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プロローグ
俺の研究
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「それじゃ、俺の研究を話そう。」
克也は、ドラマに登場する学者のように高らかに宣言した。
ドラマでは、それを拝聴する相手役は(°∇°;)みたいな顔で、その場を盛り上げるのだろうが、私は、役者のスキルは無いので、なんだか、場違いな照れ笑いを缶コーヒーで隠しながらヤレヤレ始まる…と、思っていた。
克也は、そんな私より、自分の素晴らしい研究を披露できる事に酔っていた。
そして、ふっ…と、ニヒルに笑い、気持ちを切り替えて話始めた。
「俺は、最近、全国の神社に行ってる。」
「え?なんか、怪しい組織と戦ってるんじゃなかったの?」
私の脳裏にフレミングの法則みたいなポーズで右手を振り回しながら、なんか、組織の中堅に嫌がらせされてるような話を思い出した。
克也が止まった…
しまった(>_<)
私は、自分の口の軽さを呪い、時が戻ってくれないかなんて、馬鹿げたことを切望した。
時を止めるスキルは私には無かった。
が、缶コーヒーは、克也の気持ちを上向きにするパワーを持ち合わせていた。
克也はコーヒーをグイッと飲み、そして、トレンディドラマの業界の人のような、謎の自信で私を見下したようにこう言った。
「ああ、あれ、あれは君たちを守るための方便(ほうべん)なんだ。実は、ネットで言い合いをしてね、少し脅されてたんだ。」
克也は、事も無げにまともな台詞をサラリと言った。
が、話がまともすぎて逆に疑いたくなる。
気持ちが顔に出たのだろうか?
克也は、からかようにこう言った。
「まさか、秘密組織なんて、本気で信じていないだろ?」
腹が立った…が、グッと我慢した。
今は謎の組織より、蒟蒻。コンニャクなんだから。
閉館まであと10分。
謎の組織の課長っぽい立場の人が特定したという、克也の住所も電話番号も…私には分からないのだ。
ここで、あの台詞の真意を聞かなくては!
それが、どんなにしょーもない答えだったとしてもっ。
腹に力を込め、私は、言霊使いの様に質問に念を込める。
「もちろん、そんな事はどうでもいいわ。で、どうやって群馬にコンニャクをもって行くの?」
私は言霊使いではない。が、私の発した言葉は、図書館から出てきた最後の利用者と共に、克也を慌てさせた。
克也は私からノートとペンを借りて茨城から横浜辺りの地図を書きながら話始めた。
「最近、俺は日本中の神社をめぐっている。」
「神社?」
「ああ、日本の神社の歴史は古く、神社が出来る前から聖域だった…俺は、その証拠を探してるんだ。」
克也の話を聞きながら、私は、奈良の酒船石とかを思い出した。
「うん、凄いね。で、」
「茨城にも神社を巡っている。有名なところからマイナーな神社まで。現場を歩いて探すんだが、ある神社で、昔の地図を見せてもらった事がある。」
克也は、そういいながら、自分で書いた地図の東京から群馬の辺りに線を書く。
「どうも、関東から群馬の辺りは昔海で、長い川があったらしいんだよ。」
「(°∇°;)……まじ?」
「だから、君の話、あり得るかもしれないよ。
小彦名命の伝説のように、ガガイモの実のような、小さな舟に乗せられたコンニャクの種芋が海から川へと流れて、群馬で芽を出したかもしれないね。」
ええっ…( ̄□||||!!
なんか、凄い!
と、当時の私は歓喜した。今考えると、そんな、余計なエピソードを混ぜなければ、今ごろ、評価がどうあれ、終わったに違いない。
が、その時は、私は長い長い物語の設定の迷路を脱出した気がした。
そして、凄く嬉しくなった。
「凄いよ、かっちゃん!これ、ミステリーまがじん『みい・ムー』に投稿できるよっ。」
私は感動してそう言った。
ミステリーまがじん『みい・ムー』は、昔からある不思議な話を集めた雑誌で、遠い昔、ミステリーの公募をしていた。
私も、あそこに投稿する事に憧れたことがある。
小説と違って、ミステリー大賞は、現実の話で勝負しなくてはいけないから、絶対、無理だと思っていた。
が、この2年、ノストラダムスの昔の本とかを読み返し、結構、勢いで書いても行けるんじゃないか?なんて考えたりした。
常世信仰とウィルス、それと戦う秦氏と聖徳太子…
それらのロマンが、走馬灯のようにグルングルン頭をめぐる。
主人公の三角関係も、浮気の話もすっかり忘れて飛鳥時代に気持ちがとんだ。
「ああ…悪い、俺、世の中に研究を公表する気はないんだ。
でも…今の話は、使っても構わないよ。協力はいつでもするよ。」
克也のコメントに図書館の終了のアナウンスが被って聞こえた。
私は暗い冬の夕暮れにコートのフードをかぶり帰り支度をした。
「分かった。じゃ、私、この話が終わったら、かっちゃんの話を書くよ。
そして、お金になったら、名古屋で高級和牛を土産にするね。」
当時、本気で数千円は稼げると信じていた。
和牛どころか…あめ玉一個も難しいんだけど。
そうして、現在、2023年…
『パラサイト』は去年完結させた。
夢見たような結末ではないけれど…
夢は叶わなかったけど…
泣いてる時間は私には無い。
約束通り、お迎えが来る前に、かっちゃん、アンタの話をミステリー雑誌の読者投稿に…送り出してあげるよ。
七転八倒の『パラサイト』のネタを使って、知名度とスキルアップしてさ。
そんな、小さな夢を見た。
私は再び、『パラサイト』の参考資料を手にした。
2012年マヤ歴滅亡の本
今度こそ。ノストラダムスと作家人生にけりをつけるのだ。
ページを開いた。
しょっぱながら、終末を警告する謎の音について書かれていた。
アポカリプスサウンド…
この世の終わりを告げる音がそう呼ばれたのは
マヤ歴が終わると言われる1年前。2011年ウクライナのキエフから…と、書かれていた。
嫌な予感が胸に込み上げてくる…
新時代の幕開けは、どっちだ?!
克也は、ドラマに登場する学者のように高らかに宣言した。
ドラマでは、それを拝聴する相手役は(°∇°;)みたいな顔で、その場を盛り上げるのだろうが、私は、役者のスキルは無いので、なんだか、場違いな照れ笑いを缶コーヒーで隠しながらヤレヤレ始まる…と、思っていた。
克也は、そんな私より、自分の素晴らしい研究を披露できる事に酔っていた。
そして、ふっ…と、ニヒルに笑い、気持ちを切り替えて話始めた。
「俺は、最近、全国の神社に行ってる。」
「え?なんか、怪しい組織と戦ってるんじゃなかったの?」
私の脳裏にフレミングの法則みたいなポーズで右手を振り回しながら、なんか、組織の中堅に嫌がらせされてるような話を思い出した。
克也が止まった…
しまった(>_<)
私は、自分の口の軽さを呪い、時が戻ってくれないかなんて、馬鹿げたことを切望した。
時を止めるスキルは私には無かった。
が、缶コーヒーは、克也の気持ちを上向きにするパワーを持ち合わせていた。
克也はコーヒーをグイッと飲み、そして、トレンディドラマの業界の人のような、謎の自信で私を見下したようにこう言った。
「ああ、あれ、あれは君たちを守るための方便(ほうべん)なんだ。実は、ネットで言い合いをしてね、少し脅されてたんだ。」
克也は、事も無げにまともな台詞をサラリと言った。
が、話がまともすぎて逆に疑いたくなる。
気持ちが顔に出たのだろうか?
克也は、からかようにこう言った。
「まさか、秘密組織なんて、本気で信じていないだろ?」
腹が立った…が、グッと我慢した。
今は謎の組織より、蒟蒻。コンニャクなんだから。
閉館まであと10分。
謎の組織の課長っぽい立場の人が特定したという、克也の住所も電話番号も…私には分からないのだ。
ここで、あの台詞の真意を聞かなくては!
それが、どんなにしょーもない答えだったとしてもっ。
腹に力を込め、私は、言霊使いの様に質問に念を込める。
「もちろん、そんな事はどうでもいいわ。で、どうやって群馬にコンニャクをもって行くの?」
私は言霊使いではない。が、私の発した言葉は、図書館から出てきた最後の利用者と共に、克也を慌てさせた。
克也は私からノートとペンを借りて茨城から横浜辺りの地図を書きながら話始めた。
「最近、俺は日本中の神社をめぐっている。」
「神社?」
「ああ、日本の神社の歴史は古く、神社が出来る前から聖域だった…俺は、その証拠を探してるんだ。」
克也の話を聞きながら、私は、奈良の酒船石とかを思い出した。
「うん、凄いね。で、」
「茨城にも神社を巡っている。有名なところからマイナーな神社まで。現場を歩いて探すんだが、ある神社で、昔の地図を見せてもらった事がある。」
克也は、そういいながら、自分で書いた地図の東京から群馬の辺りに線を書く。
「どうも、関東から群馬の辺りは昔海で、長い川があったらしいんだよ。」
「(°∇°;)……まじ?」
「だから、君の話、あり得るかもしれないよ。
小彦名命の伝説のように、ガガイモの実のような、小さな舟に乗せられたコンニャクの種芋が海から川へと流れて、群馬で芽を出したかもしれないね。」
ええっ…( ̄□||||!!
なんか、凄い!
と、当時の私は歓喜した。今考えると、そんな、余計なエピソードを混ぜなければ、今ごろ、評価がどうあれ、終わったに違いない。
が、その時は、私は長い長い物語の設定の迷路を脱出した気がした。
そして、凄く嬉しくなった。
「凄いよ、かっちゃん!これ、ミステリーまがじん『みい・ムー』に投稿できるよっ。」
私は感動してそう言った。
ミステリーまがじん『みい・ムー』は、昔からある不思議な話を集めた雑誌で、遠い昔、ミステリーの公募をしていた。
私も、あそこに投稿する事に憧れたことがある。
小説と違って、ミステリー大賞は、現実の話で勝負しなくてはいけないから、絶対、無理だと思っていた。
が、この2年、ノストラダムスの昔の本とかを読み返し、結構、勢いで書いても行けるんじゃないか?なんて考えたりした。
常世信仰とウィルス、それと戦う秦氏と聖徳太子…
それらのロマンが、走馬灯のようにグルングルン頭をめぐる。
主人公の三角関係も、浮気の話もすっかり忘れて飛鳥時代に気持ちがとんだ。
「ああ…悪い、俺、世の中に研究を公表する気はないんだ。
でも…今の話は、使っても構わないよ。協力はいつでもするよ。」
克也のコメントに図書館の終了のアナウンスが被って聞こえた。
私は暗い冬の夕暮れにコートのフードをかぶり帰り支度をした。
「分かった。じゃ、私、この話が終わったら、かっちゃんの話を書くよ。
そして、お金になったら、名古屋で高級和牛を土産にするね。」
当時、本気で数千円は稼げると信じていた。
和牛どころか…あめ玉一個も難しいんだけど。
そうして、現在、2023年…
『パラサイト』は去年完結させた。
夢見たような結末ではないけれど…
夢は叶わなかったけど…
泣いてる時間は私には無い。
約束通り、お迎えが来る前に、かっちゃん、アンタの話をミステリー雑誌の読者投稿に…送り出してあげるよ。
七転八倒の『パラサイト』のネタを使って、知名度とスキルアップしてさ。
そんな、小さな夢を見た。
私は再び、『パラサイト』の参考資料を手にした。
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ページを開いた。
しょっぱながら、終末を警告する謎の音について書かれていた。
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この世の終わりを告げる音がそう呼ばれたのは
マヤ歴が終わると言われる1年前。2011年ウクライナのキエフから…と、書かれていた。
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