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パラサイト
食物連鎖
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萎れた莟を抱えながら、私は一瞬、躊躇したが、歩き出した。
花の開花時期が狂ったからといって、何かあると言うのだろう?
そんな事は、よくあることだ。
一年草でも咲かない株だってあるじゃないか!
私はおかしな気持ちをふりきった。
そして、ガラス越しに長山に萎れた莟を見せた。
「これは…雅苗さんではないよ。」
私の言葉を長山は、悲しそうに聞いていた。
長山は、花の莟を見つめて泣いていた…
暑かったから、あせだらけだったが、それは涙だと私には思えた。
長山は、私を見て首を横にふった。
「雅苗さん……。」
長山の唇がそう動いた気がした。
その顔が、あまりにも切なげで悲しくなった。
私はなぜ、この莟が雅苗なのか、聞こうと思った。が、それをする必要は無かった。
抱えた莟が臭いたち、
雅苗の亡霊が私に抱きつきながら答えてくれた。
「彼が、私を殺したの…そして、堆肥にとしてあの花(こ)に与えたの。」
え?(;゜∀゜)
私は抱えた莟を落としそうになる。が、雅苗の幽霊は構わず話を続けた。
「人間の体を与えるために。」
雅苗は、到底、学者とは思えない事を告白した。
が、私は反論しなかった。
温室では北川が、萎れた花の根を探しあて、そこを掘り始めていた。
私にしても、半日続く訳のわからない幻覚に混乱させられているので、長山の気持ちがわからなくもない。
こんな怪しげなものが見えて、変な主張をするのだから、判断力が弱っても仕方ない。
でも、幽霊の彼女を信じるのも違う気がした。
私が見ている雅苗が何者であっても、存在しない限り、妄想と変わりがない。
私は長山の姿が悲しかった。
何があったとしても、彼の雅苗に対する愛情は本物の気がしたからだ。
が、庭を掘っていた北川が白い棒状の何かを取り上げた時、考えは変わった。
「大腿骨だと思うけれど、どうだろう?」
北川が、考古学者のように普通に取り出してスマホのライトに照らしている。
「な…なんで…。」
私は殺人なんてモノが身近でおこった事に混乱した。
確かに、テレビやニュースで沢山の殺人の話を見聞きはしたが、それは特別な人間のする事で、自分のリアルに知り合える人に存在するなんて、理解していなかったのだ。
人の死は、厳かで、人が手を出してはいけない領域だと考えていた。
確かに、災害や事故で亡くなる事はあるとしても、花の妖精を人にするために、知り合いを殺して肥料にするなんて、どう考えてもわからない。
「ど、どうして…」
私の呟きを、長山が答えることは無かった。
が、代わりに雅苗が答えてくれた。
「操られてしまったのだもの。どうしても必要な部品を手にしたかったのだから。」
雅苗の言ってることは理解できなかった。
雅苗は、話を続けた。
「私たちはDNAの乗り物なんかじゃないわ。
『時計職人のレアな部品倉庫』
DNA(とけいしょくにん)は、必要な部品のためなら…なんでもするのよ…
だから、私達も同じことを繰り返すの。」
雅苗の言葉を…最後まで聞けなかった。
どん!
と、鈍い音がして、長山がガラスの壁に打ち付けられ、ガラスのひびからゆっくりと血が流れてくる。
虫がいっせいに逃げ惑い、が、巻き込まれてガラスに潰される……
「食物連鎖…ウイルスの作り出した…最高のシステムだわ。」
雅苗は潰されて、闇に引きずられて行く長山をさめた視線で見つめていた。
花の開花時期が狂ったからといって、何かあると言うのだろう?
そんな事は、よくあることだ。
一年草でも咲かない株だってあるじゃないか!
私はおかしな気持ちをふりきった。
そして、ガラス越しに長山に萎れた莟を見せた。
「これは…雅苗さんではないよ。」
私の言葉を長山は、悲しそうに聞いていた。
長山は、花の莟を見つめて泣いていた…
暑かったから、あせだらけだったが、それは涙だと私には思えた。
長山は、私を見て首を横にふった。
「雅苗さん……。」
長山の唇がそう動いた気がした。
その顔が、あまりにも切なげで悲しくなった。
私はなぜ、この莟が雅苗なのか、聞こうと思った。が、それをする必要は無かった。
抱えた莟が臭いたち、
雅苗の亡霊が私に抱きつきながら答えてくれた。
「彼が、私を殺したの…そして、堆肥にとしてあの花(こ)に与えたの。」
え?(;゜∀゜)
私は抱えた莟を落としそうになる。が、雅苗の幽霊は構わず話を続けた。
「人間の体を与えるために。」
雅苗は、到底、学者とは思えない事を告白した。
が、私は反論しなかった。
温室では北川が、萎れた花の根を探しあて、そこを掘り始めていた。
私にしても、半日続く訳のわからない幻覚に混乱させられているので、長山の気持ちがわからなくもない。
こんな怪しげなものが見えて、変な主張をするのだから、判断力が弱っても仕方ない。
でも、幽霊の彼女を信じるのも違う気がした。
私が見ている雅苗が何者であっても、存在しない限り、妄想と変わりがない。
私は長山の姿が悲しかった。
何があったとしても、彼の雅苗に対する愛情は本物の気がしたからだ。
が、庭を掘っていた北川が白い棒状の何かを取り上げた時、考えは変わった。
「大腿骨だと思うけれど、どうだろう?」
北川が、考古学者のように普通に取り出してスマホのライトに照らしている。
「な…なんで…。」
私は殺人なんてモノが身近でおこった事に混乱した。
確かに、テレビやニュースで沢山の殺人の話を見聞きはしたが、それは特別な人間のする事で、自分のリアルに知り合える人に存在するなんて、理解していなかったのだ。
人の死は、厳かで、人が手を出してはいけない領域だと考えていた。
確かに、災害や事故で亡くなる事はあるとしても、花の妖精を人にするために、知り合いを殺して肥料にするなんて、どう考えてもわからない。
「ど、どうして…」
私の呟きを、長山が答えることは無かった。
が、代わりに雅苗が答えてくれた。
「操られてしまったのだもの。どうしても必要な部品を手にしたかったのだから。」
雅苗の言ってることは理解できなかった。
雅苗は、話を続けた。
「私たちはDNAの乗り物なんかじゃないわ。
『時計職人のレアな部品倉庫』
DNA(とけいしょくにん)は、必要な部品のためなら…なんでもするのよ…
だから、私達も同じことを繰り返すの。」
雅苗の言葉を…最後まで聞けなかった。
どん!
と、鈍い音がして、長山がガラスの壁に打ち付けられ、ガラスのひびからゆっくりと血が流れてくる。
虫がいっせいに逃げ惑い、が、巻き込まれてガラスに潰される……
「食物連鎖…ウイルスの作り出した…最高のシステムだわ。」
雅苗は潰されて、闇に引きずられて行く長山をさめた視線で見つめていた。
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