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ステラ編

ゲームの推しの神様と謎の部屋に閉じ込められる話

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「あれ? あれれー? なんか転移に失敗しちゃって、変なところに来ちゃったな。君は誰? わぁ。人間の女の子だ。しかも魔力全く無いんだけど。わはは、おもしろ~い」
 
 真っ白な部屋の中、目の前には神がいた。

 正確には、私が数年前からハマっている異世界人外ゲーム『箱庭の中の君に贈る』……略称『ハコキミ』に出てくるキャラクター。種族は神。名前はステラ。中性的な見た目の合法ショタっ子だ。
 
 ……え?? なにこれ。
 推しが目の前にいるんだけど? どういう状況?
 
「んー? 聞こえてる? 見えてる? もーしもーし、人間さ~ん? 生きてるー? びっくりしすぎて死んじゃったぁ??」
 
 あまりの情報量の多さに混乱してポカーンと立ち尽くす私に向かって、推しは小さな手のひらを私の目の前でヒラヒラさせている。 え? なにそれ、かわいいっ!!
 
「か、神……だ……。す、ステラ……」
 
「んー? ぼくのこと知ってるんだ? なんでなんでー? ひょっとしてぼくたちの世界に遊びに来たことあるー?」
 
「あっ、いえ……行ったことはないですね……」
 
「ふーん? その割には、ぼくたちのことについて詳しいみたいだよねー? 周りに人外の知り合いでもいるのかなー? 誰かに告げ口されたの? 誰に? 誰だよ。誰だ。誰かなぁ……。悪い子は早く見つけて始末しないといけないよねぇ……。ねぇ、誰と繋がってるの? ぼくに教えて教えてー? 人間のお嬢ちゃん、おねがーい!」
 
「いや、私が一方的にそちら側の世界を知ってるだけですね……」
 
「……へぇ…………」
 
 ん? あれ。これなんか私、怪しくない?
 いきなり謎の空間にいて、あなた方のことよく知ってますよなんて人間が現れたら怪しくない?
 
「いえ、あの私は決して怪しい者ではありませんので!」
 
「んふふ。君さぁ、ぼくがそれを素直に信じると思ってるのー? 随分とおバカさんなんだねぇ? 誰の差し金かな~悪魔かな~堕天した天使って可能性もあるよね~魔力のない人間にぼくたちのことをペラペラ話しちゃって、何をする気なのかな~~? 何を企んでるの~~??」
 
 推しにめちゃくちゃ疑われている! 内通者的なものだと思われてる!
 
「ここを出るのに私が邪魔になるのであれば、いつでも切り捨ててくださって構いませんので!」
 
「へーえ? 君ってぼくに殺されたい願望でもあるのー? 生きることに疲れちゃったぁ? 休みたい? 転生すら嫌なのー? 嫌なら殺した後に魂ごと壊すけど?」
 
 ステラは人間や人外も含めて、生き物の魂を裁く神だ。生命を司るタイプの神。
 
「生きることには疲れてないですが、神の手によって殺されるなら本望ですね。魂は好きにしてください。出来れば優しくお願いします」
 
「ふーん……本当にぼくのことについて詳しいんだ……嘘はついてなさそうなんだよねぇ……え~~どうしよっかな~~怪しいから裁いちゃおっかな~~それとも見逃してあげよっかな~~殺した後はどうしよ~~とりあえず殺しちゃえば、よっぽどのことがない限り記憶はリセットされるし、それで良いかな?」
 
 これ多分、殺されるパターンだ。まあ……推しに殺されるならいっか。
 
「今日が私の命日か……でも、最期に神に会えて幸せでした」
 
「わはは。ぼくに殺される覚悟出来すぎでしょ。命乞いすらしないとか珍し~い。……ぼくのために死ねるのなら、ぼくのために生きてくれないの?」
 
「え? あ、それは……すごい殺し文句ですね」
 
「君なら出来るよね?」
 
「分かりました。めっちゃ生きます。天寿を全うします」
 
「うん! いい子だね! やっぱり君のことは見逃してあげる! ぼくってすっごく優しい~~神の中の神~~! まるで慈愛の神だよね~~! 今日からよろしくね!」

 そう言って神は、私の名前を呼んだ。
 よく分からないけど、どうやら見逃されたらしい……?

 あれ……? まだ名前教えてないのに、私の名前をどうやって知ったんだろう……? 神だからかな? 神ってすごい……。


 ***


 この後なんやかんやで外に出られて、気が付いたらベッドの上にいて「なんだ夢だったのかー」ってなってたら、ステラが「来ちゃった!」ってゲーム画面から飛び出て会いに来てしょっちゅう絡まれる。そのうち異世界に連れて行かれて元の世界に帰れなくされる。
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