邪竜と勇者

天野夜夢桜

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♦️動き出す邪竜♦

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 村を破壊して飛び去って行ってから暫くのこと、ヴァルレジアは力をつけるために片っ端からダンジョンのボスである魔物を殺しまくっていた。

「おのれぇえ! こんな小娘に我が負けるはずがっ!」

「気持ち悪いからさっさと消え失せろ! この低種族がっ! 『内部から破裂せよボムルガル!』」

「ぐらああああああ!」

ヴァルレジアが魔法を唱えると、魔物は内部から破裂してただの肉塊へと変わった。

「うええええ、汚い! だがだいぶ力がついてきたな! このままならレイラのところに戻らなくても私一人で世界を終わらせられるな!」
「クックック、じゃあそろそろ私の名を! ヴァルレジアの恐ろしさを世に知らしめるか!」
「まずは世界中の強者どもを皆殺しにして私の名を上げる!」
「強者はそうだな~ 人も魔物も問わずでいいか」
「片っ端から殺していけばいずれは私がこの世界の支配者! そしてそのレベルまで行けば世界を消し飛ばすなど造作もないはずだ!」
「くふふふ、それじゃあ強敵を探しにここから出るとしよう!」

ヴァルレジアはダンジョンから出るために天井に向けて魔法弾を放った!
すると何層ものの構造になっているダンジョンの天井にぽっかりと大穴が空き、そこから翼を広げてダンジョンの外へと飛び去った!

「くははははっ! さぁて、まずはどいつをろうか! 名のある人間か魔物じゃないと駄目だからなぁ」
「手配書や討伐表でも見れば分かるだろうがギルドまで行くのも面倒だなぁ」
「よしっ! こいつを使おうか!『強者を探せダルガス』」
「クックック、よし出てきたな! この魔法は右手に色が変わる蒼い炎が表れて、その炎の色は強敵がいる方角に歩めば紅くなり普通ぐらいなら緑に変化する」
「そして本来は強敵に合わないようにするための探知機としての役割を果たすものだが、逆に言えば強敵を見つけ出せる探知機でもあるわけだ」
「つまりっ! こいつで強者を見つけていきこの私が殺してやる!」
「ではさっそく探してみるか」

ヴァルレジアは空中に浮遊した状態であらゆる方角に炎を向けた。
すると北の方に炎を向けた瞬間、炎の色は紅く燃え上がった!

「あはははは! み~つけたぁ~! 待っていろ! 今殺しに言ってやるっ!」
「しかし、この人間の姿では少々移動する速度が遅いか? ならばっ!」
「グルウアアア!」

ヴァルレジアが変身をするために雄たけびをあげると彼女の身体は真っ黒染まりどんどんと形を変えていった!
そしてドラゴンの形を形成すると真っ黒いところが少し薄くなり、その姿が表した。
変身したヴァルレジアの姿は勇者との戦闘の時とは違い、翼は6枚ではなく大きな2枚の翼が生えていた。
ちなみにその他の容姿はこんな感じだ。
瞳は蛇のように細長く目は紅く染まっていてあらゆるものを震え上がらせるような鋭い目つきをしていた。
そして大きな尻尾が生えていて、体長は5mぐらいの直立二足歩行が出来るような容姿だった。

「クフフフフ、よし! ではこれより、強者を潰しに行こう!」

『潰しに行こう!』と彼女が言った後、大きな翼を羽ばたかせ目的の方角へと飛んで行った。
そして2分で程度で100kmぐらい飛ぶといかにも強そうなドラゴンがいた!

「ほう? 強敵の正体は私と同じ巨大ドラゴンか? 丁度いい! 私と比べてどのぐらい強いか確かめてみるか」
「だがいったん人の姿に戻るか」

ヴァルレジアは翼で自分を覆うと、再び身体を真っ黒黒く染め上げて人の形へと戻りそのドラゴンがいる場所へと降り立った。

「さてと、それじゃあこのドラゴンにケンカを売るか! おいクソドラゴン! こっちを見ろ!」

「あぁ? 誰だ貴様! この我に小娘ごときが話しかけるとは無礼であるぞ!」

「知らないし私には関係ない! それに私は今からお前を殺すのだから無礼も何もない」

「はっ! 小娘が! 我を殺すだと? お前がか? グハハハハ身の程を弁えろ! お前のような小娘が我に勝てるわけなかろう?」

「どうかな? 私はお前が思っているより強いと思うぞ?」

「グルアアアア! ならばやってみるがいい!」

「ああってやるよ!『闇の星々よ、その絶望の力でこの愚か者を叩き潰せ! 闇の流星群ダグメリオン』」

「隕石魔法か? ならば『我が闇の力よ、剣となり降り注ぐ障害を打ち砕け!具現なる剣ダルムソルド』」

「へぇ~ 剣を出現させて私の隕石を全部相殺するとは、中々やるじゃないか」
「だが、今度はどうかな?『終末を伝えし紅き月よ、その力で奴を殺せ!終末の月光ムルガルム!」

「ん? 空が突然暗くなったぞ? それにやけに紅くなっていく、これは!? 空に紅く大きな月? だと?」

「ただの月じゃない、あれはお前を殺すための月さ! 死ねえ! 破滅の月光を受けるがいい!」

ヴァルレジアが手を天に向けてからドラゴンに向かって振り下ろすと紅い月から巨大な光線が降り注ぎドラゴンに直撃した!

「グルアアアアアア! こ、これは!?」

「どうだ? かなり効くだろう? ドラゴンにはよく効く魔力で構成したからな?」

「グアアアアアアアアア!」

ヴァルレジアの魔法をもろにくらったドラゴンは雄叫びと共に体積の75%消滅して死んだ。

「クフハハハハ、脆い、脆すぎるぞ! やはり邪竜である私の敵ではなかったな!」
「それじゃあもうここにはようはないから次の強者を探すか、もっとも私にとっては雑魚だがな!」

ヴァルレジアは余裕の笑みを浮かべるとこの場をあとにした。


 ヴァルレジアが世界中で暴れている一方、レイラたちは大陸を移動するために船に乗ろうとしていたがなかなか交渉は芳しくなかった。
その理由はおかしな超常現象が起きたからだ。
そして今その超常現象が何だったのか交渉のついでに訊いていた。

「それで、超常現象って何があったんですか?」

「それはな、ここから少し離れた島の上空だけ夜のように暗くなったかと思えば突然大きな紅い満月が出現したという現象だ」

「紅い満月? でもこっちではそんなことをなかったよな?」

「だから超常現象なんだ! しかもその現象は数分経つと消えてしまったようなんだ」

「なるほど、それで原因不明だから安全の為船は出せないと?」

「そうだ、だから悪いが船は暫く出せない」

「う~ん……。」

アレンはとても困ってしまった。
そんな時少し離れたところにいたレイラがアレンに向けて手招きした。
そしてアレンはレイラの方に向かうと手招きしていた理由を訪ねた。

「どうしたんだい? レイラ」

「ねえアレン、さっきの超常現象って多分ヴァルレジアの仕業だと思うの」

「ヴァルレジアが? どうしてそう思うの?」

「ヴァルレジアが使う魔法の中に紅い満月を出現させてその月光で攻撃をするというものがあるの」
「そしてその魔法が唱えられるとその周辺の空は夜のように暗くなり、紅い満月が出るの」

「なるほどな、確かに超常現象と同じようだな。じゃあヴァルレジアは今世界のどこかで暴れているということか」

「暴れているかは分からないけど、何かと戦った可能性が高いわね」
「しかも大型の敵が相手だったと思う」
「ヴァルレジアがこの魔法を使うときは大型の相手だけだったから」

「そうなのか。それにしても流石だ、一緒にいただけあってすごく詳しいじゃん」

「そう? まぁ彼女は私自身だからね、自分のことを把握しているだけだよ」

「それでもヴァルレジアにとってはある意味一番の天敵はレイラだと思うけどな? まあ逆に言えばレイラの天敵もヴァルレジアと言うことになるがな」
「レイラの手の内を一番知っているのはヴァルレジアだろうしな」

「まぁそうね、ヴァルレジアは私の能力を全て把握しているだろうし、それにぶっちゃけ強さはヴァルレジアの方が上だしね」

「そうか、ならば俺たちも強くならないとな!」

「えぇ♪」

「それじゃあどうしようか、船もでないとなると移動はできないし、かといってまた街に戻るのもなぁ」

「そうねぇ、あとは強くなること、つまり実戦を積むということがあげられるけど、ここら辺の魔物は弱いし」

「まぁ弱いと思うのはレイラだけだと思うけどね」
「ああそうだ、レイラと戦えばいいのか」

「えっ? 私ここで倒されるの?」

「違うよ、組手的なやつをすればいいかと思ったのさ」

「なんだそういうことね、てっきり私は殺されるのかと思ったわ」

「そんなことしないから安心して」

「うん、わかった♪ ごめんね疑って。それで組手についてはいいわよ」

「ありがとう。それじゃあどこでやろうか」

「ここから離れた野原がいいんじゃない?」

「そうするか!」

アレンとレイラは船着き場を離れると少し時間をかけて誰もいない野原のところまで移動した。
そして互いにすこし距離をとった位置に移動してから向かい合ってここまで来る間に決めた組手のルールを再度確認した。

「それじゃあレイラ、組手のルールの再確認だ。まずは互いに手を抜かない、そしてレイラはなるべくヴァルレジアの戦闘方法で戦う。そしてこれはしないと思うが抱きつき攻撃はなしだ。いいね?」

「残念だけどいいわよ。それじゃあ始めましょうか! =!」

「それじゃあいくぜ! 『我の内にありし聖なる光よ、光の剣となりて敵をうて! 具現なる光ラゼルス !』」

アレンが魔法を唱えると右手にリーチの長い光の剣が出現した!
そしてレイラに向かって斬りかかったが、あっさりと避けられてしまった挙げ句に重いパンチをくらわせられてしまった!

「ぐはっ!」

「ごめんねアレン」

レイラは大好きなアレンに攻撃してしまった罪悪感で悲しい顔になったが、これはアレンの希望と思い、更に攻撃をするために呪文を唱え始めた。

「死なないでねアレン!『我が時の力よ、我の時を加速させろ! 時間加速スピード・オブ・ザ・タイム!』」

レイラが魔法を唱えると『ゴーン』という音と共にレイラの姿が3人になりそれぞれの手から紫色のビームを出してきた!結果3方向から同時にアレンに向かってビームが飛んできた!

「うわあああ! レイラのやつ、やっぱり前は本気を出してなかったんだな! やばいっ!」

『ドカーン!』という音がしながらアレンはレイラの攻撃をもろにくらってしまった!

「はぁはぁ、アレン? 大丈夫?」

「…………。」

「アレン? 何で返事をしないの? ま、まさか私アレンを殺しちゃった?! いやよそんなの!」

レイラはアレンが倒れているところに駆け寄って安否を確認し始めた。

「アレン! ねぇアレン!起きてよ!目を覚ましてよ~ 私大好きな人を殺したくなんてないよぉ」
「うえ~ん、ひっぐ、ひっぐ」

レイラはアレンを殺してしまったと思い泣き出してしまった。
だがアレンは別に死んだのではなく気絶をしていただけだった。そして意識が戻るとこの状況なので起きるに起きられなくなっていた。

 まずい、とても起き出せる雰囲気じゃない。
 俺はレイラの攻撃をくらって気絶していただけなのに、レイラは死んだと思っているのか泣いているようだ。
 本来なら今すぐにでも起きてレイラを安心させたいところだが、さっきレイラが俺のことを好きって言ってきたことによって起きるに起きられなくなった。
 だってレイラはきっと俺が聞いてないと思って思わず言ってしまったような気がするから今起きたらレイラは真実を知ってしょげてしまうかもしれないからな。
 でもよく考えたら今起きないと余計にヤバいか、もしレイラに俺の気絶したフリがバレたら怒った勢いで本当に殺されるかもしれないしな。
 じゃあそろそろ起きるか。
「うっ…う~ん、はっ!」

「アレン! 気が付いた? ! よかったぁあああ! うえ~ん、心配したんだよ~」

「そうか……。ごめんな、心配かけて。もう大丈夫だ」

「うぅ~ぐすん、アレン~」

「うわぁ! レイラ!」

アレンはレイラが泣きながら自分を抱きしめてきたので驚いた!

「レイラ苦しいぃい、それに、その……む、胸が顔に当たっている!」
 あががが、すごく柔らかくていい匂いだ! まずい、頭がぼぉとしてくらくらする。
「レイラ、ちょっと放してほしいかな」

「いやだ! 私を心配させた罰よ! このまま暫く抱きしめ続けてやる!」

「ごめんってレイラ、でもその……これ以上大好きな女の子に抱きしめられていたらどうにかなっちゃいそうだから」

「えっ!? 大好き?」

「あっ!」
 しまった、こんな状況で判断力が鈍りつい言ってしまった。
 レイラは今どんな顔をしているのだろうか気になる。
 ちょっとレイラの胸に顔をうずめたままだが顔を無理やりレイラの方に顔を向けてみるか。
 首が少し痛いが何とかレイラの顔が見えたぞ! どれどれ。

「…………嘘じゃないよね? アレン♥」

「………。」
 あぁ~ すっごく顔が赤くなっているが、何だか嬉しそうだ。
 ………もうここまで来たのなら俺の気持ちを伝えるか。
「ああほんとうだ! 俺はお前を始めてみた時から可愛いと思っていたし、レイラと一緒に過ごしていたら余計に好きになってしまった」

「アレン……。ふふふ、ねぇアレン…一度しか言わないから良く聞いてね?」

「え? 何だ?」

「ふふふ、ちょっと耳元に顔を近づけるわね」

レイラはアレンの耳元まで近づくと囁くように喋った。

「私もアレンのことが大好き! ねぇアレン……私の彼氏になってほしいな」

「ほえ?! 彼氏に?」

「うん! いやかな?」

「いやじゃないさ! むしろすごく嬉しい! もちろんいいさ、宜しくなレイラ♪」

「やったぁ♪ 嬉しい♥ 私今まで以上にアレンに尽くすね!」

「ああ、ありがとう。でも自分を大切にしてくれよ? 俺はレイラの身に何かあったら嫌だからな」

「わかっているわよ。私は自分も大事にするしアレンも大切にする!」

「それならばいい。ところでレイラ、そろそろ行こうか」

「そうね、じゃあ最後に……ちゅっ♥」

「人生初めて女の子にキスされた、何か凄く良い!」

「よかった、それじゃあ行きましょうか」

「ああ♪」

アレンたちは立ち上がると次の目的地を探しながら歩みだした。



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