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29話 お寿司
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県立美術館。市から代表で選ばれた作品を制作した高校生達が会場に集まり、作品鑑賞を楽しんでいる。
「すげ、俺たちの絵、並んで飾ってある」
湊と大翔は美術部の顧問、的場先生の車に乗って県立美術にやってきた。
2人とも薄水色のシャツ、明るい水色チェックのネクタイとスラックスを履いている。
大翔は黒のリュックを担いでオレンジのクロックス履き、湊はスクールバッグを持ち茶色の革靴を履いている。
「湊の絵も県立に進むと思わなかった。特別賞だけど、市立美術館のエントランスに飾るだけって意味に聞こえた」
「俺もそう思った。県立に進んで嬉しいなあ」
「あれ?大翔くんと、そのお友達だ~」
明るい声の方を見ると赤髪を結んだ、キラキラオーラの男がいた。ノーネクタイで薄水色のシャツを着て、水色チェックのスラックス、茶色の革靴、生成り色のトートバッグを持っている。
大翔と湊が着るとコスプレ感の強い制服なのに、鳩田淳が着るとしっくりくる。
大翔は(今日もオーラがすごい…)と思った。
「2人は的場先生の車で来たの?すごいね!俺は普通に電車で1人で来たよ~!」
「八王子先輩と一緒じゃないんですか?」
「なんか最近忙しそうで~。俺ももう八王子家から卒業する時期だな~て、しみじみ思う」
(八王子家からの卒業?)
大翔と湊が頭にハテナを浮かべていると、マイクを持った大人が前に出た。
少し離れたとこで淳と的場先生が、会話をしていた。
「今日来ないと思ってて…来るなら車出したのに」
「先生の家から反対方向じゃん~」
アナウスが、会場に響いた。
「お待たせいたしました。国立美術館に進む作品が決定しましたので発表いたします。美術部門からは……………」
「湊くんは人を感動させる能力があるね~」
笑顔の淳が、おしぼりで手を拭きながら、目の前に座る湊を褒めた。その横には大翔が座っている。
「まさか僕の絵が国立に進むなんて…」
湊は表彰が入った筒をテーブルの上に立たせている。
美術部門から1枚だけ選ばれた作品は湊の描いた昇り龍だった。
まさか自分が選ばれるとは思わず、発表の言葉を全く考えていなかったため、適当に思いついた言葉を話していたが、会場では涙する人が何人も見えた。
「俺も選ばれたかったな~。今日は奢るからいっぱい食べてね♡」
そういって淳は、テーブルの横についている蛇口を捻ろうとした。
「わわわ、危ないですよ!火傷しますって」
湊が素早く湯呑みを差し出して、お湯を受け入れた。
「火傷…?手洗い場で…?」
湊は湯呑みに、お茶の粉をいれながら質問した。
「手?これお茶作るための熱湯でる蛇口ですよ?…淳先輩、もしかして100円寿司初めてですか…?」
「うん、初めて。CMで見て行ってみたくて…でも職人さんも見当たらないし、どうやって注文するかもわかんない…😣」
「サンプル品すごい本物みたい」といって、流れているマグロを指でつつこうとしたので、大翔が慌てて皿を取り上げた
「だめ!食べないのにベタベタ触っちゃ!」
「それ食べれるの?」
大翔と湊はタッチパネルの使い方、お皿の取り方、わさびの出し方、お会計の仕組み…全てを細かく教えた。
「鳩田先輩の実家ってお金持ちなんですね…回らない寿司しか知らないなんて。一人暮らししてるのもすごいですし」
教え疲れた大翔は、マグロを食べながら本音まま話した。
淳は驚いた顔をした。
「お金持ち…?真逆だよ!両親はパチンカスのアル中借金持ちで、俺は放置子だしバカだから常識がなくて」
大翔と湊の思考と手が止まった。淳の口から出てくると思えないな言葉が出てきたから。
大翔が「ほうちご…?」とつぶやいた。
「ずっと公園にいたり、外うろついてて、大人に構ってもらおうとしてたよ」
「だ、だから家事力すごいんですか?あのバズってるナイトルーティンの動画、あの動きはかなり手慣れてますよね」湊は焦った顔をしながら口を開いた。
「あれは全部レオに教えてもらった。小3のとき、高熱で公園で倒れてたらレオのパパが俺のこと拾って。レオのママが歯科医だから、俺のひどい歯を全部治してくれた」
淳は寿司に何もつけずに、箸でパクパク食べた。
大翔は醤油ボトルを持って説明した。
「先輩、お醤油はこれを使って、お皿はないので直接、ネタにかけて…それか空いたお皿に醤油をいれて…」
「寿司って醤油つけて食べるものなの?ありがと」
大翔と湊は微笑み顔で固まってしまった。
「八王子家に入り浸るようになったけど、泊まると両親が捜索願いだすから実家には帰ってた。ある日、レオが怒ったんだよね。自立しろって。家事とか全部教えてくれて。YouTuberになって稼げっていうから言われた通りした。赤い髪もキャラ作りのためにしろって言われて」
淳はモグモグしながら上の空になった。
「俺がしっかり者で、いつも気だるそうで偉そうなレオを支えてるって設定だけどね。レオが台本かいて編集もしてるけど、いい加減に自立しなきゃなーと思って」
大翔は鳩田淳のことを、しっかりした頼れるお兄さんだと思っていた。それは八王子レオの台本だったのか?
「大翔くんとレオ見てると、昔の俺とレオを思い出すんだあ。レオって枯れそうな観葉植物を買って育てるのも趣味だし。かわいそうな子はほっとけないっていうか。なんだかんだ言って人を育てるの好きなんだよね。彼女も育ててたし」
そう言って笑う淳は、相変わらずキラキラしていた。そのキラキラは大翔の全身に刺さった。内側から刺されたように痛みが走る。痛風になったのかな?と思った。
「すげ、俺たちの絵、並んで飾ってある」
湊と大翔は美術部の顧問、的場先生の車に乗って県立美術にやってきた。
2人とも薄水色のシャツ、明るい水色チェックのネクタイとスラックスを履いている。
大翔は黒のリュックを担いでオレンジのクロックス履き、湊はスクールバッグを持ち茶色の革靴を履いている。
「湊の絵も県立に進むと思わなかった。特別賞だけど、市立美術館のエントランスに飾るだけって意味に聞こえた」
「俺もそう思った。県立に進んで嬉しいなあ」
「あれ?大翔くんと、そのお友達だ~」
明るい声の方を見ると赤髪を結んだ、キラキラオーラの男がいた。ノーネクタイで薄水色のシャツを着て、水色チェックのスラックス、茶色の革靴、生成り色のトートバッグを持っている。
大翔と湊が着るとコスプレ感の強い制服なのに、鳩田淳が着るとしっくりくる。
大翔は(今日もオーラがすごい…)と思った。
「2人は的場先生の車で来たの?すごいね!俺は普通に電車で1人で来たよ~!」
「八王子先輩と一緒じゃないんですか?」
「なんか最近忙しそうで~。俺ももう八王子家から卒業する時期だな~て、しみじみ思う」
(八王子家からの卒業?)
大翔と湊が頭にハテナを浮かべていると、マイクを持った大人が前に出た。
少し離れたとこで淳と的場先生が、会話をしていた。
「今日来ないと思ってて…来るなら車出したのに」
「先生の家から反対方向じゃん~」
アナウスが、会場に響いた。
「お待たせいたしました。国立美術館に進む作品が決定しましたので発表いたします。美術部門からは……………」
「湊くんは人を感動させる能力があるね~」
笑顔の淳が、おしぼりで手を拭きながら、目の前に座る湊を褒めた。その横には大翔が座っている。
「まさか僕の絵が国立に進むなんて…」
湊は表彰が入った筒をテーブルの上に立たせている。
美術部門から1枚だけ選ばれた作品は湊の描いた昇り龍だった。
まさか自分が選ばれるとは思わず、発表の言葉を全く考えていなかったため、適当に思いついた言葉を話していたが、会場では涙する人が何人も見えた。
「俺も選ばれたかったな~。今日は奢るからいっぱい食べてね♡」
そういって淳は、テーブルの横についている蛇口を捻ろうとした。
「わわわ、危ないですよ!火傷しますって」
湊が素早く湯呑みを差し出して、お湯を受け入れた。
「火傷…?手洗い場で…?」
湊は湯呑みに、お茶の粉をいれながら質問した。
「手?これお茶作るための熱湯でる蛇口ですよ?…淳先輩、もしかして100円寿司初めてですか…?」
「うん、初めて。CMで見て行ってみたくて…でも職人さんも見当たらないし、どうやって注文するかもわかんない…😣」
「サンプル品すごい本物みたい」といって、流れているマグロを指でつつこうとしたので、大翔が慌てて皿を取り上げた
「だめ!食べないのにベタベタ触っちゃ!」
「それ食べれるの?」
大翔と湊はタッチパネルの使い方、お皿の取り方、わさびの出し方、お会計の仕組み…全てを細かく教えた。
「鳩田先輩の実家ってお金持ちなんですね…回らない寿司しか知らないなんて。一人暮らししてるのもすごいですし」
教え疲れた大翔は、マグロを食べながら本音まま話した。
淳は驚いた顔をした。
「お金持ち…?真逆だよ!両親はパチンカスのアル中借金持ちで、俺は放置子だしバカだから常識がなくて」
大翔と湊の思考と手が止まった。淳の口から出てくると思えないな言葉が出てきたから。
大翔が「ほうちご…?」とつぶやいた。
「ずっと公園にいたり、外うろついてて、大人に構ってもらおうとしてたよ」
「だ、だから家事力すごいんですか?あのバズってるナイトルーティンの動画、あの動きはかなり手慣れてますよね」湊は焦った顔をしながら口を開いた。
「あれは全部レオに教えてもらった。小3のとき、高熱で公園で倒れてたらレオのパパが俺のこと拾って。レオのママが歯科医だから、俺のひどい歯を全部治してくれた」
淳は寿司に何もつけずに、箸でパクパク食べた。
大翔は醤油ボトルを持って説明した。
「先輩、お醤油はこれを使って、お皿はないので直接、ネタにかけて…それか空いたお皿に醤油をいれて…」
「寿司って醤油つけて食べるものなの?ありがと」
大翔と湊は微笑み顔で固まってしまった。
「八王子家に入り浸るようになったけど、泊まると両親が捜索願いだすから実家には帰ってた。ある日、レオが怒ったんだよね。自立しろって。家事とか全部教えてくれて。YouTuberになって稼げっていうから言われた通りした。赤い髪もキャラ作りのためにしろって言われて」
淳はモグモグしながら上の空になった。
「俺がしっかり者で、いつも気だるそうで偉そうなレオを支えてるって設定だけどね。レオが台本かいて編集もしてるけど、いい加減に自立しなきゃなーと思って」
大翔は鳩田淳のことを、しっかりした頼れるお兄さんだと思っていた。それは八王子レオの台本だったのか?
「大翔くんとレオ見てると、昔の俺とレオを思い出すんだあ。レオって枯れそうな観葉植物を買って育てるのも趣味だし。かわいそうな子はほっとけないっていうか。なんだかんだ言って人を育てるの好きなんだよね。彼女も育ててたし」
そう言って笑う淳は、相変わらずキラキラしていた。そのキラキラは大翔の全身に刺さった。内側から刺されたように痛みが走る。痛風になったのかな?と思った。
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