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2章
18【海上の霹靂】
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しかしその頃、本部には異様な緊張感が走り、騒然としていた。更科は目を見開き、モニターに映る男を凝視している。
「……王睿、だと?」
「そんな、まさか……」
無線を聞いていた阿久里たちからも、小声で通信が入る。
【おいおい、冗談だろ。同姓同名の別人ってことはないのか? そう珍しい名前でもないし】
【ないとは言いきれないけど……この状況じゃ、本人と考えて動いたほうが賢明だろうね。しかし拙いな。まさかアレと繋がってたなんて……この会社、相当ヤバいよ】
【くそッ! おい椎奈! 璃津をすぐに遠ざけろ!】
【朝夷さん、落ち着いて下さい。下手に騒いで怪しまれては、なおさら危険です】
阿久里と郡司は抑えた声で焦りを吐き、今にも飛び出して行きそうな朝夷を神前が宥める。更科達の慌てふためく姿に、話が見えない生駒は首をかしげた。
「いったい何者なんですか?」
「おそらく、上海最大のマフィア『璃弊』の首領だ」
「マフィアのボス……!?」
「おおやけの場にほとんど姿を現さないため、当局すらその実態を把握していない。名前と大まかな特徴のみの判断になるが、まず間違いないだろう。こんな大物が裏に付いていたなんて、内調は気付かなかったのか……?」
不審感をいだく駮馬の説明を受け、生駒からも血の気が引く。
【よろしければ、お名前をお伺いしても?】
王が放ったその言葉を聞いて、更科が叫んだのと丹生が名乗ったのは、ほぼ同時だった。
【よせ!】
「璃津です」
運悪く、丹生には更科が何を叫んだのか聞き取れなかった。当然、聞き返すことなどできずに首をかしげる丹生を、王が覗き込む。
「どうかなさいましたか?」
「あ、いいえ。日本語がとてもお上手なんですね。私、母国語以外はほとんど分からないので、尊敬します」
「有難うございます。仕事柄、よくこちらの方とお話しをさせて頂くので、少しずつ覚えました。リツさんですか。美しい方は、お名前まで耳に心地よい響きだ」
「あら、お上手なのは日本語だけではありませんね」
「事実を言ったまでですよ。因みに、漢字はどのような?」
「瑠璃の璃に、津波の津です」
「璃津……七宝が潤う、か。本当に素晴らしい名だ。親御さんの愛情がよく伝わります」
(バイト時代の源氏名だけどな。漢字当てたのは更科さんだけど、本当にそんな意味があるのか?)
怪訝に思いながら小首をかしげる。丹生の様子に気付いた王は、微笑みながら丁寧に説明してくれた。
「まず、璃には七つの珍しい宝という意味があります。そして津には溢れる、潤うという意味があるのです。これを合わせると、才知に溢れ、天運に恵まれる、と解釈できるんですよ」
「さすが、本場の方はお詳しいですね。貴方のお名前には、どのような意味がおありなんですか?」
「睿は聡い、明らかという意味です。先を見通し、賢くあれ、と言ったところでしょうか」
「名は体を表すとはこのことですね。私は名前負けしているようなので、もっと頑張らなければいけませんけれど」
「そんなことはありませんよ、まさしく貴女に相応しい。実は私も、璃という字には少し縁がありましてね」
「そうなんですか。ご親戚か何かに?」
「ええ、家族のようなものです。ですから、勝手に親近感を覚えてしまいました。不躾で申し訳ない」
「いいえ、光栄ですよ」
と、2人は和やかに笑い合っているが、事情を理解している者にとっては背筋が凍る会話である。王の言う「家族のようなもの」とはすなわち『璃弊』のことだからだ。これはG社がマフィアと癒着している決定的な証拠であると同時に、やはり王睿本人であると裏付ける発言だった。
今まで消えたエージェントはこいつの仕業だったのか、と更科はほぞを噛む思いで煙草を握りつぶした。
更に悪いことに、丹生は任務用の捨名ではなく、公安庁に登録されている名を名乗ったうえ、丁寧に漢字まで教えてしまった。
特別調査官はそもそも偽造の戸籍を使用しているが、任務先によって様々な名を使い捨て、身元の隠蔽を徹底している。調査官の情報は非公開とされているものの、国家公務員である以上、そこまでせねば素性を特定されかねないからだ。
この任務にも当然、捨名が割り振られていたが、ナンパ師の件に気を取られていた丹生は、そのことをすっかり失念していたのである。
「璃津への通信を遮断。こちらの声を絶対に聞かせるな。ヤツらの会話は全て録音しろ」
「了解」
更科は素早く辻へ指示を飛ばしてひとつ紫煙を吐くと、丹生以外の全員へ対策を告げた。
「璃津は王の正体を知らない。下手に知らせて動揺させるほうが危険だ。恐らく、王も璃津の目的にはまだ気付いていない。作戦はこのまま続行。ただし璃津は動かすな。ヤツと会話を続けさせ、引き付けておく。神前と羽咲のどちらかが任務達成した時点で全員離脱。王や会社側に異変があれば、作戦は即中止だ」
【了解】
「棗と小鳥遊は、王の動向を最優先で監視。不審な動きがあれば即時報告、璃津のフォローに回れ。他のやつらは予定通りだ」
【了解】
【ちょっと待て! 璃津をそのままにするのか!? 危険過ぎる! すぐ離脱させろ!】
「黙れ朝夷。騒ぐと余計に危なくなるのは、馬鹿でも分かるよな? 相手はお前らより上手の嘘つきだ。少しでも疑われたら終わりだぞ。守りたいなら、一刻も早く任務を終わらせろ」
【……くそッ!】
「璃津の通信を戻せ。お前ら、余計なことを口走るなよ」
通信を戻したところで、更科は丹生用の口上を述べた。
「璃津、そいつはG社に関わる重要な人物だ。非常に猜疑心が強く、不信感をいだかせると作戦失敗の可能性が高い。お前のターゲットは王に変更する。任務達成まで、できる限り引き付けておけ。無理はしなくていい。分かったら3回まばたきしろ」
監視カメラで丹生のまばたきを確認すると、更科は通信を切って大きく息を吐いた。
「……ったく、どうしてこう厄介なことになるんだ……。内調のタヌキどもめ、覚えてろよ……」
更科は疲れきった声音で毒づくと新しい煙草を咥え、ソファに背を預けながら火をつけた。
一方、丹生は肝を冷やす面々をよそに、王との談笑を楽しんでいた。
(何だかさっきまで騒がしかったけど、なるほど、この人ってそんな大物だったのか。どうりで雰囲気あると思ったわ。それにしても、ウィットに富んだ落ち着きある色男だな。これと話してるだけで良いなんて超ラクじゃん)
と、呑気に納得している始末である。
「璃津さんは、G社の製品にご興味が?」
「いえ、その……実は、船のことはよく知らなくて……。白状してしまうと、この豪華なパーティに来てみたかっただけなんです。浅はかですよね、お恥ずかしい……」
「そうでしたか。とても純粋で素直な方ですね。何も恥ずかしがる必要はありません。正直なのは良いことですよ」
「そう言って頂けると安心します。こんな不純な動機で来ているだなんて、呆れられてしまうかと思いました」
「そんなことはありません。私は貧民街で育ちましたので、自分がこんな所に出入りする日が来るとは夢にも思っていませんでした。お気持ちはよく分かります」
「ご苦労なさったんですね」
「璃津さんは良いお家柄なのでしょう。滲み出るような品がある。私などと話していて退屈ではないかと、不安になりますよ」
「いいえ、とんでもない。私も裕福とはほど遠いです。今回も、たまたま上司から招待状を譲ってもらっただけで……。このような方々と同席させて頂く機会なんて、ほとんどないんです。だからこそ、華やかな場に憧れてしまうんですよね」
「……なるほど。合いそうですかね、私たち」
「ええ、きっと」
蕾が一気に満開になるような笑みを向けられ、みるみる王と丹生の距離が縮まる様子に、本部の面々は感嘆の声を漏らした。
「さすが丹生さん。初対面で身の上話までするなんて、嘘か罠じゃないかぎり、相当、心を開いている証拠ですよね」
「王睿が孤児から成り上がったって話、有名ですもんねぇ。都市伝説だと思ってましたけど。それにしても、前情報も無しであんな返し、普通はできないっすよ」
「丹生君の話術は、局内でもトップクラスだ。嘘と真実を巧みに混ぜ込み、矛盾や違和感を極限まで無くす。あれを見破るのは、いくら王でも難しいだろう。研修官はよく見て聞いて、勉強するといい」
目を輝かせて感心している相模と土岐に、椎奈が答える。
「この音声や映像、後で見返すことは可能ですか?」
「持ち出しは禁止だが、申請すれば資料として見られるはずだ。必要な時には、私か阿久里班長に声をかけてくれ」
「はい!」
生真面目な生駒と椎奈のやり取りの横で、更科は紫煙を吐きながら片方の口角を上げた。
「何枚か焼き増しして、各国に恩着せだな。なんせ、今まで実在するかも怪しかった首領の顔と肉声だ。しばらく、ウチにデカいツラはできなくなるだろ。ざまぁみろってヤツだな」
「さすが部長、抜け目が無いですねぇ」
「当然。大事な部下が拾った情報だぞ。タダでやってたまるかよ」
(大事……?)
(……大事とは)
(部下思いなんだな、部長。さすがだ)
「…………」
辻に答えた「大事な部下」という更科の言葉に、疑問符を浮かべる相模と土岐、納得する生駒。なんとも言えない顔の椎奈と辻、駮馬である。と、そこへ小馬鹿にしたような声が通信機から響いた。
【よく言うわー。大事なのは愛弟子りっちゃんだけなくせにー】
「羽咲、悔しかったらお前もどこぞの大物に見初められるくらいの働きをしろ。いい機会だ、来週から石油王が湧いてる国に飛ばしてやるよ」
【石油王を油田みたいに……。ていうかなに目的の任務ですか、それ。俺の仕事は玉の輿狙うことでしたっけ?】
【うるさいぞ、羽咲。ただでさえ事態は逼迫してるんだ、任務に集中しろ】
またもや更科の神経を逆撫でする羽咲に、神前は頭を痛めながら嘆息するのだった。
「……王睿、だと?」
「そんな、まさか……」
無線を聞いていた阿久里たちからも、小声で通信が入る。
【おいおい、冗談だろ。同姓同名の別人ってことはないのか? そう珍しい名前でもないし】
【ないとは言いきれないけど……この状況じゃ、本人と考えて動いたほうが賢明だろうね。しかし拙いな。まさかアレと繋がってたなんて……この会社、相当ヤバいよ】
【くそッ! おい椎奈! 璃津をすぐに遠ざけろ!】
【朝夷さん、落ち着いて下さい。下手に騒いで怪しまれては、なおさら危険です】
阿久里と郡司は抑えた声で焦りを吐き、今にも飛び出して行きそうな朝夷を神前が宥める。更科達の慌てふためく姿に、話が見えない生駒は首をかしげた。
「いったい何者なんですか?」
「おそらく、上海最大のマフィア『璃弊』の首領だ」
「マフィアのボス……!?」
「おおやけの場にほとんど姿を現さないため、当局すらその実態を把握していない。名前と大まかな特徴のみの判断になるが、まず間違いないだろう。こんな大物が裏に付いていたなんて、内調は気付かなかったのか……?」
不審感をいだく駮馬の説明を受け、生駒からも血の気が引く。
【よろしければ、お名前をお伺いしても?】
王が放ったその言葉を聞いて、更科が叫んだのと丹生が名乗ったのは、ほぼ同時だった。
【よせ!】
「璃津です」
運悪く、丹生には更科が何を叫んだのか聞き取れなかった。当然、聞き返すことなどできずに首をかしげる丹生を、王が覗き込む。
「どうかなさいましたか?」
「あ、いいえ。日本語がとてもお上手なんですね。私、母国語以外はほとんど分からないので、尊敬します」
「有難うございます。仕事柄、よくこちらの方とお話しをさせて頂くので、少しずつ覚えました。リツさんですか。美しい方は、お名前まで耳に心地よい響きだ」
「あら、お上手なのは日本語だけではありませんね」
「事実を言ったまでですよ。因みに、漢字はどのような?」
「瑠璃の璃に、津波の津です」
「璃津……七宝が潤う、か。本当に素晴らしい名だ。親御さんの愛情がよく伝わります」
(バイト時代の源氏名だけどな。漢字当てたのは更科さんだけど、本当にそんな意味があるのか?)
怪訝に思いながら小首をかしげる。丹生の様子に気付いた王は、微笑みながら丁寧に説明してくれた。
「まず、璃には七つの珍しい宝という意味があります。そして津には溢れる、潤うという意味があるのです。これを合わせると、才知に溢れ、天運に恵まれる、と解釈できるんですよ」
「さすが、本場の方はお詳しいですね。貴方のお名前には、どのような意味がおありなんですか?」
「睿は聡い、明らかという意味です。先を見通し、賢くあれ、と言ったところでしょうか」
「名は体を表すとはこのことですね。私は名前負けしているようなので、もっと頑張らなければいけませんけれど」
「そんなことはありませんよ、まさしく貴女に相応しい。実は私も、璃という字には少し縁がありましてね」
「そうなんですか。ご親戚か何かに?」
「ええ、家族のようなものです。ですから、勝手に親近感を覚えてしまいました。不躾で申し訳ない」
「いいえ、光栄ですよ」
と、2人は和やかに笑い合っているが、事情を理解している者にとっては背筋が凍る会話である。王の言う「家族のようなもの」とはすなわち『璃弊』のことだからだ。これはG社がマフィアと癒着している決定的な証拠であると同時に、やはり王睿本人であると裏付ける発言だった。
今まで消えたエージェントはこいつの仕業だったのか、と更科はほぞを噛む思いで煙草を握りつぶした。
更に悪いことに、丹生は任務用の捨名ではなく、公安庁に登録されている名を名乗ったうえ、丁寧に漢字まで教えてしまった。
特別調査官はそもそも偽造の戸籍を使用しているが、任務先によって様々な名を使い捨て、身元の隠蔽を徹底している。調査官の情報は非公開とされているものの、国家公務員である以上、そこまでせねば素性を特定されかねないからだ。
この任務にも当然、捨名が割り振られていたが、ナンパ師の件に気を取られていた丹生は、そのことをすっかり失念していたのである。
「璃津への通信を遮断。こちらの声を絶対に聞かせるな。ヤツらの会話は全て録音しろ」
「了解」
更科は素早く辻へ指示を飛ばしてひとつ紫煙を吐くと、丹生以外の全員へ対策を告げた。
「璃津は王の正体を知らない。下手に知らせて動揺させるほうが危険だ。恐らく、王も璃津の目的にはまだ気付いていない。作戦はこのまま続行。ただし璃津は動かすな。ヤツと会話を続けさせ、引き付けておく。神前と羽咲のどちらかが任務達成した時点で全員離脱。王や会社側に異変があれば、作戦は即中止だ」
【了解】
「棗と小鳥遊は、王の動向を最優先で監視。不審な動きがあれば即時報告、璃津のフォローに回れ。他のやつらは予定通りだ」
【了解】
【ちょっと待て! 璃津をそのままにするのか!? 危険過ぎる! すぐ離脱させろ!】
「黙れ朝夷。騒ぐと余計に危なくなるのは、馬鹿でも分かるよな? 相手はお前らより上手の嘘つきだ。少しでも疑われたら終わりだぞ。守りたいなら、一刻も早く任務を終わらせろ」
【……くそッ!】
「璃津の通信を戻せ。お前ら、余計なことを口走るなよ」
通信を戻したところで、更科は丹生用の口上を述べた。
「璃津、そいつはG社に関わる重要な人物だ。非常に猜疑心が強く、不信感をいだかせると作戦失敗の可能性が高い。お前のターゲットは王に変更する。任務達成まで、できる限り引き付けておけ。無理はしなくていい。分かったら3回まばたきしろ」
監視カメラで丹生のまばたきを確認すると、更科は通信を切って大きく息を吐いた。
「……ったく、どうしてこう厄介なことになるんだ……。内調のタヌキどもめ、覚えてろよ……」
更科は疲れきった声音で毒づくと新しい煙草を咥え、ソファに背を預けながら火をつけた。
一方、丹生は肝を冷やす面々をよそに、王との談笑を楽しんでいた。
(何だかさっきまで騒がしかったけど、なるほど、この人ってそんな大物だったのか。どうりで雰囲気あると思ったわ。それにしても、ウィットに富んだ落ち着きある色男だな。これと話してるだけで良いなんて超ラクじゃん)
と、呑気に納得している始末である。
「璃津さんは、G社の製品にご興味が?」
「いえ、その……実は、船のことはよく知らなくて……。白状してしまうと、この豪華なパーティに来てみたかっただけなんです。浅はかですよね、お恥ずかしい……」
「そうでしたか。とても純粋で素直な方ですね。何も恥ずかしがる必要はありません。正直なのは良いことですよ」
「そう言って頂けると安心します。こんな不純な動機で来ているだなんて、呆れられてしまうかと思いました」
「そんなことはありません。私は貧民街で育ちましたので、自分がこんな所に出入りする日が来るとは夢にも思っていませんでした。お気持ちはよく分かります」
「ご苦労なさったんですね」
「璃津さんは良いお家柄なのでしょう。滲み出るような品がある。私などと話していて退屈ではないかと、不安になりますよ」
「いいえ、とんでもない。私も裕福とはほど遠いです。今回も、たまたま上司から招待状を譲ってもらっただけで……。このような方々と同席させて頂く機会なんて、ほとんどないんです。だからこそ、華やかな場に憧れてしまうんですよね」
「……なるほど。合いそうですかね、私たち」
「ええ、きっと」
蕾が一気に満開になるような笑みを向けられ、みるみる王と丹生の距離が縮まる様子に、本部の面々は感嘆の声を漏らした。
「さすが丹生さん。初対面で身の上話までするなんて、嘘か罠じゃないかぎり、相当、心を開いている証拠ですよね」
「王睿が孤児から成り上がったって話、有名ですもんねぇ。都市伝説だと思ってましたけど。それにしても、前情報も無しであんな返し、普通はできないっすよ」
「丹生君の話術は、局内でもトップクラスだ。嘘と真実を巧みに混ぜ込み、矛盾や違和感を極限まで無くす。あれを見破るのは、いくら王でも難しいだろう。研修官はよく見て聞いて、勉強するといい」
目を輝かせて感心している相模と土岐に、椎奈が答える。
「この音声や映像、後で見返すことは可能ですか?」
「持ち出しは禁止だが、申請すれば資料として見られるはずだ。必要な時には、私か阿久里班長に声をかけてくれ」
「はい!」
生真面目な生駒と椎奈のやり取りの横で、更科は紫煙を吐きながら片方の口角を上げた。
「何枚か焼き増しして、各国に恩着せだな。なんせ、今まで実在するかも怪しかった首領の顔と肉声だ。しばらく、ウチにデカいツラはできなくなるだろ。ざまぁみろってヤツだな」
「さすが部長、抜け目が無いですねぇ」
「当然。大事な部下が拾った情報だぞ。タダでやってたまるかよ」
(大事……?)
(……大事とは)
(部下思いなんだな、部長。さすがだ)
「…………」
辻に答えた「大事な部下」という更科の言葉に、疑問符を浮かべる相模と土岐、納得する生駒。なんとも言えない顔の椎奈と辻、駮馬である。と、そこへ小馬鹿にしたような声が通信機から響いた。
【よく言うわー。大事なのは愛弟子りっちゃんだけなくせにー】
「羽咲、悔しかったらお前もどこぞの大物に見初められるくらいの働きをしろ。いい機会だ、来週から石油王が湧いてる国に飛ばしてやるよ」
【石油王を油田みたいに……。ていうかなに目的の任務ですか、それ。俺の仕事は玉の輿狙うことでしたっけ?】
【うるさいぞ、羽咲。ただでさえ事態は逼迫してるんだ、任務に集中しろ】
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