97 / 197
1917
8
しおりを挟む
400年後に博物館で作品が飾られたって…それがどうだと言うのだ。
太古の人達の洞窟壁画の様に、それは時代への賛美でしかない。
そんなものより、目先の500円。生きてるうちに名古屋でモーニング。その方がいい。
でも、『プリマブェッラ』は違う。
ボッチィチェッリは、歴史ではなく、絵画を評価され、20世紀から現在まで、日本の文化人にも愛される存在だ。
『プリマブェッラ
この絵画は、ほとんどの人が一度は見ているに違いない。
最低でも美術の教科書で。他にはテレビの美術番組。
漫画にも、時たま登場する絵画だ。
この絵を説明すると、好きな人は、10万字は軽くかけるような、ネタ一杯の作品で、私のように、美術に明るくない人間には、たまにポスターや紙袋、イタリアンのお店の壁絵で拝見するくらいのものだ。
日本人が、短歌や俳句、SNSの呟きに、たて読みの隠しメッセージを入れるように。
と、言うわけで、西洋人は絵画に、美しさ意外の色々を見つめようとする。
それは、恋のメッセージかもしれないし、宗教的なものかもしれないし…
政治的な意味合いのものもある。
ボッチィチェッリが、何を考えたかはしらないけれど、400年を経て、彼の絵に色んな難しいメッセージを読み解く人物が登場する。
ノストラダムスの解説で、生涯ダメージを受けまくり、『トミノの地獄』で恥ずかしい解説を披露した私は、それが本当に、作者の思惑か疑わしく感じてしまうが、1910年代、西洋を旅する文化人、吉江、近江の2人の日本人は、そんな雰囲気に包まれていたに違いない。
その頃、イギリスの文化人を中心に、ルネサンスの絵画に宗教からの解放…もしくは、自由をもとめる動きがあって、『プリマブェッラ』が、その象徴のように取り上げられているとネットでみた。
もう、落選したし、剛相手のざれ言だから、うろ覚えで書いて行くけど、当時は、そんな事に物凄く時間をかけた。
「どうしたの?卯月さん。」
剛が私に問いかける。
「いや、昔を…アンタが生きていた時を思い出してね。」
私は、数年前の明るい時間を鈍く思い出していた。
金の価値は、日々、変わって行く。
今は円安だし、何かきっかけがあれば、また、円高にもなる。
そして、個人のイベントに置いても、やはり、金の価値は変わって行く。
数年前、剛が生きていた頃、ネットで…小説で…稼ぐ500円は、遠くにあっても、手に届きそうなほど明るく輝く一等星のような存在で、それを手にしたら、幸せに…少なくとも、人生トップ10に入るくらいの感動をくれたに違いなかった。
「そんな事、思い出しても仕方ないだろ?まあ、気にしなくても良いじゃない。」
剛はフフンと鼻で笑って呑気に酒を楽しむ。
「それでも、思い出すのが友情なんじゃない。それに、ここまで来たら、異世界転生ものを書いてみたいし。」
と、言いながら涙が溢れてくる。
もう…私には、人気作家の先生みたいに、明るく死んで異世界を楽しむ人間なんて書けやしない。
死んだ人間の骸(むくろ)と共に、この、どうにもならない現世で、物語を作る側の配役を貰ってしまったから。
「異世界転生?それ、面白いの?」
剛が新しい食べ物を疑うときの様に、眉をひそめる。
「分からない。わからないから、今まであのジャンルは行ってなかったのよ。
でも、こんなに未完が増えて、低評価に甘んじるなら、もう、いっそ、異世界転生書けばよかったわ。」
私はやけくそに叫んだ。
死んだら人はどうなるのだろうか?
第一次世界大戦で沢山の人が亡くなった。
戦の禍神の手を取るように病神が変異風邪を世界に振り撒いた。
ドイルは、あの世に旅だった愛する人と再会するために魔術に力を注ぎ、
世紀の魔術師は、ラノベの世界にバトルマジックと言う新たなテンプレを作り出していた。
クロウリーは、意図してはいなかったに違いない。
それでも…ラノベ界では、低評価の『ムーン チャイルド』は、かつての師であり、世紀の魔術師マグレーガー・メイザースを、そして、自分をも、ファンタジー界の…異世界の無敵(チート)魔術師(マジシャン)として転生させた。
彼は…知っていたろうか?
クロウリーとメイザースは、いまだにラノベで、アニメで取り上げられ、その時代の『カッコイイ』を纏い、進化し続ける魂(キャラ)になったことを。
彼らこそ、本当の意味での異世界転生を成就した存在なのかもしれない。
そして、まるで魔法のように、メイザースの没後100年にこの作品の著作権が切れるなんて。
1917年…ファティマで子供たちが聖母を見た年、
クロウリーは、何を見たのだろう?
そうして、西條先生は何を感じたのだろうか?
殺したくなるほど憎い義兄や、美しい詩の世界、株での金儲けや芸者遊びのその先に…
太古の人達の洞窟壁画の様に、それは時代への賛美でしかない。
そんなものより、目先の500円。生きてるうちに名古屋でモーニング。その方がいい。
でも、『プリマブェッラ』は違う。
ボッチィチェッリは、歴史ではなく、絵画を評価され、20世紀から現在まで、日本の文化人にも愛される存在だ。
『プリマブェッラ
この絵画は、ほとんどの人が一度は見ているに違いない。
最低でも美術の教科書で。他にはテレビの美術番組。
漫画にも、時たま登場する絵画だ。
この絵を説明すると、好きな人は、10万字は軽くかけるような、ネタ一杯の作品で、私のように、美術に明るくない人間には、たまにポスターや紙袋、イタリアンのお店の壁絵で拝見するくらいのものだ。
日本人が、短歌や俳句、SNSの呟きに、たて読みの隠しメッセージを入れるように。
と、言うわけで、西洋人は絵画に、美しさ意外の色々を見つめようとする。
それは、恋のメッセージかもしれないし、宗教的なものかもしれないし…
政治的な意味合いのものもある。
ボッチィチェッリが、何を考えたかはしらないけれど、400年を経て、彼の絵に色んな難しいメッセージを読み解く人物が登場する。
ノストラダムスの解説で、生涯ダメージを受けまくり、『トミノの地獄』で恥ずかしい解説を披露した私は、それが本当に、作者の思惑か疑わしく感じてしまうが、1910年代、西洋を旅する文化人、吉江、近江の2人の日本人は、そんな雰囲気に包まれていたに違いない。
その頃、イギリスの文化人を中心に、ルネサンスの絵画に宗教からの解放…もしくは、自由をもとめる動きがあって、『プリマブェッラ』が、その象徴のように取り上げられているとネットでみた。
もう、落選したし、剛相手のざれ言だから、うろ覚えで書いて行くけど、当時は、そんな事に物凄く時間をかけた。
「どうしたの?卯月さん。」
剛が私に問いかける。
「いや、昔を…アンタが生きていた時を思い出してね。」
私は、数年前の明るい時間を鈍く思い出していた。
金の価値は、日々、変わって行く。
今は円安だし、何かきっかけがあれば、また、円高にもなる。
そして、個人のイベントに置いても、やはり、金の価値は変わって行く。
数年前、剛が生きていた頃、ネットで…小説で…稼ぐ500円は、遠くにあっても、手に届きそうなほど明るく輝く一等星のような存在で、それを手にしたら、幸せに…少なくとも、人生トップ10に入るくらいの感動をくれたに違いなかった。
「そんな事、思い出しても仕方ないだろ?まあ、気にしなくても良いじゃない。」
剛はフフンと鼻で笑って呑気に酒を楽しむ。
「それでも、思い出すのが友情なんじゃない。それに、ここまで来たら、異世界転生ものを書いてみたいし。」
と、言いながら涙が溢れてくる。
もう…私には、人気作家の先生みたいに、明るく死んで異世界を楽しむ人間なんて書けやしない。
死んだ人間の骸(むくろ)と共に、この、どうにもならない現世で、物語を作る側の配役を貰ってしまったから。
「異世界転生?それ、面白いの?」
剛が新しい食べ物を疑うときの様に、眉をひそめる。
「分からない。わからないから、今まであのジャンルは行ってなかったのよ。
でも、こんなに未完が増えて、低評価に甘んじるなら、もう、いっそ、異世界転生書けばよかったわ。」
私はやけくそに叫んだ。
死んだら人はどうなるのだろうか?
第一次世界大戦で沢山の人が亡くなった。
戦の禍神の手を取るように病神が変異風邪を世界に振り撒いた。
ドイルは、あの世に旅だった愛する人と再会するために魔術に力を注ぎ、
世紀の魔術師は、ラノベの世界にバトルマジックと言う新たなテンプレを作り出していた。
クロウリーは、意図してはいなかったに違いない。
それでも…ラノベ界では、低評価の『ムーン チャイルド』は、かつての師であり、世紀の魔術師マグレーガー・メイザースを、そして、自分をも、ファンタジー界の…異世界の無敵(チート)魔術師(マジシャン)として転生させた。
彼は…知っていたろうか?
クロウリーとメイザースは、いまだにラノベで、アニメで取り上げられ、その時代の『カッコイイ』を纏い、進化し続ける魂(キャラ)になったことを。
彼らこそ、本当の意味での異世界転生を成就した存在なのかもしれない。
そして、まるで魔法のように、メイザースの没後100年にこの作品の著作権が切れるなんて。
1917年…ファティマで子供たちが聖母を見た年、
クロウリーは、何を見たのだろう?
そうして、西條先生は何を感じたのだろうか?
殺したくなるほど憎い義兄や、美しい詩の世界、株での金儲けや芸者遊びのその先に…
0
お気に入りに追加
1
あなたにおすすめの小説
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
京都式神様のおでん屋さん
西門 檀
キャラ文芸
旧題:京都式神様のおでん屋さん ~巡るご縁の物語~
ここは京都——
空が留紺色に染まりきった頃、路地奥の店に暖簾がかけられて、ポッと提灯が灯る。
『おでん料理 結(むすび)』
イケメン2体(?)と看板猫がお出迎えします。
今夜の『予約席』にはどんなお客様が来られるのか。乞うご期待。
平安時代の陰陽師・安倍晴明が生前、未来を案じ2体の思業式神(木陰と日向)をこの世に残した。転生した白猫姿の安倍晴明が式神たちと令和にお送りする、心温まるストーリー。
※2022年12月24日より連載スタート 毎日仕事と両立しながら更新中!
大嫌いな歯科医は変態ドS眼鏡!
霧内杳/眼鏡のさきっぽ
恋愛
……歯が痛い。
でも、歯医者は嫌いで痛み止めを飲んで我慢してた。
けれど虫歯は歯医者に行かなきゃ治らない。
同僚の勧めで痛みの少ない治療をすると評判の歯科医に行ったけれど……。
そこにいたのは変態ドS眼鏡の歯科医だった!?
こども病院の日常
moa
キャラ文芸
ここの病院は、こども病院です。
18歳以下の子供が通う病院、
診療科はたくさんあります。
内科、外科、耳鼻科、歯科、皮膚科etc…
ただただ医者目線で色々な病気を治療していくだけの小説です。
恋愛要素などは一切ありません。
密着病院24時!的な感じです。
人物像などは表記していない為、読者様のご想像にお任せします。
※泣く表現、痛い表現など嫌いな方は読むのをお控えください。
歯科以外の医療知識はそこまで詳しくないのですみませんがご了承ください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる