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懺悔
ロザリオ
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プレアティは失望を隠さなかった。
カルロは暗い牢獄でプレアティの表情は見えなかった。
しばらくの沈黙が場を支配する。
カルロは混乱しながらも訳のわからない胸の苦しさを感じた。
それは、この男に対する同情なのか、それとも、何か大切なものを見落とした気持ちが込み上げる為なのか…
カルロは無表情を装いながら気持ちを落ちつけた。
流されては終わりだ。そうなれば悪魔に捕まってしまう。
カルロは胸のロザリオを握りしめながら心の中で祈りを捧げた。
それは、幾度となく巡る季節のように普遍に流れるイエスの奇跡と聖母マリアへの祈りと愛と共に心を暖かくさせたが、
同時に、祈りむなしくプレアティに屠られた被害者たちの哀れな断末魔を思い出させた。
七番目のプレアティは、少年を弄び惨殺した残忍な男だ。
キリストの復活の話を聞かされて育つ純朴な人たちの中には悪魔にもまた、悪い人間を復活させる力があると信じるものがおり、時おり、そんな考えに囚とらわれる人が、こうして昔の悪人の名前を語るのだ。
しかし、この男にもまた、生まれた時に神からの祝福と、洗礼された名前を持っているはずだ。
が、人は特に、病や戦争などで荒れた世の中に身をおくと、神への信仰と愛を手放してしまう。
そうして道に迷う人々を、天国へと続く光の道に再び戻す手助けをするのがカルロ達、祓魔師の役目なのだ。
「使い込まれたロザリオですね?」
プレアティは、気持ちを切り替えたように明るくカルロに声をかける。
「はい、師の形見なのです。」
カルロは少年時代に読み書きを始めとする世界の理を教えてくれた教会の僧を思い出す。
「ロザリオは、マリアへの永遠に巡る祈り……でしたかね?
カルロ様、あなたは、魔物にもそんなサイクルがあると、そう、考えていらっしゃいますね?」
プレアティの言葉に、カルロは、数年前に執筆した『魔物の系譜』を思い出した。
「『魔物の系譜」あれを読まれたのですか?」
カルロは少し戸惑いながら質問した。
はじめて書き下ろしたあの本の内容には、今でも納得いかない未完成な部分を感じていた。
「はい。興味深く拝読しました。
私の前の6人のプレアティについて、も。」
プレアティは、音楽の話でもするように楽しげに話しかけてくるが、『魔物の系譜』は、そんな楽しげな話ではない。
6人の残虐極まる殺人鬼の考察なのだ。
カルロは暗い牢獄でプレアティの表情は見えなかった。
しばらくの沈黙が場を支配する。
カルロは混乱しながらも訳のわからない胸の苦しさを感じた。
それは、この男に対する同情なのか、それとも、何か大切なものを見落とした気持ちが込み上げる為なのか…
カルロは無表情を装いながら気持ちを落ちつけた。
流されては終わりだ。そうなれば悪魔に捕まってしまう。
カルロは胸のロザリオを握りしめながら心の中で祈りを捧げた。
それは、幾度となく巡る季節のように普遍に流れるイエスの奇跡と聖母マリアへの祈りと愛と共に心を暖かくさせたが、
同時に、祈りむなしくプレアティに屠られた被害者たちの哀れな断末魔を思い出させた。
七番目のプレアティは、少年を弄び惨殺した残忍な男だ。
キリストの復活の話を聞かされて育つ純朴な人たちの中には悪魔にもまた、悪い人間を復活させる力があると信じるものがおり、時おり、そんな考えに囚とらわれる人が、こうして昔の悪人の名前を語るのだ。
しかし、この男にもまた、生まれた時に神からの祝福と、洗礼された名前を持っているはずだ。
が、人は特に、病や戦争などで荒れた世の中に身をおくと、神への信仰と愛を手放してしまう。
そうして道に迷う人々を、天国へと続く光の道に再び戻す手助けをするのがカルロ達、祓魔師の役目なのだ。
「使い込まれたロザリオですね?」
プレアティは、気持ちを切り替えたように明るくカルロに声をかける。
「はい、師の形見なのです。」
カルロは少年時代に読み書きを始めとする世界の理を教えてくれた教会の僧を思い出す。
「ロザリオは、マリアへの永遠に巡る祈り……でしたかね?
カルロ様、あなたは、魔物にもそんなサイクルがあると、そう、考えていらっしゃいますね?」
プレアティの言葉に、カルロは、数年前に執筆した『魔物の系譜』を思い出した。
「『魔物の系譜」あれを読まれたのですか?」
カルロは少し戸惑いながら質問した。
はじめて書き下ろしたあの本の内容には、今でも納得いかない未完成な部分を感じていた。
「はい。興味深く拝読しました。
私の前の6人のプレアティについて、も。」
プレアティは、音楽の話でもするように楽しげに話しかけてくるが、『魔物の系譜』は、そんな楽しげな話ではない。
6人の残虐極まる殺人鬼の考察なのだ。
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