71 / 208
パラサイト
寄生蜂
しおりを挟む
アオムシサムライムシコバチ……
北宮 雅苗が、寄生バチと呼ばれるこの虫の研究をはじめたのは、雅徳さんの影響らしい。
寄生バチとは、ハチ目の昆虫の中で、幼虫の時代に他の生物…植物や昆虫に寄生し、その生物の栄養を貰うことで成長する生物の事だ。
不気味と言われれば、不気味ではあるが、
キャベツなどの葉もの野菜を食い荒らす紋白蝶などの幼虫を駆除してくれる、益虫という一面があり、
雅苗は、その分野で活躍していたと記憶している。
雅苗が、ムシコバチなどの寄生バチに興味を持ったのは、父、雅徳さんの影響のようで、
彼は、1995年、その研究の為に訪れたアメリカで命を落としていた。
雅苗がまだ、少女の時の事だ。そんな悲劇もあって、寄生バチに対する思いも強かったのかもしれない。
ここで、雅苗の回想文にドキリとした。
その年、雅苗が父親の訃報を聞いたこの年に、ショクダイオオコンニャクが赤黒い花序(かじょ)を広げ、開花を迎えたのである。
阪神大震災と地下鉄サリン事件があった、不気味で不安な年であった。
そんな年の夏、この不気味な奇花の開花を雅苗は見ていた。
この花の香りに誘われてやって来る虫を見つめながら、彼女は自然のサイクルと輪廻転生について思い描いた。
全ての生物は、個別の意思を持つが、ある大きな生物のサイクルの統治の元の自由であるのだと。
例えば、人間の腸に住む大腸菌は、それ自体のサイクルを持つが、宿主の人間の生命のサイクルに影響を受けることになる。
滅亡とは、寄生する宿主の死であり、
それは、幼虫から成虫へと移り変わる、新しいサイクルへの転換である。
失踪間近の彼女が、少女時代の自分への回答のようだった。
私には、よく理解できなかったが、なんとなく、雰囲気だけは飲み込めるような気もした。
北宮 雅苗が、寄生バチと呼ばれるこの虫の研究をはじめたのは、雅徳さんの影響らしい。
寄生バチとは、ハチ目の昆虫の中で、幼虫の時代に他の生物…植物や昆虫に寄生し、その生物の栄養を貰うことで成長する生物の事だ。
不気味と言われれば、不気味ではあるが、
キャベツなどの葉もの野菜を食い荒らす紋白蝶などの幼虫を駆除してくれる、益虫という一面があり、
雅苗は、その分野で活躍していたと記憶している。
雅苗が、ムシコバチなどの寄生バチに興味を持ったのは、父、雅徳さんの影響のようで、
彼は、1995年、その研究の為に訪れたアメリカで命を落としていた。
雅苗がまだ、少女の時の事だ。そんな悲劇もあって、寄生バチに対する思いも強かったのかもしれない。
ここで、雅苗の回想文にドキリとした。
その年、雅苗が父親の訃報を聞いたこの年に、ショクダイオオコンニャクが赤黒い花序(かじょ)を広げ、開花を迎えたのである。
阪神大震災と地下鉄サリン事件があった、不気味で不安な年であった。
そんな年の夏、この不気味な奇花の開花を雅苗は見ていた。
この花の香りに誘われてやって来る虫を見つめながら、彼女は自然のサイクルと輪廻転生について思い描いた。
全ての生物は、個別の意思を持つが、ある大きな生物のサイクルの統治の元の自由であるのだと。
例えば、人間の腸に住む大腸菌は、それ自体のサイクルを持つが、宿主の人間の生命のサイクルに影響を受けることになる。
滅亡とは、寄生する宿主の死であり、
それは、幼虫から成虫へと移り変わる、新しいサイクルへの転換である。
失踪間近の彼女が、少女時代の自分への回答のようだった。
私には、よく理解できなかったが、なんとなく、雰囲気だけは飲み込めるような気もした。
0
お気に入りに追加
1
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい
白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。
私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。
「あの人、私が
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる