お願い乱歩さま

のーまじん

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活動開始

ミスセプテンバー

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 あれから、駅まで3人で帰った。
 そこで、葵は『ロンドン浪漫』の作者について秀実にきいた。

 まず、この本は古い同人誌で秀実のお母さんは、誰かに貰って読まずに本棚に入れていたらしい事、そして、作者はミス・セプテンバーと言う人物なのは分かった。

 印刷屋については、90年代の話で、既に現在では無くなっているようだった。
 つまり、手がかりは無くなっていた。
 秀実は文芸部に入部して過去の部員や作品を探したようだけど、それらしい人物は見当たらなかったそうだ。

 まあ、小説といっても、サブカルチャーな話の場合、18禁な話題も多く学校の活動とは別な所で隠れてするのが当時のスタイルらしかった。

 パソコンで自分達でサイトを立ち上げたりして投稿したり、文通したりする…とか言われたけど、葵にはイマイチ、ピンと来なかった。

 ただ、当時の絵師は、ほぼ手書きでイラストを描いていて、細かい線や、点を一つ一つ、手書きで作ったのかと思うと、なんだか、情念のような、胸に来る感じがする。

 葵は、1人、部屋の中で奈穂子に真実をどう聞こうか悩んでいた。

 奈穂子は、あまり、昔の活動の話をされたくないようだった。

 それは、父親と奈穂子の仲を見ても聞くべきではないと葵も感じていたが、秀実と遥希に狙われていることは話た方がいい気はする。

 葵は、自分のスマホを見つめてぼんやりとしていた。
 灯りの消えた部屋の中で、スマートフォンの柔らかい光が広がっている。
 メールとか、面倒だよね(-"-;)

 葵は、あまり使わないメールを開く。
 奈穂子はSNS関連はしていない。
 メールも最低限の連絡用にある程度だ。
 その徹底した態度が、逆に過去に何があったのか、葵を不安にさせるのだ。

 奈穂子宛のメールのリストを見つめていた葵は、思いきるように、新しいメールを作成する。

 金曜に遊びに行ってもいい?

 結局、これだけの内容を1時間考えてから打ち込むと、葵は風呂に入るために部屋を出た。
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