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  それは、セントジョーンズワートの絵のついたしおりで、2011と年号と聖ヨハネの日を記念した文言がフランス語で書かれていた。
  私はそれを摘まんでみた。
  2011年と言えば、雅苗が失踪する前の年だ。
  雅苗は、子供の頃の本にしおりを挟んでいる。

  これは何を意味してるのか?

  朝の長山の話を思い出した。
  長山は2010年に雅苗とフランスで会ったと言っていた。
  長山は、2012年のノストラダムスの予言について取材をしていたと言っていた。
  聖ヨハネの日……

  ヨハネの名前に黙示録を思い出したが、それは違う。
  聖ヨハネはイエスを洗礼した人物だ。
  冬至の祭りの意味のあるクリスマスに対して、夏至祭りの意味のある聖ヨハネの日は、夏のクリスマスの異名を持つ。

  西洋では、派手なイベントや巡礼があるので、その時手にしたチラシ等をコラージュしてラミネート加工してある。

  西洋のハーブの向こうには教会。
  
  ん?

  私はハーブの絵の横にひっそりと張り付くセミに目を止める。

  フランスでは、セミはラッキーアイテムらしい。が、何か、違う。違和感がある。

  セミの目が赤い。

  フランスのセミと言えば、エゾゼミだろう。確か、ファーブルも書いていた気がする。

  では、このセミは…

  私はルーペを取り出して、窓辺でよくよく観察する。

  マジキガダ……周期ゼミのような気がする。
  が、それはおかしい。

  周期ゼミとは、ある一定の周期で羽化するゼミの事で、13年と、17年。素数の周期で現れるため、素数ゼミとも呼ばれている。
  これについての謎を説いた人物に、日本人がいるのだが……いかん、今は、それより、周期ゼミだ。
  13年と、17年の周期を持つのは、北アメリカのみのはずだ。

  しおりにも、後付けのコラージュになっていて、雅苗の意図を考えたくなる。
  そんな気持ちを煽るように、手書きで『2015年?』と書かれていた。

  どういう意味だろうか?
  私はボンヤリと考えながら、しおりのコラージュを検索する。

  南仏から、聖ヨハネ騎士団が検索される。
  聖ヨハネ騎士団は、プロバンス出身のジェラールと言う人が創設に尽力したようだが、そこから、モンペリエ…大学、ノストラダムスまで、しりとりのようにサクサクとスマホが話を繋げて行く。

  ノストラダムス。

  長山が取材をしていた人物だ。
  それを思って、私は何か、得たいの知れない不安が込み上げてくるのを感じた。
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