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パラサイト

回文素数

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  1970年、大阪万博はアジアで初めて開催された万博である。
  そして、この年、この華やかな祭りに酔う人々の中で、1人の詩人が永久の眠りについた。
  西条八十である。

  そして、その年、密かに日本に持ち込まれた貴重品があると言う。
 
  その当時、それの価値は誰にも理解されなかった。
  イシスのスカラベのミイラである。

  この一致に、何か、因縁めいたものを感じた。

  全く無意味なものではない…

  私は赤い表紙の本を手に、その謎にとりつかれた。
  このカバーに意味があるとするなら、挿し絵のセミにも意味があるはずだ。

  シケイダ3301

  素数ゼミが描かれる、その意味が。

  2019年、それは、この『砂金』と言う本の100年周年であり、
  著作権が有効な最後の年…

  これを周期…と考えるなら、表紙のセミの持つ数字にも意味があるに違いない。

  3301

  これは素数だ。
  しかも、素数の中でも面白い性質のある素数である。

  シケイダ3301の本家は、何を考えたのかは知らないが、とにかく、この素数は回文素数と呼ばれる珍しいものには違いない。

  回文素数とは、右から読んでも、左から読んでも、素数になる数字の事だ。

  3301でも、
  1033でも、素数なのだ。
  その上、この数字をバラバラにして
  3+3+0+1にしても、7。
  つまり、素数なのだ。

  7…

  この数字は、当時の雅苗も驚いたに違いない。
  一般的に、セミの寿命と言えば7年と言われている。
  そして、7年といえば、あのショクダイオオコンニャクの開花もまた、7年とされているのだ。

  そして、今年、2019年は、1970年からここにあるショクダイオオコンニャクが、7回目の花を咲かせる年でもあるわけだ。

  若葉雅苗は、シケイダ3301の謎をそんな風に考えたのだろうか?

  盛り上がる気持ちを、一度落ち着ける。

  確かに、面白くはあるが、アメリカの掲示板で出された謎に、西条八十が関係するとは思えない。
  それに、7年周期の意味も良くわからない。

  ただ、雅苗は、この謎を見たときに、何かを考え、そして、メッセージを残そうとはしたのは確かな気がする。
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