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21.智紀、GWをどうすごすか考える

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「へー、あの却下が口癖の生徒会長がよく話を聞いてくれたね~」

 嵐山さんの言葉に、一瞬殺意が芽生えた。

「……わかっていたのに昨日あのまま帰ったんですか……」

 つい恨みがましい声が出た。

「うん? だって部活動は生徒たちがすることだし。君たちがどうにか対応しないといけないでしょう。一応先輩も三人いるんだから」

 そういえば先輩たちの存在を忘れていた。ひどい後輩もいたものである。
 でもな~、部長と副部長を押し付けられたし、結局生徒会室にも付いてきてくれなかったしな~。
 とは思ったが、よく考えれば必要な物を考えてくれたり書類を作ってくれたりしたのは先輩たちである。調べ物とかもかなりスマートにこなしてくれたから意識してなかったけど、けっこうすごいことだよな。
 これはいわゆる役割分担かもしれないと思った。

「……嵐山さん、会議室借りてもいいですか?」
「いいよー」

 ついでに先輩たちを呼び出してもらい、今日あったことを稲村、村西と共に話した。

「ありがとう……」
「ごめんね……」
「……こういうのは、苦手で……」

 苦手なのはこっちも一緒だけど、きっと先輩たちほどじゃない。役割分担をしたいという話をし、今後は林周辺などの見回りなどもすることにした。
 でも先輩たちはなんか頼りないから、三人一緒に行動してもらうことに決めた。林の周りの見回りをする時は部に貸し出されている笛を二つ持って行ってもらうことにする。何かあった時犬笛っぽいのを吹いてくれれば教師が駆けつけると聞いているし。

「予算が下りるのは早くてもGW明けか~」
「それまでに必要なものがあったら嵐山さんに出してもらおうよ」

 稲村が言う。けっこう図太いよなと笑った。
 部屋に戻ると、窓の外にピー太がいたので村西に許可を取って窓を開けた。

「トモー、ノリー、オソイー!」
「ごめんごめん。部のことで話すことがあったんだ。ピー太も何かあったらすぐ言うんだぞ」
「オッケー!」

 本当にわかってんのかなぁと苦笑した。いちいち返す言葉が絶妙なんだよな。
 ピー太は俺の腕に乗り、俺の顔を軽くかじかじしてから戻って行った。
 くすぐったいぐらいの刺激だったからいいけど、村西が「大丈夫か?」と言いたげな目でこちらを見ていた。
 見てる方が怖かったかもしれない。ごめん。


 夜、村西、稲村と夕飯を食べながらGWの予定を聞いてみた。

「……俺はこっちにいる」
「僕もこっちかな~。トモ君は?」
「俺もこっち」

 どうやら三人共寮に残るらしい。村西はあまりしゃべる方じゃないから、村西の事情とかは聞いていない。
 対する稲村はよくしゃべるけどそういう話は自分からしない。まだお互い手探りな部分もあると思う。

「そっかー、じゃあGWはいろいろ語り合おうよ! そーゆーの僕憧れてたんだよねっ!」

 俺はかまわないけど……と村西を窺ったら、村西も頷いた。

「いいかも。GW中は点呼とかないんだっけ?」
「点呼の時間に部屋にいればいいみたいだよー。後で嵐山さんに確認しよー」
「そうするか」

 それなら稲村がうちの部屋に来てもいいもんな。村西のベッドに二人寝るのは厳しいだろうけど、俺のベッドに稲村が一緒に寝るのは問題ないだろう。なんだったら布団持ってきてもらえばいいし。
 ちょっとお泊り会的なシチュにわくわくしてきた。

「あれ? でもルームメイトはいいの?」
「んー? 他に友達がいるからいつも寝る為に戻ってくるかんじかなー。GWの予定とかも聞いてないし。一応聞いておこうかな」
「聞いといた方がいいかもな」

 いない間に部屋に酒とか持ち込まれても困るだろうし。俺? 小さい頃にじーちゃんにビールを飲まされて苦い思いをしたんだよな。あれ? なんか泡が気になって飲んでみたいって俺が言ったんだっけ? 泡まで苦いとか反則だ。

「あ、うちではソフトドリンク限定な」
「ソフトドリンクって言い方ウケるー」

 稲村が楽しそうに笑う。村西も頷いた。
 GWの予定が大体決まってよかったと思う。なんだったら下の町に一日ぐらい行ってもいいし。ってなんもないんだっけ? あるのは雑貨屋とスーパーぐらいだって聞いたような気がする。
 翌朝、いつも通り登校する為に寮を出たらピーッ! と鳴き声がした。

「ピー太?」

 バサバサと飛んできて頭の上に下り立ったのはピー太だった。朝は弱いんじゃなかったのか。
 今朝はでも、朝から太陽が眩しいぐらいだから早めに起きたのかな。

「おはよう、ピー太」

 腕に移ってもらう。

「オハヨー、トモーノリー!」
「おはよう、ピー太君。ピーコは一緒じゃないのー?」

 稲村がにこやかに聞く。

「ピーコ、ピーコ、コヤー?」

 ピー太がコキャコキャ首を傾げながら答えた。ああもうこの仕草もかわいいなぁ、もう。

「そっか。お寝坊さんなんだね~」

 村西は相変わらず一歩下がる。でも俺たちを置いていったりはしないから優しいと思う。
 今度村西ともしっかり話さないとなと思った。
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