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パラサイト

敵の敵

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  私の不用意な発言で、場の雰囲気は最悪になった。
  誰も信じられないようななかで、三つ巴のにらみ合いがしばらく続く。

  「北川さん、私と若葉さんをあの泉で助けてくださいましたよね?」

  綿棒でつついた話は…したかったが、ぐっとこらえた。

「いえ、本日、池には近づいてはいません。」
北川は事務的にそう答えた。
「では、なぜ、私に親しげに挨拶をしたのですか!」
  そうだ、温室で話さなかったら、北川と接点なんてないじゃないか。
「朝、ゲートを閉める際にお話しましたし、私も『シンゲン』のファンですから、歴代を皆、知っています。」

  またしても、虫探偵(黒歴史)がっ(○_○)!!

  私は、北城と聴いた『虫探偵シンゲンのテーマ』が頭を回って混乱する。

  「わかりました。100歩譲ります。で、何時に屋敷を離れたのですか?」
私は、度々、襲いかかるシンゲンの幻影に折れそうな心を補強するように叫んだ。

  考えれば、警備会社の人間なのだ。私と違って人の顔の認証力は並外れているのかもしれない。

「11時丁度です。」
北川はスンナリと答えた。
  さあ、どうしたものだろう?

  一瞬、迷いながら長山を見ると目があった。

  長山は私の視線に絡むように見つめ、そして、懇願するように訴えかける。

  「騙されてはいけません。あの北川は偽物です。」
長山は、怪しい雰囲気を漂わせながら、爽やかにそう言い切った。

  絶対的に怪しいと思っても、こう、キッパリと断言されると、つい、耳をかしたくなる。

「池上さん、騙されちゃいけません。奴は、既に人ではないのですっ。
  あなたを、次の贄にと企む寄生虫なのです。」
北川の強い発言が、再び、混乱を招く。

「何を言う、お前こそ、長い紐を片手にスマホいじって、池にいたじゃないか!  嘘つきめっ。」

  スマホ…(°∇°;)

  私は自分の命綱を預けた人物の裏の姿を見せつけられた衝撃に、北川をにらんだ。

  やはり、あの泉は幻覚ではなかったのだ(T-T)

  そして、北川は、命綱を装備する私を鼻で笑って、面倒くさそうにスマホでゲームでもしてやがったに違いない。

  腹が立った。

  真剣に働いてる私を、せせら笑いながら、スマホ見てるなんて、いい年したオッサンのすることじゃない。

  段々と腹がたってくると、自然に北川から距離をとりたくなり、なんだか知らないが長山の方によって行く自分を感じる。

「タイムカードがあります。ゲートでIDをかざしますから証拠があります。
  あなたこそ、私を池で見かけた証拠があるのですか!」
と、叫ぶ北川に、してやったりと長山の声がとぶ、

「動画がありますっ。さあ、池上さん、こちらに来て確認してください。」
長山が嬉しそうにポケットからスマホを取り出す。

  怪しい……

  辺りに…腐臭が漂い、動作がぎこちない長山が、電源の切れているスマホを私にかざす。

  行ったらいけない…ホラーフラグのように、長山の笑顔が不気味に見える。

  喉が乾いた。

  私は、北川と長山を見比べながら、リュックの中からペットボトルを取り出した。

  キャップを開けて、私は一口、お茶を含んだ。

  緑茶のカテキンが、口と頭をスッキリとさせる。

  「長山さん、本当に見たのですね?」
私は長山にネンをおす。
私の信頼を感じて、長山が嬉しそうに笑いかける。

「勿論です。さあ、こちらで、スマホを確認してください。
  大きな荷物を運ぶ北川さんがうつっていますから。」
長山は、しきりに私を呼ぶ。

  ふと、地下室で会った幻の雅苗の言葉を思い出した。

“ハリガネムシに操られたカマキリのように、池にのまれてしまいます”

  私は…何を信じ、どう行動するべきなのだろう?

  月を見上げた。随分と傾いてはいたが、綺麗な銀色の月だった。

  「北川さん。本当に、帰ったのですよね?」
私は北川に静かに聞いた。
「はい。タイムカードの記録が証拠です。見に行きますか?」
北川の表情はわからなかった。
「騙されちゃいけない。この男こそ、嘘つきだ。
  IDを見せるとかいいながら、池上さん、あなたをどうにかする気に違いありません。私は、私なら、今、ここで、証明できます。
  ほ、ほら。」
長山は、必死で電源を入れると、震える手で、スマホの画面を私に向けた。

「嘘じゃありませんね?」
私は、長山に聞いた。
「はい。こちらに来て、良く見てください。」
長山が不自然なくらい懇願する。

  私は、二口めのお茶を口に含むと、ゆっくりと長山のもとへと行き、そして、1mの距離まで来ると、一度、深呼吸をして、それから、ゆっくりと長山に近づいた。

  スマホの灯が、不気味に長山の顔を照らしていた。
  私は、その光を合図に一気に距離を縮めると、長山の顔面めがけてペットボトルのお茶をぶっかけた。

  長山は、一瞬、何が起こったのか分からずに両腕を開き、それから、少しして、スマホを放り出して顔面をかきむしった。

  「池上さんっ!」
瞬時に、北川が私を後方にぶん投げながら、激しく何かを長山に噴霧した。

  長山は、断末魔の叫びをあげ、そして、彼が顔を覆った両手の隙間から、ニュルニュルと…見たこともないような線虫がわいてくるのを見た。
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