上 下
28 / 164
本を売る女

暦の終わり

しおりを挟む
  2019年…正月が終わるまで小説を書いていた。
  そして、結末をつけずに一旦やめた。

  それは、世界的に怪しげな流感が流行っていると噂があったからだ。

  特に中国から、なにやら怪しげな情報が流れてきていた。
  私は遺伝子治療がどうこう書いていたか、設定していたか…だったので、様子を見たかったのだ。

  2000年辺りは、中国はこの分野で先頭を走っているとか書いてあった。
  2012年辺りから、欧州も本格的に参加する…みたいな記事があって、目に止まったのだと思う。

  思えば、あそこで一気に書いちゃえば、なんて事は無かった。
  きっと、パッとしないまま、それでも、少しの評価とPVを稼いで、春先には他の作品で稼ぐとかいってたかもしれない…
まあ、本当に、そうなったかは分からないが。

  なぜなら、ここから、旧正月…そして、3月になる頃には本格的な世界規模のパンデミックになっていたのだから。

  年の終わりに別れたツヨシはまた、出稼ぎに出掛けていた。
  春にはまた、皆で会う予定だった。

  その年の春の事は、あまり良く覚えていない。
  が、その年の春分に、インド辺りの暦が終わるとか、ベテルギウスが爆発するとか噂があったのは凄く覚えている。

  

  ベテルギウスは、爆発しなかった。
  が、我々の夢は、サクラの開花を待たずに見事に散った。

  私はパラサイトを書き直しはじめていた。
  落ち着いて、今見ると、あまりの変わりように、最初に読んでくれた人に申し訳なく思う。

  が、当時の私は、正気ではなかったのだ。
  泣きながら、漫画の三国志を読み返していた。

  なんとか、中国のイメージを良くする必要にかられていたからだ。

  私は、いろんなものに脅されていた。
  深刻な世の中の流れ、
  パンデミック
  そして、都市伝説…『トミノの地獄』を軽はずみに使った事に…


  私は、現在も、音読して呪われるなんて思ってはいない。
  音読できない児童文学なんて、あり得ないからだ。
  だから、そんなものは、嘘なんだって、そう、笑い飛ばしたかったのに…


  禁忌の呪文を唱えるって、こんな気持ちなんだろうか?
 などと、思いながら書き直しに迫られた。
 世の中に出し、評価も貰って、逃げるわけにもいかないとか考えた。
 日本には、『逃げるが勝ち』と言う言葉もあったと言うのに…


  私は、ここで東洋医学を調べ、劉備玄徳に品格を乞うた。
 そして、あんな都市伝説を流行らせた人間と、そんなものに乗ってしまった馬鹿な私に腹をたてた。

  私は、馬鹿だ。浅はかな人間だ。皆んなそう思うに違いない。
  が、きっと、私の立場にたてば、また、違う見方が出来ると思う。

  『トミノの地獄』は、1919年、西條先生の処女作品として出版された『砂金』と言う本に収録された詩なのだ。

  これに怪しい噂がついて回るようになるのが、2004年と言われている。
  それが本当かどうかは知らないが、ネットではそう噂されていた。

  2004年…

  中国と感染症でサーズを思い出した私は、ここで驚愕する。
サーズ…重症急性呼吸器症候群…このウイルスが特定されたのが2003年…
  なんと、都市伝説が流行る一年前
 もう、孔明に泣いてすがりたい気持ちになった。が、諸葛 コウメイがこの世にいるわけもなく、
  私は、全て、忘れ去りたいと思いながら、書き換えていた。
  パンデミックではなく、明るいハッピーエンドを目指して。

  なんだろう?良くわからないが、ハッピーエンドに出来たら、全てが上手く進むような気がしていた。

  その年の3月…

  古代インドの暦が終わっても、私は生きていて、ベテルギウスも爆発はしていない。

  が、私はエタの闇をさ迷い歩く事になり、

  ツヨシの春からの仕事が消えた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

砂漠の国でイケメン俺様CEOと秘密結婚⁉︎ 〜Romance in Abū Dhabī〜 【Alphapolis Edition】

佐倉 蘭
キャラ文芸
都内の大手不動産会社に勤める、三浦 真珠子(まみこ)27歳。 ある日、突然の辞令によって、アブダビの新都市建設に関わるタワービル建設のプロジェクトメンバーに抜擢される。 それに伴って、海外事業本部・アブダビ新都市建設事業室に異動となり、海外赴任することになるのだが…… ——って……アブダビって、どこ⁉︎ ※作中にアラビア語が出てきますが、作者はアラビア語に不案内ですので雰囲気だけお楽しみ下さい。また、文字が反転しているかもしれませんのでお含みおき下さい。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

淫らな蜜に狂わされ

歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。 全体的に性的表現・性行為あり。 他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。 全3話完結済みです。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

月宮殿の王弟殿下は怪奇話がお好き

星来香文子
キャラ文芸
【あらすじ】 煌神国(こうじんこく)の貧しい少年・慧臣(えじん)は借金返済のために女と間違えられて売られてしまう。 宦官にされそうになっていたところを、女と見間違うほど美しい少年がいると噂を聞きつけた超絶美形の王弟・令月(れいげつ)に拾われ、慧臣は男として大事な部分を失わずに済む。 令月の従者として働くことになったものの、令月は怪奇話や呪具、謎の物体を集める変人だった。 見えない王弟殿下と見えちゃう従者の中華風×和風×ファンタジー×ライトホラー

6年3組わたしのゆうしゃさま

はれはる
キャラ文芸
小学六年の夏 夏休みが終わり登校すると クオラスメイトの少女が1人 この世から消えていた ある事故をきっかけに彼女が亡くなる 一年前に時を遡った主人公 なぜ彼女は死んだのか そして彼女を救うことは出来るのか? これは小さな勇者と彼女の物語

NPO法人マヨヒガ! ~CGモデラーって難しいんですか?~

みつまめ つぼみ
キャラ文芸
 ハードワークと職業適性不一致に悩み、毎日をつらく感じている香澄(かすみ)。  彼女は帰り道、不思議な喫茶店を見つけて足を踏み入れる。  そこで出会った青年マスター晴臣(はるおみ)は、なんと『ぬらりひょん』!  彼は香澄を『マヨヒガ』へと誘い、彼女の保護を約束する。  離職した香澄は、新しいステージである『3DCGモデラー』で才能を開花させる。  香澄の手が、デジタル空間でキャラクターに命を吹き込む――。

処理中です...