たり前のように俺と共に乗ろうとしたが、そんなことをしたら迷子になって山に戻ってこれなさそうなので、
「早めに帰ってくるから!」
と説得して山に残ってもらった。油断も隙もあったものではない。
ピー太とはそれなりに話しているのだが、どうも籠から逃げた時は帰り道がわからなくなったらしい。まぁそうだよな。籠の中にいて、外の世界を知らなかったのに戻ってこられるわけがない。
でも戻ろうと思っていてくれたらしいということを知って泣きそうになった。
目つきも悪くなったけど、ピー太が俺のかわいいピー太だってことは変わらないみたいだ。
さて、それはともかくお出かけだ。
外出届を出し、俺、村西、稲村と、そして何故か藤沢生徒会長と河野副会長が乗った。居心地が悪いことこの上ない。
「……先輩がたはー、帰省されないんですかー?」
稲村が聞く。この状況で聞けるとかすげー強心臓だよなと思った。
「……やることがあるのでな」
「トモヤが残ってるからね~」
「なるほど」
稲村が頷いた。何がなるほどなんだ、何が。
「私を残る理由にするんじゃない」
「えー、だしにはしてないよ。本心だから」
「へらへらするなっ!」
いくら鈍感な俺でもわかる話だった。藤沢先輩はどうだか知らないが、どう考えても河野先輩は藤沢先輩に懸想している。内心げんなりした。
周りの方がなんとなくわかるって本当なんだな。
男同士で恋愛しててもいいけど、巻き込まないでほしい。
「頼むから車内でいかがわしいことはやめてくれよー。わかったら放り出すからねー」
運転している嵐山さんがなんてことないみたいに言う。
いかがわしいことって……。
「いかがわしいことって言い方が古風だよねー」
稲村が笑っている。気にしてもしょうがないので気にしないことにした。
車ならあっというまだけど、歩いたらどんだけかかるんだろう。車で山と谷(イメージだ)を越えて三十分ほどで着いた。駐車場がめちゃくちゃ広い。
今日は工具類もそうだけど、小屋の修理に使えそうな物なども買っていく予定だ。
「ピー太君が山に来てから4年以上は経ってるからねー。そろそろ小屋の修理も必要かなって。お掃除もしてあげたいでしょー?」
嵐山さんに言われて頷いた。餌は一応非常用として嵐山さんが買ってくれるらしい。
今の時期は必要ないだろうが、それでも梅雨の時期とか、風が強くて飛べない時もあるだろうしなー。
「……随分手厚くするんですね」
河野副会長が呟いた。
「人に飼われていた生き物が完全に野生になるのは難しいからね。インコなんて本当は南国の鳥なんだし。だから冬になる前に出会えてよかったと思ってるよ」
領収書をもらって買物を終えた。工具箱ってけっこう重いんだな。
ホームセンターの駐車場に屋台が少し出ていた。嵐山さんが内緒だよ、と言って焼きそばとかき氷を買ってくれた。
「わーい! ありがとうございますー!」
稲村がぴょんぴょん跳ねた。
屋台で食べる焼きそばってホントなんでこんなにおいしいんだろう。
「口の中青ーい!」
ほらほらー、とブルーハワイを買ってもらった稲村が口の中を見せる。
「やめろっての」
ぺしんと叩いた。
「いたーい。もっと楽しもうよー」
稲村のテンションが高い。かき氷とかってテンション上がるけどさ。今日はなんか暑いし。
村西も特に何も言わなかったが、楽しんでいるみたいだった。
「……生物管理か……やはり予算を……」
「トモヤ、職権乱用はだめだよ」
生徒会長はピー太が好きらしく、俺の頭とか腕に乗っているのを見ると羨ましそうな目を向けてくる。でもピー太は俺しか見てないしなぁ。ピー太に会長のところに行ってきてとか言うのも違うだろう。
生徒会長を気に入る生き物がいればいいななんて思ってしまうぐらいだ。それもまた傲慢な思いかもしれない。
買物をして寮に戻ったらもう一時だった。
「あれじゃ足りなかっただろうから、ごはん食べておいで~」
嵐山さんに言われ、俺たちは急いで食堂へ走ったのだった。(昼は二時までである。走るなって怒られた)
部費の予算の一部がさっそく下りたので、ホームセンターまで工具等を買いに行くことになった。
わざわざ嵐山さんが車を出してくれるらしい。というのも麓の町にはホームセンターはなく、その隣町まで行かないとホームセンターがないかららしかった。
「まー、でもホームセンターなんか週一とかで行かないもんねー」
稲村がフォローしている。うん、まぁ俺も全然行かなかったな。
工具とか通販でもいいのではないかと思ったけど、やっぱり実物を見た方がいいらしい。
そんなわけで、嵐山さんがワゴン車を用意してくれた。ピー太が当たり前のように俺と共に乗ろうとしたが、そんなことをしたら迷子になって山に戻ってこれなさそうなので、
「早めに帰ってくるから!」
と説得して山に残ってもらった。油断も隙もあったものではない。
ピー太とはそれなりに話しているのだが、どうも籠から逃げた時は帰り道がわからなくなったらしい。まぁそうだよな。籠の中にいて、外の世界を知らなかったのに戻ってこられるわけがない。
でも戻ろうと思っていてくれたらしいということを知って泣きそうになった。
目つきも悪くなったけど、ピー太が俺のかわいいピー太だってことは変わらないみたいだ。
さて、それはともかくお出かけだ。
外出届を出し、俺、村西、稲村と、そして何故か藤沢生徒会長と河野副会長が乗った。居心地が悪いことこの上ない。
「……先輩がたはー、帰省されないんですかー?」
稲村が聞く。この状況で聞けるとかすげー強心臓だよなと思った。
「……やることがあるのでな」
「トモヤが残ってるからね~」
「なるほど」
稲村が頷いた。何がなるほどなんだ、何が。
「私を残る理由にするんじゃない」
「えー、だしにはしてないよ。本心だから」
「へらへらするなっ!」
いくら鈍感な俺でもわかる話だった。藤沢先輩はどうだか知らないが、どう考えても河野先輩は藤沢先輩に懸想している。内心げんなりした。
周りの方がなんとなくわかるって本当なんだな。
男同士で恋愛しててもいいけど、巻き込まないでほしい。
「頼むから車内でいかがわしいことはやめてくれよー。わかったら放り出すからねー」
運転している嵐山さんがなんてことないみたいに言う。
いかがわしいことって……。
「いかがわしいことって言い方が古風だよねー」
稲村が笑っている。気にしてもしょうがないので気にしないことにした。
車ならあっというまだけど、歩いたらどんだけかかるんだろう。車で山と谷(イメージだ)を越えて三十分ほどで着いた。駐車場がめちゃくちゃ広い。
今日は工具類もそうだけど、小屋の修理に使えそうな物なども買っていく予定だ。
「ピー太君が山に来てから4年以上は経ってるからねー。そろそろ小屋の修理も必要かなって。お掃除もしてあげたいでしょー?」
嵐山さんに言われて頷いた。餌は一応非常用として嵐山さんが買ってくれるらしい。
今の時期は必要ないだろうが、それでも梅雨の時期とか、風が強くて飛べない時もあるだろうしなー。
「……随分手厚くするんですね」
河野副会長が呟いた。
「人に飼われていた生き物が完全に野生になるのは難しいからね。インコなんて本当は南国の鳥なんだし。だから冬になる前に出会えてよかったと思ってるよ」
領収書をもらって買物を終えた。工具箱ってけっこう重いんだな。
ホームセンターの駐車場に屋台が少し出ていた。嵐山さんが内緒だよ、と言って焼きそばとかき氷を買ってくれた。
「わーい! ありがとうございますー!」
稲村がぴょんぴょん跳ねた。
屋台で食べる焼きそばってホントなんでこんなにおいしいんだろう。
「口の中青ーい!」
ほらほらー、とブルーハワイを買ってもらった稲村が口の中を見せる。
「やめろっての」
ぺしんと叩いた。
「いたーい。もっと楽しもうよー」
稲村のテンションが高い。かき氷とかってテンション上がるけどさ。今日はなんか暑いし。
村西も特に何も言わなかったが、楽しんでいるみたいだった。
「……生物管理か……やはり予算を……」
「トモヤ、職権乱用はだめだよ」
生徒会長はピー太が好きらしく、俺の頭とか腕に乗っているのを見ると羨ましそうな目を向けてくる。でもピー太は俺しか見てないしなぁ。ピー太に会長のところに行ってきてとか言うのも違うだろう。
生徒会長を気に入る生き物がいればいいななんて思ってしまうぐらいだ。それもまた傲慢な思いかもしれない。
買物をして寮に戻ったらもう一時だった。
「あれじゃ足りなかっただろうから、ごはん食べておいで~」
嵐山さんに言われ、俺たちは急いで食堂へ走ったのだった。(昼は二時までである。走るなって怒られた)
38
お気に入りに追加
636
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
サンタの村に招かれて勇気をもらうお話
Akitoです。
ライト文芸
「どうすれば友達ができるでしょうか……?」
12月23日の放課後、日直として学級日誌を書いていた山梨あかりはサンタへの切なる願いを無意識に日誌へ書きとめてしまう。
直後、チャイムの音が鳴り、我に返ったあかりは急いで日誌を書き直し日直の役目を終える。
日誌を提出して自宅へと帰ったあかりは、ベッドの上にプレゼントの箱が置かれていることに気がついて……。
◇◇◇
友達のいない寂しい学生生活を送る女子高生の山梨あかりが、クリスマスの日にサンタクロースの村に招待され、勇気を受け取る物語です。
クリスマスの暇つぶしにでもどうぞ。
病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない
月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。
人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。
2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事)
。
誰も俺に気付いてはくれない。そう。
2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。
もう、全部どうでもよく感じた。
【本編完結】繚乱ロンド
由宇ノ木
ライト文芸
番外編更新日 12/25日
*『とわずがたり~思い出を辿れば~1 』
本編は完結。番外編を不定期で更新。
11/11,11/15,11/19
*『夫の疑問、妻の確信1~3』
10/12
*『いつもあなたの幸せを。』
9/14
*『伝統行事』
8/24
*『ひとりがたり~人生を振り返る~』
お盆期間限定番外編 8月11日~8月16日まで
*『日常のひとこま』は公開終了しました。
7月31日
*『恋心』・・・本編の171、180、188話にチラッと出てきた京司朗の自室に礼夏が現れたときの話です。
6/18
*『ある時代の出来事』
6/8
*女の子は『かわいい』を見せびらかしたい。全1頁。
*光と影 全1頁。
-本編大まかなあらすじ-
*青木みふゆは23歳。両親も妹も失ってしまったみふゆは一人暮らしで、花屋の堀内花壇の支店と本店に勤めている。花の仕事は好きで楽しいが、本店勤務時は事務を任されている二つ年上の林香苗に妬まれ嫌がらせを受けている。嫌がらせは徐々に増え、辟易しているみふゆは転職も思案中。
林香苗は堀内花壇社長の愛人でありながら、店のお得意様の、裏社会組織も持つといわれる惣領家の当主・惣領貴之がみふゆを気に入ってかわいがっているのを妬んでいるのだ。
そして、惣領貴之の懐刀とされる若頭・仙道京司朗も海外から帰国。みふゆが貴之に取り入ろうとしているのではないかと、京司朗から疑いをかけられる。
みふゆは自分の微妙な立場に悩みつつも、惣領貴之との親交を深め養女となるが、ある日予知をきっかけに高熱を出し年齢を退行させてゆくことになる。みふゆの心は子供に戻っていってしまう。
令和5年11/11更新内容(最終回)
*199. (2)
*200. ロンド~踊る命~ -17- (1)~(6)
*エピローグ ロンド~廻る命~
本編最終回です。200話の一部を199.(2)にしたため、199.(2)から最終話シリーズになりました。
※この物語はフィクションです。実在する団体・企業・人物とはなんら関係ありません。架空の町が舞台です。
現在の関連作品
『邪眼の娘』更新 令和6年1/7
『月光に咲く花』(ショートショート)
以上2作品はみふゆの母親・水無瀬礼夏(青木礼夏)の物語。
『恋人はメリーさん』(主人公は京司朗の後輩・東雲結)
『繚乱ロンド』の元になった2作品
『花物語』に入っている『カサブランカ・ダディ(全五話)』『花冠はタンポポで(ショートショート)』
いっぱい命じて〜無自覚SubはヤンキーDomに甘えたい〜
きよひ
BL
無愛想な高一Domヤンキー×Subの自覚がない高三サッカー部員
Normalの諏訪大輝は近頃、謎の体調不良に悩まされていた。
そんな折に出会った金髪の一年生、甘井呂翔。
初めて会った瞬間から甘井呂に惹かれるものがあった諏訪は、Domである彼がPlayする様子を覗き見てしまう。
甘井呂に優しく支配されるSubに自分を重ねて胸を熱くしたことに戸惑う諏訪だが……。
第二性に振り回されながらも、互いだけを求め合うようになる青春の物語。
※現代ベースのDom/Subユニバースの世界観(独自解釈・オリジナル要素あり)
※不良の喧嘩描写、イジメ描写有り
初日は5話更新、翌日からは2話ずつ更新の予定です。
神様のボートの上で
shiori
ライト文芸
”私の身体をあなたに託しました。あなたの思うように好きに生きてください”
(紹介文)
男子生徒から女生徒に入れ替わった男と、女生徒から猫に入れ替わった二人が中心に繰り広げるちょっと刺激的なサスペンス&ラブロマンス!
(あらすじ)
ごく平凡な男子学生である新島俊貴はとある昼休みに女子生徒とぶつかって身体が入れ替わってしまう
ぶつかった女子生徒、進藤ちづるに入れ替わってしまった新島俊貴は夢にまで見た女性の身体になり替わりつつも、次々と事件に巻き込まれていく
進藤ちづるの親友である”佐伯裕子”
クラス委員長の”山口未明”
クラスメイトであり新聞部に所属する”秋葉士郎”
自分の正体を隠しながら進藤ちづるに成り代わって彼らと慌ただしい日々を過ごしていく新島俊貴は本当の自分の机に進藤ちづるからと思われるメッセージを発見する。
そこには”私の身体をあなたに託しました。どうかあなたの思うように好きに生きてください”と書かれていた
”この入れ替わりは彼女が自発的に行ったこと?”
”だとすればその目的とは一体何なのか?”
多くの謎に頭を悩ませる新島俊貴の元に一匹の猫がやってくる、言葉をしゃべる摩訶不思議な猫、その正体はなんと自分と入れ替わったはずの進藤ちづるだった
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる