お願い乱歩さま

のーまじん

文字の大きさ
上 下
10 / 61
活動開始

感想

しおりを挟む
 葵と遥希は、この時点で自分達が思ったよりも面倒な事を始めた事に気がついた。

 秀実は少し呆れながら、思い出したように遥希に聞く。
 「ところで、私の本は?」

 秀実の言葉に葵は弾かれたように鞄から本を取り出した。
 「ありがとう。私も借りちゃったの。」
葵は秀実に本を返した。
秀実は本を受け取りながら二人を見る。

 「ところで、大川くん、この本の感想を聞かせてくれない?」
秀実の唐突な質問に葵も興味を引かれる。

 超、淡い恋愛ジレジレのアーサーとグラストンのBL…BL初体験の、と、言うか、BL自体知らなそうな遥希の感想は、葵にも興味がある。

 特に、刑事のアロンダイトに追い詰められたアーサーをかばったグラストンを愛してる…と、エンデングで冗談混じりにアーサーが抱きしめたシーンとか…

 真面目で固そうな遥希にはどう見えたのだろう(*''*)
 気持ちと裏腹に、そしらぬ顔を作る葵。
 真逆に挑みかかるように遥希を見る秀実。

 遥希は尋常でない雰囲気に緊張する。

 「なんか…二人ともスゲーな。俺みたいなのが、気軽に参加して良かったのか心配になるよ。」
遥希は恐縮する。

 「そんなことは今は、良いわ。私は『ロンドン浪漫』の感想を聞きたいの。」
 秀実にうながされて遥希は語り始めた。

 「面白かったよ。19世紀のコーヒーショップの話とか、勉強になったし、
 アーサーが司書として勤めた富豪の未亡人が変死して、彼が疑われて、心配するグラストンや、アーサーをやり込めたい刑事のアロンダイトの攻防とか…

 これが自費出版の同人作品なんて木曽さんに教わるまで分からなかったよ。
 多分、元ネタはシャーロック・ホームズなんだろうけど、元があっても気にならない面白さがあったよ。」
遥希の回答は優等生のようだった。
 葵は何故かがっかりしてため息が出る。
 が、秀実はなお嬉しそうに遥希を観察している。
 「で、冷静沈着なアーサーが、最後にグラストンに抱きついたのは、どう感じたの?」
秀実の質問に葵が遥希を見る。

 そうよ、そこ、そこが知りたいのよっ。

 葵はドキドキしながら秀実のナイス質問に、心の『いいね』ボタンを連打する。

 少し頬を赤く染めて、じっと葵に見つめられて、遥希は混乱する。

 何か、凄いコメントをしないと、格好がつかない雰囲気が流れている。

 遥希は変な緊張感を唾と共に飲み込んだ。

 「わるい、西洋文学とか、良くわからないんだ。」
遥希、一気に格好つけるのを諦める。
「え、文学!?愛してるとかいってたじゃん!」
葵が思わず口走る。
それに遥希が眉を寄せながら反応する。

 「そうだよな、確かに、日本語なんだけど西洋書の物語はなしって、なんだか変なんだよな。
 抱きついたり、キスするとか、生活習慣も違うし、愛してるとか、普通の会話でバンバン出てきて、なんか混乱するんだよ。」
遥希は、困った顔をする。
 生活習慣……(>_<。)

 葵は、何か、憑き物が落ちたように力が抜けるのを感じる。
 逆に、秀実はニヤリと嬉しそうに笑う。

 「そう…あなたには、アレがそう見えるのね。」
何故か秀実は上から目線で遥希を見るが、混乱している遥希は、それを素直に受け止めている。

「で、木曽さん、折角だから、あなたの感想も教えてくれない?」
秀実に言われて、葵は顔をあげる。

 え、今、男子の前で、BL感想を言えと、そう言われてるのでしょうか( ̄□ ̄;)!!

 今度は葵が混乱する番である。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話

矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」 「あら、いいのかしら」 夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……? 微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。 ※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。 ※小説家になろうでも同内容で投稿しています。 ※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。

JKがいつもしていること

フルーツパフェ
大衆娯楽
平凡な女子高生達の日常を描く日常の叙事詩。 挿絵から御察しの通り、それ以外、言いようがありません。

校長先生の話が長い、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
学校によっては、毎週聞かされることになる校長先生の挨拶。 学校で一番多忙なはずのトップの話はなぜこんなにも長いのか。 とあるテレビ番組で関連書籍が取り上げられたが、実はそれが理由ではなかった。 寒々とした体育館で長時間体育座りをさせられるのはなぜ? なぜ女子だけが前列に集められるのか? そこには生徒が知りえることのない深い闇があった。 新年を迎え各地で始業式が始まるこの季節。 あなたの学校でも、実際に起きていることかもしれない。

寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい

白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。 私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。 「あの人、私が

傷を舐め合うJK日常百合物語

八澤
青春
柊 桜(ひいらぎ サクラ)が高校で出会い、仲良くなった天彩 玲(あまいろ レイ)はやけに体に触れてくる。サクラは体がぽかぽか暖かいから! とまるで言い訳のように口にして。──特に手を繋ぎたがる。当初は嫌がっていたサクラも次第に流され、常に体を寄せ、ふと気がつくと指が重なり絡まり合っている。 ──レイは相手に触れることで思考を読み取る能力を持っていた。 サクラはそんな能力など露知らず、レイって妙に察しがいいのよね……と不思議に思いながら友情から愛情に差し掛かる感情を常に相手に把握されている相思相愛の甘々イチャイチャ百合物語。 概要: 女子高校生の日常からSF異世界何でもありの百合物語です。基本1000~4000文字前後の一話完結ですが、長くなると01、02……と分けます。レイとサクラのカップリングのみとなります。シリアスな展開もありますがどれもハッピーエンドです。各話の時系列などは滅茶苦茶です。タイトルに◆◇が入っている話はレイ視点となります。本作は全年齢版になります。R18描写を含むエピソードは「小説家になろう ムーンライトノベルズ」にてR18版を公開中です。カクヨムに全話投稿中です。アルファポリスには1日1話投稿予定です。

私たち、博麗学園おしがまクラブ(非公認)です! 〜特大膀胱JKたちのおしがま記録〜

赤髪命
青春
街のはずれ、最寄り駅からも少し離れたところにある私立高校、博麗学園。そのある新入生のクラスのお嬢様・高橋玲菜、清楚で真面目・内海栞、人懐っこいギャル・宮内愛海の3人には、膀胱が同年代の女子に比べて非常に大きいという特徴があった。 これは、そんな学校で普段はトイレにほとんど行かない彼女たちの爆尿おしがまの記録。 友情あり、恋愛あり、おしがまあり、そしておもらしもあり!? そんなおしがまクラブのドタバタ青春小説!

坊主女子:スポーツ女子短編集[短編集]

S.H.L
青春
野球部以外の部活の女の子が坊主にする話をまとめました

処理中です...