4 / 77
3.智紀、ルームメイトに会う
しおりを挟む
「エレベーターはあるけど基本は階段を使ってくれ。エレベーターは荷物とか、負傷した生徒を運ぶものだと思ってねー」
寮監の嵐山さんの言葉に頷く。
一階のロビーからまっすぐ廊下を東に向かって進む。西から食堂、談話室、リネン室、売店と嵐山さんに説明してもらい、一番東側の階段を上がった。その真ん前が俺の部屋だった。
嵐山さんがドアをノックする。
「こんにちはー、寮監の嵐山です。ルームメイトを連れてきたよー」
「……はい」
低い声がしてドアが開いた。
「入るねー。はい、大林君も入って~」
「……お邪魔します」
「お邪魔しますって、君の部屋でもあるんだよ」
嵐山さんは楽しそうに笑った。
そのまま嵐山さんは戻るのかと思ったけど、戻る気配がない。俺は部屋と、ルームメイトという青年をまじまじと眺めた。
……でっかい。
身長だけでなく、全体的にでかい。なんともコンプレックスを刺激されるなと思った。
「村西君、悪いんだけど東側の窓を開けてくれないかな?」
「え? あ、はい」
声が低くてでっかいルームメイトは村西というらしい。村西は言われた通り東側の窓を開けた。その途端何かがすごいスピードで飛び込んできた。バババッと音がして、俺はビビッた。
何? この学校っていったいなんなんだ?
ピィーーッ!
「……え?」
バサバサと羽の音がして、俺の頭に何かが乗っかった。この感触は……。
「ピー太?」
「ピータ!」
爪が食い込んで痛いんだけど。しかも自分で「ピータ!」とか名乗るのはいいんだけどうるさい。
「痛いっての」
先ほど寮の入口で別れたピー太が、わざわざ部屋までやってきたらしい。そういえば嵐山さんがピー太に何か言っていた気がする。ピー太、どんだけ頭がいいんだよ?
「そ、その鳥って……」
村西は顔色を悪くして後ずさった。
「そうだよ~。新入生の頭にいちいち乗りにきたオカメインコのピー太君だよ」
嵐山さんが楽しそうに村西に伝えた。俺は呆れた。
「ピー太、そんなことしてたのか。迷惑かけちゃだめだろう……」
ピピッとピー太が鳴く。頭に手を近づけるとそっちにトンッと乗って腕に移った。爪食い込んで痛いしちょっと重いなー。
それを顔の前まで移動した。うん、ピー太だ。
「いやいや、いいんだよ。それぐらいしてもらった方がみんな悪さをしなくなるからね。おかげで目立ったいじめなんかもないし、ピー太君にはとても助けられているんだよ」
「はい?」
嵐山さんの言っていることがよくわからなかった。
「いやー、飼主がいたとは思っていたけどまさか元の飼主がこの学校に来てくれるとはね~。これはさすがに僕も想定外だったな~。じゃ村西君とピー太君、あとはよろしくー」
嵐山さんは言いたいことだけ言うと、部屋を出て行ってしまった。
ピー太はピピッと返事をした。いったいどうなっているんだ?
さすがに状況がつかめなくて、俺はピー太を見て、それから村西を見た。村西は困ったような顔をして頭を掻いた。
「えーと、そっちが君のベッドと椅子と机だから……とりあえず荷物置いて座ったら?」
「あ、うん……」
ピー太に一旦下りてもらってボストンバッグを下ろし、俺は椅子に腰掛けた。俺の机の上にいたピー太がトテトテトテッとやってきて、俺の腕に乗った。手乗りインコか。ちょっと重いし爪痛いけど。
「俺は村西一義(むらにしかずよし)、君は?」
「あ……大林智紀、です……」
「トモー、ノリー」
「お前はピー太だろ」
灰色の羽を撫でる。
「元飼主って本当か?」
村西にじっと見つめられてなんか居心地が悪い。
「うん、多分……そう、かな?」
「なんだそれ」
村西がははっと笑った。その笑顔にほっとして、俺もへへっと笑った。ピー太は俺と村西を何度か見た後、トンッと移動して窓から出て行った。って、ここ二階だよなぁ。インコってそんなに飛べるものだったのか。
「もう、今は戻ってこないかな……」
「戻ってこないんじゃないか?」
村西に確認し、とりあえず窓を閉めた。開けとくとまだ寒いのだ。一応カーテンだけ夜まで閉めないようにして、ピー太が来たらわかるようにさせてもらった。
つーか、ピー太はいったいどこに住んでんだよ? こっから見える東側の林の中だろうか。俺は木々が植わっている方をじっと眺めたが、さっぱりわからなかった。
もうピー太の姿は見えない。
落ち着いてから村西にいろいろ聞いてみた。
村西は俺より二日早くここに来ていたらしく、風呂とか飯の時間とか、門限とかを適当に教えてくれた。荷物を片付けようとして、よく考えたら着替えとかそういうのって寮監のところにあるんじゃんと気づいて受け取りに行ったりもした。村西はヒマだからと付き合ってくれた。いい奴である。
そうして初日はバタバタとすぎたのだった。
寮監の嵐山さんの言葉に頷く。
一階のロビーからまっすぐ廊下を東に向かって進む。西から食堂、談話室、リネン室、売店と嵐山さんに説明してもらい、一番東側の階段を上がった。その真ん前が俺の部屋だった。
嵐山さんがドアをノックする。
「こんにちはー、寮監の嵐山です。ルームメイトを連れてきたよー」
「……はい」
低い声がしてドアが開いた。
「入るねー。はい、大林君も入って~」
「……お邪魔します」
「お邪魔しますって、君の部屋でもあるんだよ」
嵐山さんは楽しそうに笑った。
そのまま嵐山さんは戻るのかと思ったけど、戻る気配がない。俺は部屋と、ルームメイトという青年をまじまじと眺めた。
……でっかい。
身長だけでなく、全体的にでかい。なんともコンプレックスを刺激されるなと思った。
「村西君、悪いんだけど東側の窓を開けてくれないかな?」
「え? あ、はい」
声が低くてでっかいルームメイトは村西というらしい。村西は言われた通り東側の窓を開けた。その途端何かがすごいスピードで飛び込んできた。バババッと音がして、俺はビビッた。
何? この学校っていったいなんなんだ?
ピィーーッ!
「……え?」
バサバサと羽の音がして、俺の頭に何かが乗っかった。この感触は……。
「ピー太?」
「ピータ!」
爪が食い込んで痛いんだけど。しかも自分で「ピータ!」とか名乗るのはいいんだけどうるさい。
「痛いっての」
先ほど寮の入口で別れたピー太が、わざわざ部屋までやってきたらしい。そういえば嵐山さんがピー太に何か言っていた気がする。ピー太、どんだけ頭がいいんだよ?
「そ、その鳥って……」
村西は顔色を悪くして後ずさった。
「そうだよ~。新入生の頭にいちいち乗りにきたオカメインコのピー太君だよ」
嵐山さんが楽しそうに村西に伝えた。俺は呆れた。
「ピー太、そんなことしてたのか。迷惑かけちゃだめだろう……」
ピピッとピー太が鳴く。頭に手を近づけるとそっちにトンッと乗って腕に移った。爪食い込んで痛いしちょっと重いなー。
それを顔の前まで移動した。うん、ピー太だ。
「いやいや、いいんだよ。それぐらいしてもらった方がみんな悪さをしなくなるからね。おかげで目立ったいじめなんかもないし、ピー太君にはとても助けられているんだよ」
「はい?」
嵐山さんの言っていることがよくわからなかった。
「いやー、飼主がいたとは思っていたけどまさか元の飼主がこの学校に来てくれるとはね~。これはさすがに僕も想定外だったな~。じゃ村西君とピー太君、あとはよろしくー」
嵐山さんは言いたいことだけ言うと、部屋を出て行ってしまった。
ピー太はピピッと返事をした。いったいどうなっているんだ?
さすがに状況がつかめなくて、俺はピー太を見て、それから村西を見た。村西は困ったような顔をして頭を掻いた。
「えーと、そっちが君のベッドと椅子と机だから……とりあえず荷物置いて座ったら?」
「あ、うん……」
ピー太に一旦下りてもらってボストンバッグを下ろし、俺は椅子に腰掛けた。俺の机の上にいたピー太がトテトテトテッとやってきて、俺の腕に乗った。手乗りインコか。ちょっと重いし爪痛いけど。
「俺は村西一義(むらにしかずよし)、君は?」
「あ……大林智紀、です……」
「トモー、ノリー」
「お前はピー太だろ」
灰色の羽を撫でる。
「元飼主って本当か?」
村西にじっと見つめられてなんか居心地が悪い。
「うん、多分……そう、かな?」
「なんだそれ」
村西がははっと笑った。その笑顔にほっとして、俺もへへっと笑った。ピー太は俺と村西を何度か見た後、トンッと移動して窓から出て行った。って、ここ二階だよなぁ。インコってそんなに飛べるものだったのか。
「もう、今は戻ってこないかな……」
「戻ってこないんじゃないか?」
村西に確認し、とりあえず窓を閉めた。開けとくとまだ寒いのだ。一応カーテンだけ夜まで閉めないようにして、ピー太が来たらわかるようにさせてもらった。
つーか、ピー太はいったいどこに住んでんだよ? こっから見える東側の林の中だろうか。俺は木々が植わっている方をじっと眺めたが、さっぱりわからなかった。
もうピー太の姿は見えない。
落ち着いてから村西にいろいろ聞いてみた。
村西は俺より二日早くここに来ていたらしく、風呂とか飯の時間とか、門限とかを適当に教えてくれた。荷物を片付けようとして、よく考えたら着替えとかそういうのって寮監のところにあるんじゃんと気づいて受け取りに行ったりもした。村西はヒマだからと付き合ってくれた。いい奴である。
そうして初日はバタバタとすぎたのだった。
36
お気に入りに追加
636
あなたにおすすめの小説
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
モテる兄貴を持つと……(三人称改訂版)
夏目碧央
BL
兄、海斗(かいと)と同じ高校に入学した城崎岳斗(きのさきやまと)は、兄がモテるがゆえに様々な苦難に遭う。だが、カッコよくて優しい兄を実は自慢に思っている。兄は弟が大好きで、少々過保護気味。
ある日、岳斗は両親の血液型と自分の血液型がおかしい事に気づく。海斗は「覚えてないのか?」と驚いた様子。岳斗は何を忘れているのか?一体どんな秘密が?
イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?
すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。
「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」
家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。
「私は母親じゃない・・・!」
そう言って家を飛び出した。
夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。
「何があった?送ってく。」
それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。
「俺と・・・結婚してほしい。」
「!?」
突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。
かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。
そんな彼に、私は想いを返したい。
「俺に・・・全てを見せて。」
苦手意識の強かった『営み』。
彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。
「いあぁぁぁっ・・!!」
「感じやすいんだな・・・。」
※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。
※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。
※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。
※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。
それではお楽しみください。すずなり。
お兄ちゃんはお兄ちゃんだけど、お兄ちゃんなのにお兄ちゃんじゃない!?
すずなり。
恋愛
幼いころ、母に施設に預けられた鈴(すず)。
お母さん「病気を治して迎えにくるから待ってて?」
その母は・・迎えにくることは無かった。
代わりに迎えに来た『父』と『兄』。
私の引き取り先は『本当の家』だった。
お父さん「鈴の家だよ?」
鈴「私・・一緒に暮らしていいんでしょうか・・。」
新しい家で始まる生活。
でも私は・・・お母さんの病気の遺伝子を受け継いでる・・・。
鈴「うぁ・・・・。」
兄「鈴!?」
倒れることが多くなっていく日々・・・。
そんな中でも『恋』は私の都合なんて考えてくれない。
『もう・・妹にみれない・・・。』
『お兄ちゃん・・・。』
「お前のこと、施設にいたころから好きだった・・・!」
「ーーーーっ!」
※本編には病名や治療法、薬などいろいろ出てきますが、全て想像の世界のお話です。現実世界とは一切関係ありません。
※コメントや感想などは受け付けることはできません。メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
※孤児、脱字などチェックはしてますが漏れもあります。ご容赦ください。
※表現不足なども重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけたら幸いです。(それはもう『へぇー・・』ぐらいに。)
ある少年の体調不良について
雨水林檎
BL
皆に好かれるいつもにこやかな少年新島陽(にいじまはる)と幼馴染で親友の薬師寺優巳(やくしじまさみ)。高校に入学してしばらく陽は風邪をひいたことをきっかけにひどく体調を崩して行く……。
BLもしくはブロマンス小説。
体調不良描写があります。
鬼上司と秘密の同居
なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳
幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ…
そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた…
いったい?…どうして?…こうなった?
「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」
スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか…
性描写には※を付けております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる