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12章【そんなに愛を誓わないで】
12 *
しおりを挟むカナタの服をゆっくりと脱がしながら、ツカサは微笑む。
「俺がカナちゃんを甘やかすから、カナちゃんは俺を甘やかして?」
以前までのツカサなら、カナタを甘やかすことしかしなかっただろう。
しかし今は、カナタに甘えるという選択肢を視野に入れた。視野にあるその道を選択することに、躊躇を見せなくなったのだ。
カナタは小さく笑って、ツカサを見上げる。
「素直に甘えてくれるツカサさんは、なんて言うか……可愛くて、好きです」
「やった。カナちゃんに『好き』って言ってもらえたっ」
「んっ」
お礼かのようにキスを贈った後、ツカサは慣れた手つきでカナタを脱がし始めた。
……が、ふと。ツカサは手の動きを止める。
「どうしよっか、カナちゃん? このままだと、ペンちゃんにカナちゃんのいやらしいところ……ぜぇ~んぶ見られちゃうね?」
ペンギンのぬいぐるみの顔が、カナタとツカサに向けられている。
ツカサの物言いが理由の大半を占めているが、カナタはペンギンのぬいぐるみから注がれている視線に気付き、顔をボボッと赤くした。
「あっ、えっと。……ペンちゃん、ひっくり返してください……っ」
「ん、分かったよ」
オーダー通り、ツカサはぬいぐるみに手を伸ばす。そのままツカサは、ペンギンのぬいぐるみの顔をベッドではなく、壁に向けた。
「相変わらず、恥ずかしがり屋さんだね?」
「ツカサさんが、変な言い方するから……っ」
「あははっ、ごめんねっ? なぜかカナちゃんには、ついつい意地悪を言っちゃうよ」
カナタを脱がした後、ツカサは自分の指をペロリと舐める。
「お詫びに、ここから意地悪はナシ。優しくしてあげる」
濡れた指が、カナタの後孔を這う。何度も味わったその感覚に、カナタの体と心はすぐに期待感を示し始める。
「可愛いなぁ、カナちゃん。お尻の穴、物欲しそうにキュウッてしてる」
「あ、う……っ」
「指を挿れると、嬉しそうに締め付けてくれるね。嬉しいなぁ……っ」
ぐりっ、と。ツカサの指はすぐさま、カナタの弱いポイントを突き始める。
指先ひとつで快感を刺激されて、カナタは吐息を漏らしてしまった。
「やっ、そこ……っ」
「うん、ココ。カナちゃんの好きなところだね」
「はぅ、ん……っ!」
二本目の指も難なく受け入れつつ、カナタは与えられる快楽に没頭する。
「カナちゃんの、勃っちゃったね? お尻でこんなに感じてくれて、俺は嬉しいよ」
「や、ぁ……っ。意地悪しないって、言ったのに……っ」
「今のは意地悪だったかな? そんなつもりじゃなかったけど、ごめんね?」
「あ、っ! あっ、謝りながら指っ、増やさないでください……っ!」
真っ赤になったカナタを見つめて、ツカサは満足そうに笑っていた。
「今日は後ろからシたいな。カナちゃんの背中、頼り甲斐があって好きなんだ。だから、今日は背中を眺めていたい。……いい?」
「『駄目?』じゃなくて、そう訊くんですね……っ」
「カナちゃんに『いいよ』って言われたいんだもんっ」
悪びれずに答えられると、カナタはなにも言えなくなる。
「……いい、ですよ」
「やった。だから好きだよ、カナちゃん」
「むぅ。絆されているような……」
それでも唇を尖らせて、カナタはまるで甘やかすように、ツカサの提案を快諾した。
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