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4章【未熟な悪魔の小さな初恋でした(カワイ視点)】

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 淡々と作業を進めるボクたちに対して、ヒトはあまり質問をしなかった。


「なるほど。醤油はタラッと、砂糖はパッパッか」


 ボクがしている作業内容をブツブツと呟いて、メモをし続けるだけ。大丈夫かな、ちゃんと分かり易い作業ができているかな。ボクは少し、不安。

 ゼロタローも、同じく不安だったのかも。ボクに作業の指示をしつつ、ヒトに声をかけた。


[わざわざカワイ君に実践させずとも、レシピなら私も出せますよ?]
「いや、文字と写真だけだと【アレ】ができた」
[そうでした……]


 ついにヒトは、自分で作った料理を『ジャガイモのスープ』って言わなくなっちゃったね。口を挟まずに、ボクは作業を続ける。

 黙って調理を続けるボクを見て、ヒトは相変わらず真剣な顔で呟いた。


「料理動画も頭に全然入らなくて参考にならなかったけど、カワイの実演なら覚えられそう。脳内録画余裕だし、なによりも関心の度合いが違う」


 ……え、っと。


「あーっ。カワイ、可愛いなぁ。ずっと見ていられる。数時間でもいけるし、むしろ足りない。あぁ~っ、可愛いなぁ~っ」


 ど、どうしよう。集中、できない。

 だって、大好きなヒトがボクを見てる。ジッと見つめて、嬉しそうに笑ってくれているんだよ? 嬉しくて、ドキドキして……。全然、作業に集中できない。

 変な顔、してないかな。手つきとか、おかしくないといいけど……。料理云々の前に、ボクは自分の装いや振る舞いが気になって仕方なくなってきた。

 揺れ惑うボクの気持ちを察したのか、読み取ったのか。スパッと、ゼロタローがヒトに口を挟んだ。


[怖いです、主様。邪魔をするのでしたら、この部屋から出て行ってください]
「家主は俺だし、そもそも今日の料理は俺への講座なのではっ?」


 そ、そうだよ。今日の料理は、ヒトに見せるための作業なんだ。見られてなんぼ、見られてなんぼだよ。二人のやり取りのおかげで、ボクはなんとか集中力を持続させる。


「レシピのメモも完璧だし、カワイの姿を脳内で記録するのも余裕だし……。これは、次こそちゃんとした料理を作れるかもしれないぞ~っ」


 良かった、ヒトの役に立っているみたい。安心しつつ、ボクは料理を最後まで完成させた。
 メモが終わったのか、ヒトはパタンとメモ帳を閉じる。そして、ニコッと笑顔を浮かべてボクを見た。


「よしっ、これで大丈夫そう! ありがとう、カワイ。それと、ゼロ太郎もありがとう」
「このくらい、全然」
[当然です]


 途中から危なかったけど、なんとか晩ご飯が完成。ヒトも順調に憶えられたみたいだし、良かった良かった。


「よーっし! 今度こそ完璧に作ってみせるぞーっ!」


 意気込むヒトを見て、ボクは髪をまとめていた髪ゴムを取る。
 失敗しても、ボクは人間と違って食べ物に頓着しないからなんだっていいのに。それはヒトだって、きっと分かってるはず。


「楽しみにしていてね、カワイ。次の休みにはおいしい料理を用意してみせるから!」


 でも、ヒトのそういうところが……。


「……うん、分かった。楽しみにしてるね、ヒト」


 考えて、ボクはそっと俯いた。




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