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悪霊

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  「何、寝てるのよっ!」
ファミレスの椅子に持たれて堂々と寝始めた剛に文句を言う。
  剛は、何回めかで気がついて、目を見開いた。

  「もうっ。夏休みが終わっちゃうでしょ?少しは手伝ってよ。」
「俺、何も出来ないよ。」
「話ぐらい聞けるでしょ?」
「聞けない。」

  えっ…(°∇°;)

  あまりにもキッパリとした剛の物言いに少しビビった。

  「聞けない…って、あきたって事?」
私は悲しくなる。まあ、生前から非協力的だったけど…私だって、店じまいをしたいのよっ。
  アンタが死んじゃって…もう、願いは叶わないんだから。
  七転八倒しながら、何万字も無駄文書いて500円を乞う必要は…もう無いんだもん。

  私だって、やめたいわよっ。
  乱歩先生みたく、インテリジェンスがある、なんか、良い感じの台詞を吐いてさ、退会して、二度とネットなんてあけなきゃ良いんだもん。

  不満が膨張する。
  剛は、空気を読まずに炭酸ジュースを飲み干す。
  それから、『ああっ』と、じいさんみたいな声をあげ、ゆったりと座り直して、それから、面倒くさそうに呟いた。

  「だって、人物が多くて覚えられないよ。」
「(;゜∇゜)」
「それは、卯月さんは頭が良いから分かるんだろうけど、俺は難しいドラマとか見ない。」

  しまったΣ(´□`;)

  私は、そこで頭を冷やす必要を感じた。
  そう、空想の剛は、ある程度、私の願いを叶えてくれるが、剛は、剛なんだ。
  ついでに、剛が飽きるくらいなら、読者だってそうに違いない。

  「ごめん。コーヒー取りに行くよ。ついでに、アンタの好きなジュース炭酸も持ってくる。」
  私は立ち上がる。
  そう、短くまとめないと。

 

  「ごめん。凄く短く話すとね、基本は進一と岩井の手紙のやり取り…」
私は、ゆっくりと剛に話しかける。
「進一…岩井?」
剛は、混乱したように首をかしげる。
  ヤバい…

  「もう、進一も岩井も良いわ(>_<。)
  まあ、私が、不思議な殺人事件について話すから、アンタは芋をつまみながら聞いてくれたらいいわ。」

  そう、この話は基本、手紙を貰うもの、受けるものの2人いれば事は足りるのだ。

  私は、祖父江(そぶえ)進一と言う記者になり、剛…手紙の受け手の岩井に向けて話始めることから始まる。

  それは不思議な事件だった。
  私は剛の死に目に会えなかったが、進一は降霊会の仲間の未亡人の奇っ怪な死に立ち会うことになる。

  殺されたのは姉崎 曽根子。金持ちで美人…多分。
  彼女は屋敷の土蔵で無くなっていた。
  しかも、全裸で。

  体には複数の傷があり、土蔵には鍵がかかっていて、その鍵は死体の下にある。
  よくある、密室アピールであるが、未完で終わるとなると、これを解決するのは、余程、頭が良くないと難しい。

  なんだか、泣けてきたが、話は続ける。

  「まあ、ここで、アンタの…ベルフェゴールの出番よ。」
私は剛に笑顔で語りかけた。

  姉崎邸の敷地に入るためには、門を通る必要があるようだ。
  そして、その門の前には、『躄車の物乞い』がいて、やって来た人物を記憶していた。

  彼は、屋敷にやって来たのは中年男と、時代遅れの姿をした女性が2人…

  物乞いは、体が不自由なので、土蔵には入り込めない…『躄車』は、容疑者から除外する為の演出だったのだろう。

  「で、なんで降霊会なんてするの?」
剛に聞かれて絶句する。
  そう、進一達は降霊会を行って犯人を探そうとするのだ。

  進一ぃ…答えてよぅ!

  と、心の中でブー垂れながら、剛には強気で話す。
「知らないわよ。警察には話てあるんでしょ?」
「それ、あてになるの?黒川って博士、インチキじゃないの?」
物語のキャラを抜いて、世間話モードにした途端、剛の追撃がイタイ。
黒川博士。この人が降霊会の中心人物で心理学者なのだ。

  「インチキ…かもしれないけれど…多分、インチキなんかじゃないわよ。うん。」
私は混乱しながらボヤく。
  手紙がインチキと言う可能性があるなら、
  降霊会が嘘と言う可能性もあり得なくはない。
  何しろ、これは推理小説。
  大概、この手のミステリーは、オカルトを否定してマウントをとる。

  「ふーん。でも、悪魔を出して、推理小説って成り立つの?」

  ( ̄□||||!!ええっ…
  「つよしぃ…アンタ、今日は、なんか、剛じゃないみたいだよ…。でも、この場合、アンタ、つまり、悪魔を呼び出したのは作者の私だから、悪さはしてない設定よ。
  ベルフェゴールは、7つの大罪『怠惰』を司る悪魔。ついでに、アンタが扮装してるから、土蔵をよじ登って女を殺したりしないわ。だって、面倒くさいでしょ?」
私が、剛の怠惰な生活を思い出して眉を寄せると、そこで、奴もなんとか納得した。
「うん。面倒くさいね。」
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