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貧乏神と私
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そして…年月が流れた。
私は家じまいをし、街へと再就職し、
紗耶香ちゃんは、名古屋へ進学し、帰っては来なかった。
剛だけは、時に取り残されたように、現場、現場でオファーを貰っては失業を繰り返していた。
剛だけを責められないのは、その間に様々な災害や社会情勢の変化がある。
私もまた、田舎で再就職が出来ずに弾かれた…とも言えなくはない。
気がつけば、地方イベントが減り、
フリマは、不用品を並べて売る形から、ネットに画像を乗せて行う形へと変わっていった。
私達が、ネットでフリマをしないのは、面倒だったと言うこともあるが、
後半、売れ残りを加工して、手芸を売る方が楽しくなっていた…と、言うのが原因だ。
いろんな規制が厳しくなって、手芸品は売りにくくなったのだ。
それでも、我々は、夏と冬には皆で集まった。
一時は、10人近くまで増えた仲間も、私と剛と萩原さんだけになってしまったが。
剛は、相変わらず貧乏だったが、憎めない性格で、名古屋に行きたいとボヤいていた。
ある年の夏、私はいつもの剛のボヤきにブチキレた。
名古屋に行きたい…
口ばかりで、全然、金を貯めようとしない剛に腹が立ったのだ。
気がつけば、10年近く過ぎていた。
可愛い紗耶香ちゃんも、彼氏ができて結婚の話がチラホラ聞こえる。
私は名古屋に行く萩原さんに誘われていた。
でも、剛がいるからと断り続けていた。
あんなに行きたがっている剛だけを置いて行くのが忍びなかった。
が、その年の夏…奴は、新しいスマホを見せびらかしながらファミレスに登場した。
口喧嘩にならないわけはない。
で、色々、言い合ってるうちに、なんだか、ネット小説を書くことになったのだ。
“フリマのように手軽にあなたの物語を売りませんか?”
なんとも魅力的な誘い文句だった。
剛のスマホの向こうに、懐かしいフリマの匂いをかんじた。
思い出を…売れるかもしれない。
誰かがそれを読んで、そうして、キャラクターを好きになってくれたら…
この、ひなびた観光地の客が増え、町に仕事ができるかもしれない(>_<。)
『赤毛のアン』や『ピーターラビット』が、脳裏をかすめた。
彼らは、21世紀になり、版権が切れようと、舞台になった町を守り続けているのだ。
夢だった。
ついでに、大量に余ってる手芸商品が売れる予感がした。
段ボールにしまわれた、萩原さんのカッパの人形を…再び、この世界で生かしてみたかった。
パッとしたすごい見所はないけど、それでも、山があり、川もある。
形のいい樫の木や白樺…
ちいちゃな人形のカッパが冒険するには、十分なロケーションが広がっていた。
水や大気をビーズにして首飾りを作る妖精…
私には、大量に売れ残っている首飾りが語る、そんな物語が聞こえてくる気がした。
そして、何より、剛の面白エピソードが沢山あった。
私達には古い話でも…始めてみる人には新鮮に見えるに違いない。
40歳を過ぎて、ハンバーガーチェーンに初めて訪れた男の、ときめきと衝撃。
ハンバーガーの虜になり、しかし、1人で入るのが恥ずかしくて悶絶する男の哀愁…
を、少し前に入店していた萩原さんにばっちり見られていて、不思議に思われていた事。
これらを短編にしたら、買ってくれる人がいるかもしれない。
物語を買ってくれたら、ビーズの指輪をおまけにつけよう。
夢は膨らんだ。
が、膨らんだ夢に霞んで、本来のネット小説についての理解が足りなかった。
それに、いざ、書くとなると、そう簡単では無いことに気がついた。
そう、個人情報をどうするか。
居酒屋の馬鹿話では無いのだ。
なんでも書いていいわけではない。
地域を出してしまえば、すぐに、主人公が剛だと分かってしまう。
それは…マズイ
そこで、考えたのは、時代小説にすることだった。
私は家じまいをし、街へと再就職し、
紗耶香ちゃんは、名古屋へ進学し、帰っては来なかった。
剛だけは、時に取り残されたように、現場、現場でオファーを貰っては失業を繰り返していた。
剛だけを責められないのは、その間に様々な災害や社会情勢の変化がある。
私もまた、田舎で再就職が出来ずに弾かれた…とも言えなくはない。
気がつけば、地方イベントが減り、
フリマは、不用品を並べて売る形から、ネットに画像を乗せて行う形へと変わっていった。
私達が、ネットでフリマをしないのは、面倒だったと言うこともあるが、
後半、売れ残りを加工して、手芸を売る方が楽しくなっていた…と、言うのが原因だ。
いろんな規制が厳しくなって、手芸品は売りにくくなったのだ。
それでも、我々は、夏と冬には皆で集まった。
一時は、10人近くまで増えた仲間も、私と剛と萩原さんだけになってしまったが。
剛は、相変わらず貧乏だったが、憎めない性格で、名古屋に行きたいとボヤいていた。
ある年の夏、私はいつもの剛のボヤきにブチキレた。
名古屋に行きたい…
口ばかりで、全然、金を貯めようとしない剛に腹が立ったのだ。
気がつけば、10年近く過ぎていた。
可愛い紗耶香ちゃんも、彼氏ができて結婚の話がチラホラ聞こえる。
私は名古屋に行く萩原さんに誘われていた。
でも、剛がいるからと断り続けていた。
あんなに行きたがっている剛だけを置いて行くのが忍びなかった。
が、その年の夏…奴は、新しいスマホを見せびらかしながらファミレスに登場した。
口喧嘩にならないわけはない。
で、色々、言い合ってるうちに、なんだか、ネット小説を書くことになったのだ。
“フリマのように手軽にあなたの物語を売りませんか?”
なんとも魅力的な誘い文句だった。
剛のスマホの向こうに、懐かしいフリマの匂いをかんじた。
思い出を…売れるかもしれない。
誰かがそれを読んで、そうして、キャラクターを好きになってくれたら…
この、ひなびた観光地の客が増え、町に仕事ができるかもしれない(>_<。)
『赤毛のアン』や『ピーターラビット』が、脳裏をかすめた。
彼らは、21世紀になり、版権が切れようと、舞台になった町を守り続けているのだ。
夢だった。
ついでに、大量に余ってる手芸商品が売れる予感がした。
段ボールにしまわれた、萩原さんのカッパの人形を…再び、この世界で生かしてみたかった。
パッとしたすごい見所はないけど、それでも、山があり、川もある。
形のいい樫の木や白樺…
ちいちゃな人形のカッパが冒険するには、十分なロケーションが広がっていた。
水や大気をビーズにして首飾りを作る妖精…
私には、大量に売れ残っている首飾りが語る、そんな物語が聞こえてくる気がした。
そして、何より、剛の面白エピソードが沢山あった。
私達には古い話でも…始めてみる人には新鮮に見えるに違いない。
40歳を過ぎて、ハンバーガーチェーンに初めて訪れた男の、ときめきと衝撃。
ハンバーガーの虜になり、しかし、1人で入るのが恥ずかしくて悶絶する男の哀愁…
を、少し前に入店していた萩原さんにばっちり見られていて、不思議に思われていた事。
これらを短編にしたら、買ってくれる人がいるかもしれない。
物語を買ってくれたら、ビーズの指輪をおまけにつけよう。
夢は膨らんだ。
が、膨らんだ夢に霞んで、本来のネット小説についての理解が足りなかった。
それに、いざ、書くとなると、そう簡単では無いことに気がついた。
そう、個人情報をどうするか。
居酒屋の馬鹿話では無いのだ。
なんでも書いていいわけではない。
地域を出してしまえば、すぐに、主人公が剛だと分かってしまう。
それは…マズイ
そこで、考えたのは、時代小説にすることだった。
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