夏の夜話 短編集

のーまじん

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貧乏神と私

10万字

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 私は、児童小説を中心にホラーや歴史のジャンルを書いていた。

 それは、あまり人が来ないので不人気ジャンルなどと言う人もいる。

 が、人気ジャンルと言っても、アニメ化する様な作品ですら、色々と揶揄をされるのがweb小説だ。

 新しいものは、確かに、完成された昔の話より稚拙で、何処と無く不安定なものだ。

 マンガを読むとバカになると言われて育った私は、だから、そんな批判は気にならなかった。
 マンガの時のように、いつか、時代が追い付くか、飛んでもない天才が生まれるかもしれないから。

 人気ジャンル…行ってみたかった。

 でも、いまだにファンタジーはよくわからない。

 それでも、ファンタジーを作る、作中作者を作り出しながら、なんとか考えていた。

 web小説のファンタジーにも特徴がある。
 主人公はニートやフリーターで過労死するか、交通事故などの不幸な死に方をする。
 そして、女神様がやって来て、何かの手違いで死んでしまったので、お詫びに異世界で超能力スキルを貰って、好きに生きる。

 これが、大筋だ。

 このよくある筋書き…テンプレと呼ばれる者を知り、私は、すぐさま剛を思った。

 ぴったりじゃん(゜o゜)/

 そう、私は、人気ジャンルをよく理解できないが、主人公の手本を手にしていた。


 剛をモデルにすれば、ファンタジージャンルで一考もあると思った。

 ただ、いまだに何を目的に走り出せば良いのかは理解できてない。

 でも、好きに理想をぼやくだけでも良さそうなので、剛の夢をかなえれば良いんだと考えていた。

 追放されて、田舎でスローライフをすれば、それで良いみたいだった。

 そんな話を剛にした事がある。

 「嫌だよぅ…農家なんて、ちっとも楽しくないよ。」
剛は口を尖らせて文句を言った。
「別に、良いじゃない。夢の世界なんだから。」
私がそう言うと、「これだから、農家を知らない奴は嫌なんだ。」と、あからさまな嫌悪感を顔に出して私を見る。
「本当に、嫌なんだから、大変なんだよ。」
剛は私に説教したが、
「でも、お母さんが育てた玉ねぎをお礼に渡してたじゃない。」
と、萩原さんに言われた。
「そうだよ。畑仕事手伝いなよ。」
私も萩原さんに加勢して剛をせめる。

 剛は、会社の同僚に飲みに連れていって貰って、お礼をお母さんが栽培した玉ねぎで返していた。




 パウンドケーキを萩原さんに作って貰ったときのお返しも玉ねぎだった。
「自家製なんだ。」

 えへへと剛は、照れ笑いを浮かべた。
 萩原さんは嬉しそうに大きな玉ねぎを3つ貰っていた。

 そして、私達は久しぶりにお茶をしていたのだが、皆でバーベキューをしたいと言う話をしていたとき、剛は自慢げに「玉ねぎは任せて!」と、言った。
 「また、3つくらないならこっそり持ってくるよ。」

 こっそり…(@_@)

 私達は、それについて追求した。
「大丈夫だよ。少しくらいならバレないから。」
剛の言葉に私と萩原さんの抗議がハモった。

 「いや、それ、玉ねぎ泥棒じゃん!」



 「今度は…ちゃんとお母さんに許可を貰ったよ。」
剛は、ばつが悪そうに言い訳する。
「草むしりくらい手伝いなよ。」
私が文句を言うと、アブをはらう熊のように手をふりながら
「いやだよ…面倒くさい。」
と、ブーたれた。



 そんな剛が、魔法が使えても、農家のスローライフをするとは思えない。

 それに、ファンタジーを書くなら、剛の夢の世界にしたかった。

 webファンタジーは、現実で、上手くいかない人間が、再現なくはめをはずす…爽快な活躍話がうける…(--;)とか、きいたし。

 話を聞いてる剛が、文句を良いながらも、楽しくなる話が良いと思った。

 西洋のイケメンで…美味しいものに囲まれて…


 それは、度々、こっそりと考えていた。

 でも、現実は、上手くはいかない。

 私は、3年を過ぎても、はじめの物語を再開できない上に、『パラサイト』も変な方向に終わらなくなっていた。

 『パラサイト』は、終わらせなければ。

 本気で思っていた。
 あれは、名古屋に行くって約束した、その時に始めた物語だから。

 そこから、色々あって、剛には会っていない。

 だから、『パラサイト』を完結し、それをいくらかにして、それで旅行に行こうと決めていた。

 終わらない話に詰まると、私は、スローライフをする異世界の剛を想像した。

 「普通に書けば良いじゃない。別に、俺、気にしないよ。」

 今考えると、それが正しい気がする。

 ノストラダムスとか、
 西洋のイケメンで無くても良かったのかもしれない。

 しかし、後悔は先には出来ないのだ。
 そして、やってしまったら、完結させないと、次の話にはいけない。

 悶絶はした。
 が、グダグダでも書き続けた『パラサイト』は、10万字になっていた。
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