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番外編 幕間小話
【真砂ホームレス】
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とある日、真砂が家を無くした。
「いやいやいや、違うから。俺の官舎、かなり古くなってたから改修すんだよ。だから、終わるまでお前の部屋に間借りさせてくれって話」
「ふざけんな、なんで俺の部屋なんだよ。適当に空いてるとこ使えばいいだろ」
「やだよ、カビとホコリだらけの襤褸部屋なんて。そんなとこで寝たら1日で倒れちゃうよ。これでもボンボンなのよ。温室育ちなのよ、俺」
「自慢げに言うことじゃねぇよ。聞いてるこっちが恥ずかしいわ。つーか実家帰れば良いじゃねぇか」
「やだ。通勤くそ遠いし、親父の小言うるさいし。その点、お前の部屋って閻魔殿の中だし、独りもん同士だし。頼むよー、まじで」
という理由で、夕立に泣きついているのだった。真砂としては、これにかこつけて同棲気分を満喫するつもりなのだろう。
「ったく……。で、いつなんだよ、工事終わるの」
「早くて1ヶ月後」
「なげぇわ。無理」
「なんでだよー! どうせお互い、寝るしか用無いんだしさぁ。別に良いじゃんかよー」
「寝具ひとつしかねぇし、一間だし、気が休まんねぇだろ」
「同じベッドで寝りゃいいじゃん。お前の、セミダブルだろ」
「てめぇの体格考えろ。無駄にすくすく育ちやがって、ダブルでもせめぇわ。そういやぁ閻魔んとこはキングだから、居候ならあいつに頼めよ。部屋も広いし、書斎とかあるぞ」
とんでもない提案に、真砂は顔を引き攣らせて夕立を見やる。本人は至って大真面目なので、余計にタチが悪いのだ。
「お前さぁ……いくらなんでもそれはねぇよ。王のこと軽く扱い過ぎだぞ」
「別にそういうんじゃねぇよ。俺も居候してたし、場所的に最適だと思っただけだ」
「相変わらず単純馬鹿だねー。お前は超絶特例だったからで、王の私室なんてのは普通、入ることすら許されない場所なんだよ。よしんば借りられたとしても、俺の精神が擦り切れるっつーの」
「そういうもんか? あんなに広いのに勿体ねぇな」
「はーあ、しゃあない。じゃ、陀津羅に頼むかな。あいつならお前と違って優しいし、部屋も綺麗そう──」
「駄目だ」
「え、なに?」
「あいつの部屋は、絶対に、駄目だ」
夕立にしては珍しく、ひと言ずつはっきり区切って言った。陀津羅の汚部屋を知る夕立としては当然の反応なのだが、事情を知らない真砂には別の理由に見えたらしい。意地悪く口角を上げ、ずいと顔を寄せて囁いた。
「なに? もしかしてそれ、嫉妬?」
「は? 違うわ。誰に対する嫉妬だよ」
「だったらなんでそんなに嫌がるんだよ」
「別に嫌がってるわけじゃねぇ」
「でもさっき、かなり食い気味に駄目って言ったじゃん。あの反応は普通じゃないよな? 嫉妬じゃないってんなら、一体なんなワケ?」
「……」
「ふうん、だんまり作戦か。別に良いぜ、今夜にでも陀津羅んとこ押しかけるから。後はあいつ次第ってことで」
夕立は皺を刻んだ眉間を押さえてしばし考えた結果、相棒の名誉を守ることを選んだ。
「……分かったよ。俺の部屋で良い」
「まじで!? やったぁ!」
「ただし布団は持ってこいよ。てめーは床で寝ろ」
「それは無理。さっきも言ったけど俺、ホコリアレルギーだから。床なんかで寝たらくしゃみ止まんなくなるもん。ベッド使わせてくれないなら陀津羅んとこ行く」
「くそ……。まじで最悪だな、お前」
「よっしゃあ! しかしさぁ、お前がそこまでするってなんなの? まじで嫉妬?」
「違うっつってんだろ。それ以上聞いたらこの話は無しだ。もう知らん」
「分かりました、二度と聞きません。じゃあ今夜からルームシェアよろしくなー、夕立! うはぁ、楽しみぃ!」
こうして、かなり強引に夕立と真砂の共同生活が始まった。
◇
1日目。
「おかえりー、ってもう夜中じゃん! お前、仕事し過ぎじゃない?」
「うるせぇな、これが普通なんだよ。お互い寝るしか用無いって言ったの、お前だろ」
「そうだけどさぁ……。さすがにこんな時間まで帰って来ないとは思わなかったぜ。飯と風呂は?」
「飯は済ませた。風呂は起きてから入る。寝るからもっと端いけよ」
「お、おう……。じゃあ、おやすみ……」
2日目。
「おかえりー。今日も遅かったなぁ」
「んー。寝る」
「おう……おやすみ……」
3日目。
「おかえ……」
「寝る」
4日目。
「おか……」
「寝る」
6日目。
「あ゙あ゙あ゙ぁ゙ぁ゙ー! もぉ無理! 明日休みだよな!? ちょっとそこ座れ、夕立!」
ついに真砂が発狂した。夕立は嘆息しつつ床に胡座をかき、袂から煙管を取り出して火をつける。
「夜中なんだから喚くなよ。近所迷惑だろ」
「これが喚かずにいられるか! 何なんだよ、この生活はッ! 帰りは遅いし、すぐ寝るし、起きたら速攻で出てくし! なんなら連絡も無しに帰って来ねぇ日まであるし! 会話なんてほとんどゼロじゃん! 倦怠期の夫婦より酷いぞ!」
「だったらなんだ。約束通り部屋は貸してやってんだ、キレられる筋合いねぇだろ」
「そっ……それはそうだけど……。あー、もう! なんで分かんねぇかな!? 俺はもっとこう、なんつーか、束の間の楽しいルームシェアライフを期待してたんだよ!」
「ほーお、そりゃアテが外れて残念だったな。俺に楽しさなんて求めたお前が悪い」
「ぐうっ……」
顔色ひとつ変えず、飄々と紫煙を吐く夕立に、真砂はぐっと奥歯を噛み締めた後、大きく溜め息をついてがっくりと肩を落とした。
馬の耳に念仏、犬に論語、兎に祭文の有様に、いよいよ無力感に苛まれる。特別なにかを期待していたわけではなかったが、ここまですれ違い生活になるとは思ってもみなかったのだ。
しかし、夕立を責めるのもお門違いである。
「はぁ……もーいい。そうだよな、俺が間違ってた……。喚いて悪かったよ、ごめん……」
真砂は脱力するままに寝具へ横になり、夕立へ背を向けてふて寝の体勢を取った。
しんと静まり返った部屋には夕立が煙管をふかす呼気だけが響いていたが、そのうち何やらごそごそと動く気配がし始めた。
真砂が肩越しに背後を見ると、夕立がテレビに何かの機械と端子を繋いでいる。
「……何やってんの?」
「ブルーレイプレーヤー繋いでる。羽衣石から映画と一緒に借りた。俺んとこ、普通のプレーヤーしかねぇから」
「映画? お前、そんなの見るタイプだっけ?」
「休みの日は大体、映画見るか本読んでるぞ。お互い休みだし、お前に予定無いなら一緒に見ようかと思って。平日、あんまゆっくり出来ねぇだろ」
こちらをちらりとも見ずに淡々とそんなことを言う夕立に、真砂の虚無感は一瞬で吹き飛び、歓喜があっさり頂点を振り切った。跳ね起きて寝具から飛び降りると、一目散に夕立へ駆け寄って、背後から思い切り抱き締める。
「お前ってやつは……! ほんっとに可愛いなぁ、もぉ! そんなん反則だろ!」
「うお、飛びつくんじゃねぇよ、危ねぇな。壊したら弁償だぞ」
「するするぅ! 弁償でも何でもするから抱っこさせてー!」
「やめろ、気持ち悪ぃ。ったく、怒ったり喜んだり、忙しねぇ奴だな。遊んでねぇでお前も手伝えよ。配線めんどくせぇんだぞ」
「了解! で、どんな作品借りてきたの?」
「人が拷問されたり殺されたりするやつ」
「えぇ……。毎日、死人ばっかり見てるくせに、よりによって何でそんなの借りたんだよ……」
「俺が見てんのは死後だからな。死ぬまでの背景や過程が気になる」
「つってもフィクションだろ? 死ぬ過程なんて、地獄行ったら見れんじゃん、ノンフィクションでさぁ」
「新しい呵責の勉強も兼ねてんだよ。文句言うなら見るな」
「分かった、分かった。ったく、変なところで真面目なんだよなぁ、お前は」
「てめぇはもっと真面目に生きろ」
なんだかんだで設置を終え、仲良く映画鑑賞を始める2人なのだった。
◇
1ヶ月後。無事に官舎の改修が終わり、奇妙な共同生活も終了した。いつものように閻魔殿へ遊びに来ていた真砂に、陀津羅が声をかける。
「お疲れ様です。改修工事、無事に終わって良かったですね」
「まぁね。つってもうちの仕事だし、ほとんど俺が監督したから間違いないんだけどさ」
「それにしても、本当に彼とひと月も共同生活を送るとは驚きました。よく間違いが起きなかったものです」
「いやぁ、ギリギリだったわ……。あいつ、たまに寝惚けて抱き着いてくんのよ。何回、襲いかけたか覚えてないもん」
「半月も持たずに叩き出されると思っていましたが、少しだけ貴方を見直しました」
「そりゃどーも。ま、これも良い経験になったってことにしとくよ」
そこへ夕立が戻ってくると、真砂を見て思い切り不愉快そうに顔をしかめた。
「なんだ、てめぇ。やっと出て行ったと思ったら、まだうろちょろしてやがんのか」
「ちょ、なにその言い方! 一緒に暮らして仲良くなったオチのはずなのに、前より当たりキツいってどういうこと!?」
「そんなわけねぇだろ、逆にうんざりなんだよ。しばらく顔見せんな、くそじじい」
「ええー!? そんなぁー!」
真砂の淡い期待は無惨に打ち砕かれ、至って元通りの日常が始まったのであった。
「いやいやいや、違うから。俺の官舎、かなり古くなってたから改修すんだよ。だから、終わるまでお前の部屋に間借りさせてくれって話」
「ふざけんな、なんで俺の部屋なんだよ。適当に空いてるとこ使えばいいだろ」
「やだよ、カビとホコリだらけの襤褸部屋なんて。そんなとこで寝たら1日で倒れちゃうよ。これでもボンボンなのよ。温室育ちなのよ、俺」
「自慢げに言うことじゃねぇよ。聞いてるこっちが恥ずかしいわ。つーか実家帰れば良いじゃねぇか」
「やだ。通勤くそ遠いし、親父の小言うるさいし。その点、お前の部屋って閻魔殿の中だし、独りもん同士だし。頼むよー、まじで」
という理由で、夕立に泣きついているのだった。真砂としては、これにかこつけて同棲気分を満喫するつもりなのだろう。
「ったく……。で、いつなんだよ、工事終わるの」
「早くて1ヶ月後」
「なげぇわ。無理」
「なんでだよー! どうせお互い、寝るしか用無いんだしさぁ。別に良いじゃんかよー」
「寝具ひとつしかねぇし、一間だし、気が休まんねぇだろ」
「同じベッドで寝りゃいいじゃん。お前の、セミダブルだろ」
「てめぇの体格考えろ。無駄にすくすく育ちやがって、ダブルでもせめぇわ。そういやぁ閻魔んとこはキングだから、居候ならあいつに頼めよ。部屋も広いし、書斎とかあるぞ」
とんでもない提案に、真砂は顔を引き攣らせて夕立を見やる。本人は至って大真面目なので、余計にタチが悪いのだ。
「お前さぁ……いくらなんでもそれはねぇよ。王のこと軽く扱い過ぎだぞ」
「別にそういうんじゃねぇよ。俺も居候してたし、場所的に最適だと思っただけだ」
「相変わらず単純馬鹿だねー。お前は超絶特例だったからで、王の私室なんてのは普通、入ることすら許されない場所なんだよ。よしんば借りられたとしても、俺の精神が擦り切れるっつーの」
「そういうもんか? あんなに広いのに勿体ねぇな」
「はーあ、しゃあない。じゃ、陀津羅に頼むかな。あいつならお前と違って優しいし、部屋も綺麗そう──」
「駄目だ」
「え、なに?」
「あいつの部屋は、絶対に、駄目だ」
夕立にしては珍しく、ひと言ずつはっきり区切って言った。陀津羅の汚部屋を知る夕立としては当然の反応なのだが、事情を知らない真砂には別の理由に見えたらしい。意地悪く口角を上げ、ずいと顔を寄せて囁いた。
「なに? もしかしてそれ、嫉妬?」
「は? 違うわ。誰に対する嫉妬だよ」
「だったらなんでそんなに嫌がるんだよ」
「別に嫌がってるわけじゃねぇ」
「でもさっき、かなり食い気味に駄目って言ったじゃん。あの反応は普通じゃないよな? 嫉妬じゃないってんなら、一体なんなワケ?」
「……」
「ふうん、だんまり作戦か。別に良いぜ、今夜にでも陀津羅んとこ押しかけるから。後はあいつ次第ってことで」
夕立は皺を刻んだ眉間を押さえてしばし考えた結果、相棒の名誉を守ることを選んだ。
「……分かったよ。俺の部屋で良い」
「まじで!? やったぁ!」
「ただし布団は持ってこいよ。てめーは床で寝ろ」
「それは無理。さっきも言ったけど俺、ホコリアレルギーだから。床なんかで寝たらくしゃみ止まんなくなるもん。ベッド使わせてくれないなら陀津羅んとこ行く」
「くそ……。まじで最悪だな、お前」
「よっしゃあ! しかしさぁ、お前がそこまでするってなんなの? まじで嫉妬?」
「違うっつってんだろ。それ以上聞いたらこの話は無しだ。もう知らん」
「分かりました、二度と聞きません。じゃあ今夜からルームシェアよろしくなー、夕立! うはぁ、楽しみぃ!」
こうして、かなり強引に夕立と真砂の共同生活が始まった。
◇
1日目。
「おかえりー、ってもう夜中じゃん! お前、仕事し過ぎじゃない?」
「うるせぇな、これが普通なんだよ。お互い寝るしか用無いって言ったの、お前だろ」
「そうだけどさぁ……。さすがにこんな時間まで帰って来ないとは思わなかったぜ。飯と風呂は?」
「飯は済ませた。風呂は起きてから入る。寝るからもっと端いけよ」
「お、おう……。じゃあ、おやすみ……」
2日目。
「おかえりー。今日も遅かったなぁ」
「んー。寝る」
「おう……おやすみ……」
3日目。
「おかえ……」
「寝る」
4日目。
「おか……」
「寝る」
6日目。
「あ゙あ゙あ゙ぁ゙ぁ゙ー! もぉ無理! 明日休みだよな!? ちょっとそこ座れ、夕立!」
ついに真砂が発狂した。夕立は嘆息しつつ床に胡座をかき、袂から煙管を取り出して火をつける。
「夜中なんだから喚くなよ。近所迷惑だろ」
「これが喚かずにいられるか! 何なんだよ、この生活はッ! 帰りは遅いし、すぐ寝るし、起きたら速攻で出てくし! なんなら連絡も無しに帰って来ねぇ日まであるし! 会話なんてほとんどゼロじゃん! 倦怠期の夫婦より酷いぞ!」
「だったらなんだ。約束通り部屋は貸してやってんだ、キレられる筋合いねぇだろ」
「そっ……それはそうだけど……。あー、もう! なんで分かんねぇかな!? 俺はもっとこう、なんつーか、束の間の楽しいルームシェアライフを期待してたんだよ!」
「ほーお、そりゃアテが外れて残念だったな。俺に楽しさなんて求めたお前が悪い」
「ぐうっ……」
顔色ひとつ変えず、飄々と紫煙を吐く夕立に、真砂はぐっと奥歯を噛み締めた後、大きく溜め息をついてがっくりと肩を落とした。
馬の耳に念仏、犬に論語、兎に祭文の有様に、いよいよ無力感に苛まれる。特別なにかを期待していたわけではなかったが、ここまですれ違い生活になるとは思ってもみなかったのだ。
しかし、夕立を責めるのもお門違いである。
「はぁ……もーいい。そうだよな、俺が間違ってた……。喚いて悪かったよ、ごめん……」
真砂は脱力するままに寝具へ横になり、夕立へ背を向けてふて寝の体勢を取った。
しんと静まり返った部屋には夕立が煙管をふかす呼気だけが響いていたが、そのうち何やらごそごそと動く気配がし始めた。
真砂が肩越しに背後を見ると、夕立がテレビに何かの機械と端子を繋いでいる。
「……何やってんの?」
「ブルーレイプレーヤー繋いでる。羽衣石から映画と一緒に借りた。俺んとこ、普通のプレーヤーしかねぇから」
「映画? お前、そんなの見るタイプだっけ?」
「休みの日は大体、映画見るか本読んでるぞ。お互い休みだし、お前に予定無いなら一緒に見ようかと思って。平日、あんまゆっくり出来ねぇだろ」
こちらをちらりとも見ずに淡々とそんなことを言う夕立に、真砂の虚無感は一瞬で吹き飛び、歓喜があっさり頂点を振り切った。跳ね起きて寝具から飛び降りると、一目散に夕立へ駆け寄って、背後から思い切り抱き締める。
「お前ってやつは……! ほんっとに可愛いなぁ、もぉ! そんなん反則だろ!」
「うお、飛びつくんじゃねぇよ、危ねぇな。壊したら弁償だぞ」
「するするぅ! 弁償でも何でもするから抱っこさせてー!」
「やめろ、気持ち悪ぃ。ったく、怒ったり喜んだり、忙しねぇ奴だな。遊んでねぇでお前も手伝えよ。配線めんどくせぇんだぞ」
「了解! で、どんな作品借りてきたの?」
「人が拷問されたり殺されたりするやつ」
「えぇ……。毎日、死人ばっかり見てるくせに、よりによって何でそんなの借りたんだよ……」
「俺が見てんのは死後だからな。死ぬまでの背景や過程が気になる」
「つってもフィクションだろ? 死ぬ過程なんて、地獄行ったら見れんじゃん、ノンフィクションでさぁ」
「新しい呵責の勉強も兼ねてんだよ。文句言うなら見るな」
「分かった、分かった。ったく、変なところで真面目なんだよなぁ、お前は」
「てめぇはもっと真面目に生きろ」
なんだかんだで設置を終え、仲良く映画鑑賞を始める2人なのだった。
◇
1ヶ月後。無事に官舎の改修が終わり、奇妙な共同生活も終了した。いつものように閻魔殿へ遊びに来ていた真砂に、陀津羅が声をかける。
「お疲れ様です。改修工事、無事に終わって良かったですね」
「まぁね。つってもうちの仕事だし、ほとんど俺が監督したから間違いないんだけどさ」
「それにしても、本当に彼とひと月も共同生活を送るとは驚きました。よく間違いが起きなかったものです」
「いやぁ、ギリギリだったわ……。あいつ、たまに寝惚けて抱き着いてくんのよ。何回、襲いかけたか覚えてないもん」
「半月も持たずに叩き出されると思っていましたが、少しだけ貴方を見直しました」
「そりゃどーも。ま、これも良い経験になったってことにしとくよ」
そこへ夕立が戻ってくると、真砂を見て思い切り不愉快そうに顔をしかめた。
「なんだ、てめぇ。やっと出て行ったと思ったら、まだうろちょろしてやがんのか」
「ちょ、なにその言い方! 一緒に暮らして仲良くなったオチのはずなのに、前より当たりキツいってどういうこと!?」
「そんなわけねぇだろ、逆にうんざりなんだよ。しばらく顔見せんな、くそじじい」
「ええー!? そんなぁー!」
真砂の淡い期待は無惨に打ち砕かれ、至って元通りの日常が始まったのであった。
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