6 / 84
1話・追い詰めるのが好き
4
しおりを挟む廊下に散らばったプリントを拾い集めながら、胡桃沢さんは口も動かす。
「真冬くん! 悪いのはこの馬鹿、高遠原美鶴よ! 真冬くんは悪くないって言うか、むしろコイツに拾ってもらうべきだわ!」
「「な……っ!」」
胡桃沢さんの言葉に、取り巻きたちは視線をキョロキョロと泳がせた。
高遠原相手に、こんな口を利く人……胡桃沢さん以外に、いないからだ。
それもそのはずで。
「詩織……親戚だからって、あんまり調子に乗んじゃねェぞ」
「はぁ? こんな子供じみたことしてる人には【事実】って日本語が分からないのかしら? ……あぁ、それとも? 屈んでプリントを拾うなんて芸当、お猿さん以下の知能じゃ難しいのかしらね?」
バチバチッと、二人の間に火花が見えた。……気がする。
……そう。胡桃沢さんと高遠原は、親戚なのだ。どういう血の繋がりなのかまでは、知らないけど。
って、今はそんな話をしている場合じゃない。
二人がこれ以上ヒートアップしないよう、俺は急いでプリントを拾い、慌てて立ち上がる。
「ありがとう、胡桃沢さん。助か――」
お礼を言う俺の声を遮り、胡桃沢さんが。
「――真冬くんも真冬くんよ! 小さい頃はもっとコイツに文句とか言ってたのに、今はなによ? 何で一言も会話しようとしないのっ?」
今度は俺に噛みついてきた。……正直、驚く。
だけど……胡桃沢さんの言っていることは、俺にとって正論だ。
小さい頃の俺なら、転ばされたら高遠原の足を殴る。そして、なんとしてでも同じ様に転ばせただろう。
(『何で一言も会話しようとしないの』か……)
胡桃沢さんが、プリントを持って立ち上がる。
その様子を見て、俺は視界に絶対、高遠原を入れないようにして言った。
「――コイツと、関わりたくないからだよ。……プリント、拾ってくれてありがとう」
俺の台詞を聞いて、高遠原がどんな顔をしていたかなんて、知らない。そもそも、興味も無い。
そう断言できるくらい、俺はこの男が嫌いなんだから。
「真冬くん……」
胡桃沢さんが、悲しそうに眉尻を下げた。
なにも知らないから、胡桃沢さんは『高遠原にプリントを拾わせろ』って、言える。
でも……胡桃沢さんだってきっと、俺と同じ立場になったら分かるはずだ。
――俺がどれだけ、高遠原に苦しめられたかを。
「……オイ、諸星」
高遠原に、名前を呼ばれた。
だけど、俺は無視して歩き出す。
「胡桃沢さん、プリントちょうだい? 自分で運ぶから」
「……ううん、持たせて」
どうやら、胡桃沢さんは落ち込んでしまったらしい。
何だかんだで、胡桃沢さんは親戚関係の高遠原に甘いんだろう。完全に【高遠原美鶴を悪】と決めつけられないんだ。
高遠原と取り巻きたちを残して、俺と胡桃沢さんはその場から立ち去った。
10
お気に入りに追加
234
あなたにおすすめの小説
俺にはラブラブな超絶イケメンのスパダリ彼氏がいるので、王道学園とやらに無理やり巻き込まないでくださいっ!!
しおりんごん
BL
俺の名前は 笹島 小太郎
高校2年生のちょっと激しめの甘党
顔は可もなく不可もなく、、、と思いたい
身長は170、、、行ってる、、、し
ウルセェ!本人が言ってるんだからほんとなんだよ!
そんな比較的どこにでもいそうな人柄の俺だが少し周りと違うことがあって、、、
それは、、、
俺には超絶ラブラブなイケメン彼氏がいるのだ!!!
容姿端麗、文武両道
金髪碧眼(ロシアの血が多く入ってるかららしい)
一つ下の学年で、通ってる高校は違うけど、一週間に一度は放課後デートを欠かさないそんなスパダリ完璧彼氏!
名前を堂坂レオンくん!
俺はレオンが大好きだし、レオンも俺が大好きで
(自己肯定感が高すぎるって?
実は付き合いたての時に、なんで俺なんか、、、って1人で考えて喧嘩して
結局レオンからわからせという名のおしお、(re
、、、ま、まぁレオンからわかりやすすぎる愛情を一思いに受けてたらそりゃ自身も出るわなっていうこと!)
ちょうどこの春レオンが高校に上がって、それでも変わりないラブラブな生活を送っていたんだけど
なんとある日空から人が降って来て!
※ファンタジーでもなんでもなく、物理的に降って来たんだ
信じられるか?いや、信じろ
腐ってる姉さんたちが言うには、そいつはみんな大好き王道転校生!
、、、ってなんだ?
兎にも角にも、そいつが現れてから俺の高校がおかしくなってる?
いやなんだよ平凡巻き込まれ役って!
あーもう!そんな睨むな!牽制するな!
俺には超絶ラブラブな彼氏がいるからそっちのいざこざに巻き込まないでくださいっ!!!
※主人公は固定カプ、、、というか、初っ端から2人でイチャイチャしてるし、ずっと変わりません
※同姓同士の婚姻が認められている世界線での話です
※王道学園とはなんぞや?という人のために一応説明を載せていますが、私には文才が圧倒的に足りないのでわからないままでしたら、他の方の作品を参照していただきたいです🙇♀️
※シリアスは皆無です
終始ドタバタイチャイチャラブコメディでおとどけします
久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…
しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。
高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。
数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。
そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…
双子攻略が難解すぎてもうやりたくない
はー
BL
※監禁、調教、ストーカーなどの表現があります。
22歳で死んでしまった俺はどうやら乙女ゲームの世界にストーカーとして転生したらしい。
脱ストーカーして少し遠くから傍観していたはずなのにこの双子は何で絡んでくるんだ!!
ストーカーされてた双子×ストーカー辞めたストーカー(転生者)の話
⭐︎登場人物⭐︎
元ストーカーくん(転生者)佐藤翔
主人公 一宮桜
攻略対象1 東雲春馬
攻略対象2 早乙女夏樹
攻略対象3 如月雪成(双子兄)
攻略対象4 如月雪 (双子弟)
元ストーカーくんの兄 佐藤明
【R18】平凡な男子が女好きのモテ男に告白したら…
ぽぽ
BL
"気持ち悪いから近づかないでください"
好きな相手からそんなことを言われた
あんなに嫌われていたはずなのに…
平凡大学生の千秋先輩が非凡なイケメン大学生臣と恋する話
美形×平凡の2人の日常です。
※R18場面がある場合は※つけます
鬼上司と秘密の同居
なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳
幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ…
そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた…
いったい?…どうして?…こうなった?
「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」
スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか…
性描写には※を付けております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる