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【幼馴染みは恋愛がヘタ!】
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しおりを挟むこれで、相談は完了だろう。悩みは無事に、解決しただろうか。玲はデコピンに怯える姫毬を見た。
玲から向けられた視線に、姫毬はすぐさま気付く。
「えっと、ありがとう、れーくん。わたし、明日キャプテンさんの教室に行ってみるね。それで、ちゃんとお断りするよ」
「結局ソイツのところに行くのかよ。……ついて行かなくて平気か?」
「うん、平気っ。なにかあったら大声で『助けて!』って叫ぶから心配ないよっ!」
「その状況がそれはそれで心配なんだが」
なにがどう転べば、学校の中で『助けて』と叫ぶ状況になるのだろう。心配だ。……キャプテンが。
しかし、姫毬の表情はやけにスッキリとしている。完璧に悩みが解決したようだ。玲は一先ず、ホッと安堵する。
「それで、教室に行ってどう断るんだよ」
だからこれは、ただの雑談だ。玲はチョコをつまみながら、姫毬に訊ねる。
すると姫毬は、ニコリと笑みを浮かべた。それからポスッと、玲の肩にもたれかかる。
彼女からの唐突すぎるスキンシップに、健全な男子高校生である玲はビクッと身を震わせて驚いた。
「なッ。お、おいっ、姫毬──」
「──『世界一カッコいい彼氏くんにゾッコンです』って言うねっ?」
だがすぐに、玲は体を硬直させる。
ビシリと体を固める玲を見上げて、姫毬はほんの少しだけ驚いた様子だ。
「あれっ? もしかして……れーくん、照れてる?」
「誰がアホ姫毬相手に照れるかっつの」
「えぇ~っ? でも、顔赤くない?」
「夕日じゃねぇの」
自分だってさっきまで顔を赤くしていたくせに、どの口が。
そもそも玲は気付いても指摘しなかったと言うのに、なぜ姫毬はわざわざ口にするのか。ぽやんとしている姫毬の思考は分からない。
……だが、そういう天然でフワフワ思考の姫毬にゾッコンなのだから、玲は文句を言えなかった。
トンと、玲は姫毬の頭に頬を寄せる。
「……あー、のさ」
「うん? なに?」
「姫毬は、言いたいのか。周りに、俺と……付き合ってる、って」
「えっ、全然?」
意外にも、カラッとした返事。
てっきり寂しい思いをさせているのかと思ったが、どうやら違ったらしい。姫毬の返事に、玲は安堵──。
「だってれーくん、女の子に冷たいから全くモテないでしょ? だから、わざわざ『彼女がいます』って言わなくても心配な──いたたっ! 痛いっ、痛いよれーくぅんっ!」
──ではなく、怒り心頭。
玲は姫毬の頭にグリグリと自分の顔を押し付け、スキンシップじみた攻撃を始めた。
「俺だってそこそこモテるわバカ姫毬!」
「えぇ~っ、嘘だぁ~っ! って、ひゃんっ! 髪の毛を引っ張らないでよぉ~っ! 叫ぶよっ? 大きな声で『助けて』って叫──あっ、ご、ごめんなさい嘘だよっ、置いて行こうとしないでよぉ~っ!」
前言撤回。姫毬のアホさ加減は、どうにかならないものか。
スクールバッグとチョコを回収してベンチから立ち去ろうとする中、恋人の手によって制服を鷲掴みされながら……玲は、深い深いため息を吐いたのであった。
【幼馴染みは恋愛がヘタ!】 了
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