263 / 290
12章【そんなに愛を誓わないで】
22 *
しおりを挟む家に帰ると当然、カナタとツカサ以外は誰もいない。家主であるマスターもウメも、仕事中だからだ。
二人はそのままツカサの部屋へと向かい、ベッドの上で今、互いの体温を唇から感じ合っていた。
「カナちゃん、好きだよ。昨日より、もっと。今朝よりももっと、キミが好き」
「ツカサ君……っ」
「これから、二人きりのときは俺に敬語を遣わないで喋ってね? それで周りに人がいるときは、今まで通りでいてほしいな。敬語を抜いた特別なカナちゃんは、俺だけのものにしたいから」
「うん、分かった。ツカサ君がそう言うなら、そうする。……オレも、そうしたいから」
服を脱がされながら、カナタは熱に浮かされたような瞳でツカサを見上げる。
昨晩は後ろから抱かれたが、今は向かい合っているのだ。ツカサのことが好きで堪らないカナタは、その顔を見つめていたかった。
すぐにツカサは手を動かし、カナタの後孔に触れる。
「んっ、ぅ、ぁあ……ッ」
「カナちゃんのナカ、時間が経つとキツイね。……痛くない?」
「だい、じょうぶ……っ。だから、焦らすのはやだ……っ」
「ヤッパリ、今日のカナちゃんは積極的だね。双方の親に挨拶したし、これで憂いなく結婚できるから、嬉しいのかな。……ちなみに、俺は凄く嬉しいよ」
嘘は、言っていないのだろう。ツカサは幸福そうに笑いながら、徐々に乱れていくカナタを眺めていた。
「俺たちが【恋人】でいられるのは、あと少しだね。もうすぐ、俺たちは結婚して【家族】になるんだ。……幸せだなぁ、本当に」
「あっ、んぅ……っ!」
「そう考えると、なんだかいつもと行為に対する気持ちが変わってくる気がするよ。不思議と今日は、いつもよりもっと特別な気持ち。カナちゃんも同じだと嬉しいな」
カナタの後孔を解しながら、ツカサは静かに言葉を紡ぐ。
「愛しているよ、カナちゃん。これから先もずっと、俺はカナちゃんだけを愛してる」
「ツカサ、くん……っ」
指を引き抜き、ツカサは隆起した自身の逸物をカナタの後孔に押し付ける。
「ドキドキする。……なんでだろうね、初めてってワケじゃないのに」
「オレも……オレも、いつもよりドキドキする……っ」
「そうなの? だったら、このドキドキもステキなもののように感じるよ。……もとから、不快ではなかったしね」
「あ、ぁ……あ、ん、ッ」
押し付けられていた逸物の先端が、ゆっくりとカナタの内側へと挿入されていく。
愛する人に愛され、心だけではなく体も満たされていく感覚。カナタは堪らず甘い声を漏らし、ツカサの背に手を回した。
「今、初めてシた時のことを思い出したよ。カナちゃん、あの時も可愛かったなぁ」
「初めての、時は……ツカサ君、怖かった……っ」
「前もそう言ってたね。でも、仕方ないよ。だって、カナちゃんのことが凄く特別だったから『早く俺だけの男の子にしたい』って、焦っちゃったんだもん」
ケロッとした様子で答えるツカサは、全くもって申し訳なさがなさそうだ。
「でも、結果的に俺は間違えていなかった。こうして今、俺の腕の中にカナちゃんがいる。それが、過去の俺を肯定する決定的な証拠だよ」
「そんなの、結果論だもん……。オレ、本当に怖かったんだよ……っ?」
「今も?」
至近距離に、ツカサの顔がある。
「今も、俺は怖い?」
暗い瞳には、カナタの顔が映し出されていた。
ツカサの瞳に映るカナタの表情は、とても……。
「……ずる、い。今のツカサ君、オレが『怖くない』って言うのを分かっているような顔だよ……っ」
とても、怯えているようには見えなかった。
0
お気に入りに追加
262
あなたにおすすめの小説
ヤンデレだらけの短編集
八
BL
ヤンデレだらけの1話(+おまけ)読切短編集です。
全8話。1日1話更新(20時)。
□ホオズキ:寡黙執着年上とノンケ平凡
□ゲッケイジュ:真面目サイコパスとただ可哀想な同級生
□アジサイ:不良の頭と臆病泣き虫
□ラベンダー:希死念慮不良とおバカ
□デルフィニウム:執着傲慢幼馴染と地味ぼっち
ムーンライトノベル様に別名義で投稿しています。
かなり昔に書いたもので、最近の作品と書き方やテーマが違うと思いますが、楽しんでいただければ嬉しいです。
旦那様と僕
三冬月マヨ
BL
旦那様と奉公人(の、つもり)の、のんびりとした話。
縁側で日向ぼっこしながらお茶を飲む感じで、のほほんとして頂けたら幸いです。
本編完結済。
『向日葵の庭で』は、残酷と云うか、覚悟が必要かな? と思いまして注意喚起の為『※』を付けています。
いっぱい命じて〜無自覚SubはヤンキーDomに甘えたい〜
きよひ
BL
無愛想な高一Domヤンキー×Subの自覚がない高三サッカー部員
Normalの諏訪大輝は近頃、謎の体調不良に悩まされていた。
そんな折に出会った金髪の一年生、甘井呂翔。
初めて会った瞬間から甘井呂に惹かれるものがあった諏訪は、Domである彼がPlayする様子を覗き見てしまう。
甘井呂に優しく支配されるSubに自分を重ねて胸を熱くしたことに戸惑う諏訪だが……。
第二性に振り回されながらも、互いだけを求め合うようになる青春の物語。
※現代ベースのDom/Subユニバースの世界観(独自解釈・オリジナル要素あり)
※不良の喧嘩描写、イジメ描写有り
初日は5話更新、翌日からは2話ずつ更新の予定です。
普通の男の子がヤンデレや変態に愛されるだけの短編集、はじめました。
山田ハメ太郎
BL
タイトル通りです。
お話ごとに章分けしており、ひとつの章が大体1万文字以下のショート詰め合わせです。
サクッと読めますので、お好きなお話からどうぞ。
花香る人
佐治尚実
BL
平凡な高校生のユイトは、なぜか美形ハイスペックの同学年のカイと親友であった。
いつも自分のことを気に掛けてくれるカイは、とても美しく優しい。
自分のような取り柄もない人間はカイに不釣り合いだ、とユイトは内心悩んでいた。
ある高校二年の冬、二人は図書館で過ごしていた。毎日カイが聞いてくる問いに、ユイトはその日初めて嘘を吐いた。
もしも親友が主人公に思いを寄せてたら
ユイト 平凡、大人しい
カイ 美形、変態、裏表激しい
今作は個人サイト、各投稿サイトにて掲載しています。
鬼上司と秘密の同居
なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳
幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ…
そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた…
いったい?…どうして?…こうなった?
「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」
スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか…
性描写には※を付けております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる