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セカンドシーズン
間接キス
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鮮烈な出だしで奈津子と雄二郎の出会いの物語は始まる。
それは、ある工事現場のプレハブの休憩所。
工事現場の朝は早いが、
終わるのも早くて、さっさと作業員は帰って行く。 が、設計などの仕事に携わる人間は、事務処理や明日の準備をするために居残るわけで、
私は、居残りの前に自販機で炭酸飲料を買う。
薄暗くなる休憩室で、自販機がこうこうと明かりを振り撒きながら、存在感を誇示し始める。
ガタリ。
ジュースの缶が落ちてきて、私はそれを拾ってプルタブをあける。
プシュッと、景気のよい音が控え室に響く。
私は、ゴザを敷いただけの座敷に座り喉を鳴らしてそれを飲んだ。
初夏の柔らかい夕日にてらされて、オレンジの香りに包まれながら、解放感に酔っていると、ふと、右横に違和感を感じてそちらをみた。
黒い塊のような物が見えて驚いた。
そして、次の瞬間、それが、中年の作業員の男だと認識してため息をついた。
「二郎さん?」
こちらをじっと見つめていた男に私は声をかけた。
四角い顔のしっかりした体つきに似合わない、気の弱そうな男が名前を呼ばれて、はにかみながら私に笑いかけて言った。
「それ…おいしそうだね?」
私は、何を言ってるのか分からなかった。
が、彼の視線がそれが何かを教えてくれた。
缶ジュースの事だ。
「私の口つけたので良ければ、飲む?」
私が聞くと、二郎は昭和の子供のような笑顔で、
「いいのっ?」
と、とろけるように笑った。
よくないわよっι(`ロ´)ノ
私は、スマホに向かって文句を言う。
全く…雄二郎の奴…それじゃあ、奈津子と間接キスになっちゃうじゃないっ。
私は、学生時代を思い出しながら、大人げない批判を…またしている。
間接キスなんて…
馬鹿馬鹿しいけど、やはり、このくだりは許せない。
そんな、少女の独占欲が胸に膨らみ、逆に、中学時代に気持ちを戻して行く。
少女時代、奈津子に学校帰りに飲みかけのジュースを奪われた記憶がよみがえる。
「少し飲ませてよ。」
そういって、奈津子の唇が、私の飲んだジュースの缶に押し付けられるあの瞬間のドキドキが蘇ってくる。
それは、ある工事現場のプレハブの休憩所。
工事現場の朝は早いが、
終わるのも早くて、さっさと作業員は帰って行く。 が、設計などの仕事に携わる人間は、事務処理や明日の準備をするために居残るわけで、
私は、居残りの前に自販機で炭酸飲料を買う。
薄暗くなる休憩室で、自販機がこうこうと明かりを振り撒きながら、存在感を誇示し始める。
ガタリ。
ジュースの缶が落ちてきて、私はそれを拾ってプルタブをあける。
プシュッと、景気のよい音が控え室に響く。
私は、ゴザを敷いただけの座敷に座り喉を鳴らしてそれを飲んだ。
初夏の柔らかい夕日にてらされて、オレンジの香りに包まれながら、解放感に酔っていると、ふと、右横に違和感を感じてそちらをみた。
黒い塊のような物が見えて驚いた。
そして、次の瞬間、それが、中年の作業員の男だと認識してため息をついた。
「二郎さん?」
こちらをじっと見つめていた男に私は声をかけた。
四角い顔のしっかりした体つきに似合わない、気の弱そうな男が名前を呼ばれて、はにかみながら私に笑いかけて言った。
「それ…おいしそうだね?」
私は、何を言ってるのか分からなかった。
が、彼の視線がそれが何かを教えてくれた。
缶ジュースの事だ。
「私の口つけたので良ければ、飲む?」
私が聞くと、二郎は昭和の子供のような笑顔で、
「いいのっ?」
と、とろけるように笑った。
よくないわよっι(`ロ´)ノ
私は、スマホに向かって文句を言う。
全く…雄二郎の奴…それじゃあ、奈津子と間接キスになっちゃうじゃないっ。
私は、学生時代を思い出しながら、大人げない批判を…またしている。
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馬鹿馬鹿しいけど、やはり、このくだりは許せない。
そんな、少女の独占欲が胸に膨らみ、逆に、中学時代に気持ちを戻して行く。
少女時代、奈津子に学校帰りに飲みかけのジュースを奪われた記憶がよみがえる。
「少し飲ませてよ。」
そういって、奈津子の唇が、私の飲んだジュースの缶に押し付けられるあの瞬間のドキドキが蘇ってくる。
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