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本を売る女

恋はミステリー

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  あーあ。泣きたくなるほど支離滅裂だが、三島由紀夫先生を語る前に、自分の恋愛小説遍歴を語らねばならない。

  剛の旅費を稼ぐ他に書きたいジャンルがあった。

  恋愛少女小説だ。

  なんだろう?人は年をとると、子供の頃に読んだ物語を無性に読み返したくなる。
  少女小説…少女漫画…あの、なんか恥ずかしく綺羅やかな世界を再び覗いてみたい、浸りたい。

  そう考えた私は、少女漫画の雑誌を買った。
  が、21世紀の少女漫画は私の知ってる世界では無かった。
  少年漫画が連載されていたり、フレッシュ新人作品では、片想いの少年と超展開で体育準備室で出来上がる展開…

  こ、これじゃないわ…

  と、昭和の少女漫画への気持ちが募っていた。

  無いとなれば、自作しようと考えた。
  今の時代、大きな目の一途な少女なんて人気にはなれないのだろう。
  悪役令嬢がヒロインの上前を行くのが流行りなんだから。
  登場する王子は、ヒロインに騙されるロクデナシ設定。

  が、それがどうだと言うのだろう?
  私は、子供の多い時代に生まれたのだ。
  今の少女に好かれる話を書けなくとも、昭和の少女…だった人を捕まえたらいい。
  
  お料理上手で家事が好きで、一途で、ちょっぴりお転婆な、そんな少女の物語。

  ああ、私が、そんな事を考えはじめて間もなく、異世界恋愛の人気が爆上がりした。

  2019年、少しずつ書き始めた『魔法の呪文』が、完結していれば…
  今頃、同じ趣味の人達とA I 絵師を囲みながら、うふふ、オホホと楽しく語り合っていたかもしれない。

  でも、方向性は間違っては無いと思う。

  そう、これは、初め、童話として書き始めた物語。
  ヴィーナオーパンバル…その年の舞踏会へデビューする純白のお姫様に憧れる少女の物語。

  ウィーンで冬に行われる舞踏会。
  
  生涯に一度だけ許される純白のドレスとシュトラウスのワルツの物語を考えて…どうしたら、切り裂きジャックにたどり着くと思えるだろうか?
  そこから、転がるようにヒトラーが登場する。


  そして…ルドルフ・ヘス

  これが、全く意図せず結び付くのだから、もう、私にとって、恋愛ネタはミステリーなのだ。
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