上 下
70 / 290
5章【そんなに好きにさせないで】

5

しおりを挟む



 互いの口腔を、舌で確かめ合う。

 味を、感触を、熱を……。
 荒々しくもどこか優しい舌遣いに、カナタはただただ溺れていく。


「あ、っ。ツカサ、さん……っ」


 ツカサの唇が離れると、カナタはほんの少し寂し気な瞳を向けてしまう。

 するとツカサは突然、カナタから距離を取った。
 すぐに、カナタはツカサに手を伸ばす。


「ツカサさん、や……っ」
「ちょっと待っていてね」


 そう言うと、ツカサはベッドから降りた。
 そのまま、おもむろに……。


「よいしょっと」


 ツカサはクローゼットへ向かい、その中を物色し始めた。
 当然驚いたカナタは、慌てて上体を起こす。


「ツカ──」
「──待って」


 しかし、カナタに背を向けていたツカサがピシャリと言い切る。


「いい子だから、そこから動かないで待っていて」


 動揺を隠せないまま、カナタはベッドの上でツカサを待つ。

 ツカサはまるでどこになにが収納されているか知っているかのように、クローゼットの中を漁る。


「えっと、確かこの辺りに……あっ、あった!」


 ツカサが見ているのは、服がしまってある場所ではない。
 つまり、スカートを探しているわけではないのだ。

 そうと分かって安心したものの、油断はできない。


「ツカサさん? なにを探して……」
「コレだよ」


 ツカサの手には、細い布が掴まれている。
 それは、カナタが衝動買いをした物で……。


「──コレ、穿いて?」


 白と水色の、どこか清楚で清廉な印象を与えるニーハイソックスだ。

 ニーハイソックスを持ったまま、ツカサはカナタが待つベッドへ戻る。

 カナタは今、下半身には下着しか纏っていない。
 その下着は当然男物の下着で、つまるところニーハイソックスとのバランスはお世辞にもいいとは言えない状態だ。

 ニーハイソックスを持っていたと知られていたこともそうだが、想定外の要求にカナタは動揺を露わにする。


「どうして、それ……っ」
「ニーハイって、なんかエッチじゃない?」


 そう言いながら、ツカサはカナタの右足を持ち上げた。


「なんだか、ガラスの靴を履かせるみたいでドキドキするね」


 すぐにツカサは、カナタの脚にニーハイソックスを這わせていく。


「暴れないでね、カナちゃん。俺、カナちゃんには蹴られたくないから」
「ん、っ」


 ツカサの冷たい指が、脚を這う。

 スルスルとニーハイソックスを穿かされていく羞恥心よりも、ツカサの指先に対して、カナタは胸をザワめかせてしまう。


「次は、反対」


 そのまま、今度は左足を持ち上げられる。


「カナちゃんの脚、スベスベしてて気持ちいい。ずっと触っていたいな」


 この状況は、どう考えてもおかしい。

 しかし、ツカサに絆されてしまった今のカナタは、心のどこかで『スカートよりはマシかもしれない』と思ってしまった。




しおりを挟む
感想 7

あなたにおすすめの小説

執着攻めと平凡受けの短編集

松本いさ
BL
執着攻めが平凡受けに執着し溺愛する、似たり寄ったりな話ばかり。 疲れたときに、さくっと読める安心安全のハッピーエンド設計です。 基本的に一話完結で、しばらくは毎週金曜の夜または土曜の朝に更新を予定しています(全20作)

ヤンデレだらけの短編集

BL
ヤンデレだらけの1話(+おまけ)読切短編集です。 全8話。1日1話更新(20時)。 □ホオズキ:寡黙執着年上とノンケ平凡 □ゲッケイジュ:真面目サイコパスとただ可哀想な同級生 □アジサイ:不良の頭と臆病泣き虫 □ラベンダー:希死念慮不良とおバカ □デルフィニウム:執着傲慢幼馴染と地味ぼっち ムーンライトノベル様に別名義で投稿しています。 かなり昔に書いたもので、最近の作品と書き方やテーマが違うと思いますが、楽しんでいただければ嬉しいです。

どうやら俺は悪役令息らしい🤔

osero
BL
俺は第2王子のことが好きで、嫉妬から編入生をいじめている悪役令息らしい。 でもぶっちゃけ俺、第2王子のこと知らないんだよなー

おとなりさん

すずかけあおい
BL
お隣さん(攻め)にお世話?されている受けの話です。 一応溺愛攻めのつもりで書きました。 〔攻め〕謙志(けんし)26歳・会社員 〔受け〕若葉(わかば)21歳・大学3年

社畜だけど異世界では推し騎士の伴侶になってます⁈

めがねあざらし
BL
気がつくと、そこはゲーム『クレセント・ナイツ』の世界だった。 しかも俺は、推しキャラ・レイ=エヴァンスの“伴侶”になっていて……⁈ 記憶喪失の俺に課されたのは、彼と共に“世界を救う鍵”として戦う使命。 しかし、レイとの誓いに隠された真実や、迫りくる敵の陰謀が俺たちを追い詰める――。 異世界で見つけた愛〜推し騎士との奇跡の絆! 推しとの距離が近すぎる、命懸けの異世界ラブファンタジー、ここに開幕!

4人の兄に溺愛されてます

まつも☆きらら
BL
中学1年生の梨夢は5人兄弟の末っ子。4人の兄にとにかく溺愛されている。兄たちが大好きな梨夢だが、心配性な兄たちは時に過保護になりすぎて。

エリート上司に完全に落とされるまで

琴音
BL
大手食品会社営業の楠木 智也(26)はある日会社の上司一ノ瀬 和樹(34)に告白されて付き合うことになった。 彼は会社ではよくわかんない、掴みどころのない不思議な人だった。スペックは申し分なく有能。いつもニコニコしててチームの空気はいい。俺はそんな彼が分からなくて距離を置いていたんだ。まあ、俺は問題児と会社では思われてるから、変にみんなと仲良くなりたいとも思ってはいなかった。その事情は一ノ瀬は知っている。なのに告白してくるとはいい度胸だと思う。 そんな彼と俺は上手くやれるのか不安の中スタート。俺は彼との付き合いの中で苦悩し、愛されて溺れていったんだ。 社会人同士の年の差カップルのお話です。智也は優柔不断で行き当たりばったり。自分の心すらよくわかってない。そんな智也を和樹は溺愛する。自分の男の本能をくすぐる智也が愛しくて堪らなくて、自分を知って欲しいが先行し過ぎていた。結果智也が不安に思っていることを見落とし、智也去ってしまう結果に。この後和樹は智也を取り戻せるのか。

鬼上司と秘密の同居

なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳 幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ… そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた… いったい?…どうして?…こうなった? 「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」 スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか… 性描写には※を付けております。

処理中です...