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悪霊

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  「ウインチェスター夫人…かぁ…。
  彼女の生きていた時代は、霊媒師がはやっていたのよね。
  『悪霊』にも実在したと言われてる霊媒師が登場するわ。」
  サラ・ウインチェスター夫人は、ボストンの霊媒師と言われる人物に指摘をされるサラ・ウインチェスターを思った。
  友人からの紹介で知り会った霊媒師…
  そのお陰で、おかしな散財をするはめになる…
  まあ、現在は観光名所にもなっているから、世の中の為になった散財とも言えなくはないが。
  まあ、あの時代では、それほど、珍しくもないサブカルチャーなんだと思う。
  私が水曜の夏スペシャルを楽しみにしていたように、お金持ちのサロンで、有名人に囲まれならキャッキャ、うふふと楽しんでいたのだと思う。

  「どうしたの?俺の顔をそんなに眺めて…」
「えっ…(°∇°;)」
私は、物思いに浸っていたことに赤面した。
「しょうがないなぁ…。赤くなっちゃって…。じゃ、特別スマイルをサービスするよ。」

  山臥は、頼みもしないサービスの昭和ハンサムな笑い顔をくれた。

  あの、バーガーショップでも…頼んで変な雰囲気になったサービスのスマイル。
  それを、無料で私はもらっていた。
  なんだか、不思議な気持ちになる。

  「アンタ…都会でホストとかしてたりする?」
私の質問に、山臥は『ああ、やっぱ、それ聞いちゃいますぅ?』と、書いてあるような笑顔をしてからこう言った。
「残念。いやぁ…誘われたんだよ…歌舞伎町で、さ。」
と、ここで一度、間を置く。 
  多分、バラエティー番組とかだと、『歌舞伎町?うそ、マジ?アンタなら、亀戸どまりよっ』とか、なんとか、東京の地域マウントがあるんだろうけど、田舎者には通じない。
  それに、一昔前、60過ぎの母を連れて演歌の公演を見に歌舞伎町に行ったとき、私の母ですら、なんか風俗に誘われた…あの地域はある意味異世界なのだ。

「でも、断ったよ。ほら、俺、そう言う接客業は向いてないからさぁ。」と、ここで、なんか上から目線でふっ…と、笑って、昔のドラマの演出のような『ふとした思いつき』という風にこう続けた。
「あ、でも、バーテンダーはやった事があるんだ。」
  
  「そうなんだ。凄いね。そう言えば、昔、夏スペシャルの怪奇ものとかあったじゃない?」
私の大胆な話の切り返しを、山臥は華麗に打ち返す。
「ああ、あったね。探検ものとか…」
と、ここから山臥はアマゾンのUMAについて語り始め、私は、山臥の歌う探検団のテーマを聞きながら、克也にメールをした。

  山臥は、既に出来上がっている。
  今は、アマゾンの大蛇やチュパカブラより、この山臥と2人の方が恐ろしい。
  コイツは、酔うと、隣の席の女性にウインクをしたり、ふざけた事を始めるからだ。
  が、克也からの連絡は来ない。
  
  山臥の事が、少し面倒くさくなってきた所で、少し酔いが覚め始めた山臥が、不意に真顔になる。

  「俺の場合、亡くなる前の人物に黒い影が見えるんだ。」
「はっ?」
「いや、霊能者の話だろ?」
「うん。」
私は、堀の深い顔に不気味な影を隠しながらボヤく山臥に少し恐怖と、多大な疑惑をもつ。
  
  コイツは、相手が自分に興味をなくしだすと、突拍子の無いホラ話を始める。
  前は、トイレの怪談で、真面目に聞いていたら、便器から河童に尻を触られたとか、ふざけたオチを聞かされたのだ。

  「俺、これで虚弱だから病院に良く行くんだけど…」

  と、山臥が始めたところでメールが来た。
  克也からだった…

  〈ゴメン、今、林道でパンクした。
  神社に参拝して、山道を走っていたら、なぜかパンクしたんだ。
  修理してから帰宅するから、時間がかかる。
  今日は行けないかもしれない。〉


  えっ(°∇°;)

  重い恐怖が、私の頭にタライのように降ってきた。
  それくらいのショックで目の前に星が降る。

  「どうしたの?」
「いや…克也がパンクしたから、今日は来れないかもしれないってメールが来たよ。」
私は、複雑な気持ちになる。
  山臥と二人というのもそうだが、克也…車って、そんなにパンク、するだろうか?
  しかも、神社の帰りに…

  私の中に奴の様々な行いが駆け巡る。

  克也は、オカルトの呪文で使われるような、命令調の言葉が好きだ。
  神社でも…神様に

  ○○神よ。雨を降らせよ!
  その力を示せ!

  見たいな願い事をしてないか、心配になる。

  西洋は一神教なので、それ以外のモノは、モンスターや悪魔の扱いだから、そんな表現になるが、
  日本の神様には、そんな口のきき方は喧嘩上等だと思うのだけど…。

  何やら、見えない闇に包まれる気持ちになる。
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