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♦プロローグ♦
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★キャラクター紹介★
アレン=ルドアール
世界中を旅している18歳の少年であり、勇者の末裔でもある彼。
その為かある日突然グリゼリア王国の王様に呼び出されて邪竜討伐を言い渡されてしまったので少年は渋々旅を中断して邪竜討伐に向かって行く。
レイラ=ヴァレルジア
魔女の家系のヴァレルジアの血と、ありとあらゆるものを破壊し続けた神災のドラゴンの血を受け継いだ17歳の少女。
元々は平和に暮らしていた少女だが、あることがきっかけでその平和は脆くも崩れ去ることになってしまった。
★プロローグ★
とある塔の上、少女は少し肌寒い風にうたれながら静かに立っていた。
少女は母親を殺した人間への復讐の為に今まで数々の人間を殺してきた。
その結果、少女は邪竜レイラと呼ばれ恐れられていた。
だがそんな人々の中に、邪竜を討とうとする勇者が表れた!
そして、その勇者は今邪竜を討とうとレイラの背後に立っていた。
レイラもそのことには気づいており、闘いを始める前に風に当たっていた。
そして……レイラは覚悟を決め、後ろを振り返ってから勇者に話しかけた。
「……来たわね勇者、初めましてかしら?」
「あぁ、そしてさようならだ…邪竜レイラ……。」
「随分と物騒ね? 私をそんなに殺したいのかしら?」
まぁ当然か、私は人をいっぱい殺している。
そんな危ない奴はすぐにでも殺しておきたいわよね。
「あぁ、お前は人々を殺してきた挙句に世界をも壊そうとしている……そんなやつを野放しにしておくわけにはいかないからな」
「そう…賢明な判断じゃないかしら。でもね、私の邪魔をするというならば誰であろうと返り討ちにしてあげる」
そうよ、こんな所で死ぬわけにはいかないのよ!
私はお母さんを殺した人間どもに復讐するために今までやってきたのに、ここで死んだら無意味になっちゃう!
「そうはいかんな、貴様はここで終わる! このラザードの手によってな! 覚悟しろ!」
「ふんっ! 覚悟するのはお前の方だ勇者! くらえ! 『燃え盛れ炎よ! その力で敵を焼き払え! 炎の監獄!』」
レイラが炎の魔法を唱えるとラザードの周辺は炎に包まれて彼を燃やし始めた!
だがラザードは全く効いてないのか、余裕そうな笑みを浮かべながら反撃を開始した。
「フッ、なんだ…邪竜と聞いていたからもっとすごい魔法を繰り出すのかと思えば、この程度なのか」
「な、何ですって!?」
「こんな魔法しか使えぬのなら貴様は早々に諦めることだな! フンっ!」
ラザードが一喝するとさっきまで激しく燃え盛っていた炎が一瞬で消えてしまった!
そして逃すまいという勢いで素早くレイラに近づき、全力で彼女のお腹にパンチをくらわせた!
「かはっ!? うぅうえええええ……っ!」
こいつ本気で殴りやがった、気持ち悪い……吐きそうだし、上手く呼吸ができない!
「どうだ! 邪竜レイラ! 少しは効いたか?」
もっとも、この程度じゃ邪竜はこたえないだろうがな。
「ぐはっ! うえええええ!」
レイラは吐くのを何とか耐えようとしていたが我慢できずに吐いてしまった。
しかしレイラは自分が吐いたことより吐いたものに驚いた!
何故なら彼女が吐いたその場所には、赤黒い液体があったからだ!
う、うそでしょ!? これって血? まさか今の一撃で内臓がめちゃくちゃにされちゃったの?!
まずい、早く修復しないと死んじゃう!
「『癒しの力よ、その光で我が傷を治せ! 治癒する光よ!』」
「はぁ、はぁ、はぁ………。」
「ははは、どうやら相当こたえていたようだな!」
よし! 思ったよりダメージは入るということか!
邪竜だからそこまでくらわないと思っていたが、見た目通りということか。
「…………。」
邪竜か……本当は平穏に暮らせていたかもしれない17歳くらいの少女。
元は人間の方から仕掛けたにも関わらず、その復讐をしただけで邪竜扱い。
王の命令とはいえ、すごく心苦しい。
可哀そうに、せめて俺がこの手で楽にしてやる!
「……………。」
まずいわね、どうしよう。今この状態だと私は確実に殺されてしまう!
何とか手を打たないと、いっそのこと変身してしまおうか。
いやでもあれはすごく力を使うし、今の私じゃあ……。
レイラは予想以上に勇者が強かったので、思考がごちゃごちゃになってしまっていた。
どうすればいいのか分からなくなり、とても余裕になんかなれなかった。
だがふとレイラの内側から突然声が聞こえてきた。
「おいレイラ、何を戸惑っている? さっさと変身してアイツを殺せばいいだろう?」
「ヴァルレジア? 今は出てこないで! 考えている最中なの! それに今の私の力じゃとてもじゃないが変身できない!」
「変身できないって、だから私がいるんだろう?」
「な、何をする気!?」
「ちょっと身体を借りるぞレイラ」
「えっ、うわあああああ!」
レイラが少し悲鳴をあげた瞬間、突然ひもが切れて動かなくなった操り人形のように肩がだらんと下がった状態で下を向き、動かなくなった。
「ん? 何だ、邪竜レイラの様子がおかしくなったぞ。何かやばそうだ! 早く倒さなくては!」
ラザードがレイラの異変に気付き急いで攻撃しようと近づいた。
だがレイラの目の前まであと少しというところでレイラ?が顔を正面に向けて笑顔でこう言った!
「おい勇者、今度はこの私…邪竜ヴァルレジア様が相手だ! 覚悟しろ!」
「なにっ!?」
ラザードはレイラの豹変ぶりに驚いた。
言葉遣いが変わったのもそうだが、目の白いところが黒色になっており、そして紅い瞳はさっきよりより紅く血走っていた!
さらに言えば、さっきまで感じなかった恐ろしいほどの殺意と邪悪な気配が感じられた。
「あ……。」
邪竜レイラ…お前はただの竜の少女だ、真なる邪竜とはこいつの方か!
すごい威圧感だ、とても17歳ぐらいの少女とは思えないほどだ。
だがここで負けるわけにはいかない! こいつに負ければ俺の家族も危険な目にあってしまう。
それだけは回避しなくては! だからお前をここで討つ!
「お前が真なる元凶、真なる邪竜か!」
「クックック、そのとおり! 私が真なる邪竜、レイラ=ヴァレルジアのもう一つの人格!
邪竜ヴァルレジアだ! 死ぬ前に覚えておけよ、勇者!」
「あぁ! 忘れずに覚えておこう、貴様を葬ったことを世に知らしめる為にな!」
「いくぞ! 邪竜ヴァルレジア!」
ラザードは先程と同じ技を繰り出すために素早くヴァルレジアに近づき、そして強力なパンチをお腹にくらわせた!
「どうだ! これが先程レイラがくらった攻撃だ!これで貴様も終わりだ!」
「うぐっ!」
邪竜は2発この技をくらった、もう立つこと出来ないだろう、そうラザードは確信していた。
しかしそれに対してヴァルレジアは『にやり』と笑みを浮かべながら余裕そうな態度だった。
「クックック、これがレイラがくらった技ねぇ。あまりに弱すぎて思わず笑ってしまった」
「なにっ?!」
「この程度で吐血するなんて、レイラの身体は脆いと言うこと……また鍛え直さないといけないなぁ~」
「どう言うことだ? 身体を動かす人格によって身体の強度も変わると言うことか!」
「そのとおり、これが本来の邪竜の力! これが我の強さ! これが恐れられる本性!そしてこれから貴様が味わえる絶望だ!」
「受けるがいい、我が武力を!『邪竜の刻印』!」
ヴァルレジアが技名と思われる発言と共に一瞬でラザードのお腹にパンチをくらわせた!
しかも謎の蒼い刻印がお腹についたかと思うとそれが爆発してさらにダメージを与えた!
「うぐっ……こ、これは火炎? いや、それとは別の感覚が」
「流石は勇者、この程度じゃくたばらないか♪」
「たかだか闇と炎の複合属性の魔法じゃあこの程度か」
「ふふふ、でもどうやら少しは効いたようだね」
「ぶはっ………。」
「随分と綺麗な血を吐くじゃない、こっちは赤黒い色をしてたと言うのに……まるで血液の隅々まで光があると言わんばかりの鮮血ね♪」
「くぅ………。」
まさかここまでとは、これではさっきと違い状況が逆転してしまった。
だが俺も負けるわけにはいかないんだ!
「流石は邪竜だ、すごく強い。だがこれで終わりだ!」
「ふぅ~ん、これで終わりねぇ……それはこちらのセリフだ! 消え失せろ勇者!」
「これでとどめをさしてやる! グルアアアアアア!」
「くっ、ここからが邪竜の本領発揮か!」
「グアアアアア!」
「なるほど、最後の最後は本来の姿と言うわけか、だがこれは」
「はぁ、はぁ、どうだ、これが私の……邪竜の姿だ」
「あぁ、驚いたぞ…それがお前の真の姿か」
ラザードはドラゴンに変身したヴァルレジアの姿に驚きを隠せなかった。
何故なら変身したヴァルレジアの姿は直立立ちをして宙に浮いている漆黒のドラゴンで、その大きさは大きなお城くらいの高さで、手のひらだけで人を乗せられそうなくらいのデカさがある。
翼は6枚生えていて、すごくごっつい姿になっていた!
「ゆくぞ? 脆弱な人風情が! 『闇の星々よ、その絶望の力で奴を叩き潰せ! 闇の流星群』」
ヴァルレジアが片腕を天に向かってあげてから呪文を唱え、そして腕を振り下ろすと空から複数の闇の隕石がラザードに向かって降り注いだ!
「これは流星群の魔法か、ならばこちらも!『光の魔力よ、闇の魔術に突き進み向かい撃て! 光の砲撃』」
ラザードが呪文を唱えると沢山の光の弾が出現してヴァルレジアの魔法を打ち消した!
「ほう? これは中々やるではないか、勇者」
「まだだ、今度はこっちからいくぞ!」
「はっ、来るがいい勇者!」
ヴァルレジアはあらゆる攻撃に備えて守りを優先に構えた。
「くはは、これで貴様も終わりだ!」
「どうかな、俺はお前に攻撃が当たると見た!」
「そうか、ならばその希望を打ち砕いてやろう」
ラザードの攻撃は弱い、ヴァルレジアはそう思っていたので余裕そうな態度を見せていた。
しかしその予想は外れることになった。
何故ならラザードは人間離れした跳躍をしてヴァルレジアに向かい、更には一瞬で消えたと思ったらヴァルレジアの翼を6枚のうち4枚剣で切り落としたからだ。
当然切り落とされたヴァルレジアは痛みにうち狂い、バランスをとれなくなったので落下していった。
「グルアアアアアア!? な、なんだと?! このヴァルレジアが、こんな………っ!」
「人間を侮るからだ、少しは効いたか?」
「おのれぇ! まさかぁ!?」
ラザードにやられたヴァルレジアは落下していくなか、段々とレイラの姿に戻っていき、塔の天辺の床に落っこちてきた。
「ぐはっ! ヴァルレジアが負けたなんて、勇者とはこれ程までに強いの?」
「その様子、その目、邪竜レイラか」
「くっ、まだよ、まだ負けない!」
レイラはよろよろと立ち上がり、脚をふらつかせた状態でラザードに近づき剣で攻撃しようとした。
だがラザードはその剣を自分の剣で弾き飛ばし、レイラを切りつけてから雷魔法でレイラを塔の上から吹っ飛ばしてとどめをさした。
そして誰も居なくなった塔の上でラザードは一言呟いた、『すまなかったな』と。
罪悪感からなのか、それはどういう意味で言ったのかはラザード本人にしか分からないだろう。
塔から落下したレイラは、奇跡的に生きていたが虫の息だった。
そんな状態だからなのかふと優しい女の人の声が聞こえてきた。
「レイラ……レイラ…………起きて………………目を覚まして」
「うぅ…だれ?」
「レイラ………まだ死んでは駄目よ、生きて」
「だれ? 誰なの?」
レイラは朦朧とする意識のなかで声の主が誰のものか思い出そうとしていた。
この優しい声は……暖かい、心地よい…………この懐かしく切ない気持ちは。
「レイラ=ヴァレルジア、私のようにはならないで!死なないで! お願い」
「この声はもしかして……お母さん?」
でもお母さんは何年も前に殺されてしまった、ここにいるわけ。
「レイラ……私は確かにあの時殺された、でもね…私と言う存在は貴女とずっとよ、だから復讐なんてやめて……幸せに生きて!」
「うぅうああ……お母さん! わかった、私はお母さんの言うとおり幸せに生きて見せる!」
「復讐なんてものに囚われずに!」
レイラは母親の言葉に従い幸せに生きることを決意した。そしてその瞬間に目を覚ました。
「はっ! ここは……。あぁそうか、私は勇者に負けて塔から落とされたんだ」
「だけどその割には怪我や疲労感がない、さっきまであったのに全部治っている!」
「もしかしてお母さんが治してくれたの?」
「………ありがとう、お母さん」
「私は幸せになるよ……でもその前にこの時代から旅立とうかしら」
「また殺されそうになるのは嫌だしね」
レイラは魔力を高め、時を移動する魔法を唱えた。
そしてその直後、青緑色の光に包まれながらレイラは時を移動して、150年後の未来の塔の上に現れた。
「はぁ~ はぁ~ 移動できたわ」
「でも……すごく眠いわ…………疲れた」
「ちょっとこの辺りで眠るか……。」
「そう言えば、ヴァルレジアの意識が消えている」
「何でかな……でも、考えるのは後にしよう……もう…眠い……すぅ~ すぅ~」
かなり精神的に疲れていたのか、レイラは塔の上で眠りについた。
「すぅ~ すぅ~ お母さん~」
アレン=ルドアール
世界中を旅している18歳の少年であり、勇者の末裔でもある彼。
その為かある日突然グリゼリア王国の王様に呼び出されて邪竜討伐を言い渡されてしまったので少年は渋々旅を中断して邪竜討伐に向かって行く。
レイラ=ヴァレルジア
魔女の家系のヴァレルジアの血と、ありとあらゆるものを破壊し続けた神災のドラゴンの血を受け継いだ17歳の少女。
元々は平和に暮らしていた少女だが、あることがきっかけでその平和は脆くも崩れ去ることになってしまった。
★プロローグ★
とある塔の上、少女は少し肌寒い風にうたれながら静かに立っていた。
少女は母親を殺した人間への復讐の為に今まで数々の人間を殺してきた。
その結果、少女は邪竜レイラと呼ばれ恐れられていた。
だがそんな人々の中に、邪竜を討とうとする勇者が表れた!
そして、その勇者は今邪竜を討とうとレイラの背後に立っていた。
レイラもそのことには気づいており、闘いを始める前に風に当たっていた。
そして……レイラは覚悟を決め、後ろを振り返ってから勇者に話しかけた。
「……来たわね勇者、初めましてかしら?」
「あぁ、そしてさようならだ…邪竜レイラ……。」
「随分と物騒ね? 私をそんなに殺したいのかしら?」
まぁ当然か、私は人をいっぱい殺している。
そんな危ない奴はすぐにでも殺しておきたいわよね。
「あぁ、お前は人々を殺してきた挙句に世界をも壊そうとしている……そんなやつを野放しにしておくわけにはいかないからな」
「そう…賢明な判断じゃないかしら。でもね、私の邪魔をするというならば誰であろうと返り討ちにしてあげる」
そうよ、こんな所で死ぬわけにはいかないのよ!
私はお母さんを殺した人間どもに復讐するために今までやってきたのに、ここで死んだら無意味になっちゃう!
「そうはいかんな、貴様はここで終わる! このラザードの手によってな! 覚悟しろ!」
「ふんっ! 覚悟するのはお前の方だ勇者! くらえ! 『燃え盛れ炎よ! その力で敵を焼き払え! 炎の監獄!』」
レイラが炎の魔法を唱えるとラザードの周辺は炎に包まれて彼を燃やし始めた!
だがラザードは全く効いてないのか、余裕そうな笑みを浮かべながら反撃を開始した。
「フッ、なんだ…邪竜と聞いていたからもっとすごい魔法を繰り出すのかと思えば、この程度なのか」
「な、何ですって!?」
「こんな魔法しか使えぬのなら貴様は早々に諦めることだな! フンっ!」
ラザードが一喝するとさっきまで激しく燃え盛っていた炎が一瞬で消えてしまった!
そして逃すまいという勢いで素早くレイラに近づき、全力で彼女のお腹にパンチをくらわせた!
「かはっ!? うぅうえええええ……っ!」
こいつ本気で殴りやがった、気持ち悪い……吐きそうだし、上手く呼吸ができない!
「どうだ! 邪竜レイラ! 少しは効いたか?」
もっとも、この程度じゃ邪竜はこたえないだろうがな。
「ぐはっ! うえええええ!」
レイラは吐くのを何とか耐えようとしていたが我慢できずに吐いてしまった。
しかしレイラは自分が吐いたことより吐いたものに驚いた!
何故なら彼女が吐いたその場所には、赤黒い液体があったからだ!
う、うそでしょ!? これって血? まさか今の一撃で内臓がめちゃくちゃにされちゃったの?!
まずい、早く修復しないと死んじゃう!
「『癒しの力よ、その光で我が傷を治せ! 治癒する光よ!』」
「はぁ、はぁ、はぁ………。」
「ははは、どうやら相当こたえていたようだな!」
よし! 思ったよりダメージは入るということか!
邪竜だからそこまでくらわないと思っていたが、見た目通りということか。
「…………。」
邪竜か……本当は平穏に暮らせていたかもしれない17歳くらいの少女。
元は人間の方から仕掛けたにも関わらず、その復讐をしただけで邪竜扱い。
王の命令とはいえ、すごく心苦しい。
可哀そうに、せめて俺がこの手で楽にしてやる!
「……………。」
まずいわね、どうしよう。今この状態だと私は確実に殺されてしまう!
何とか手を打たないと、いっそのこと変身してしまおうか。
いやでもあれはすごく力を使うし、今の私じゃあ……。
レイラは予想以上に勇者が強かったので、思考がごちゃごちゃになってしまっていた。
どうすればいいのか分からなくなり、とても余裕になんかなれなかった。
だがふとレイラの内側から突然声が聞こえてきた。
「おいレイラ、何を戸惑っている? さっさと変身してアイツを殺せばいいだろう?」
「ヴァルレジア? 今は出てこないで! 考えている最中なの! それに今の私の力じゃとてもじゃないが変身できない!」
「変身できないって、だから私がいるんだろう?」
「な、何をする気!?」
「ちょっと身体を借りるぞレイラ」
「えっ、うわあああああ!」
レイラが少し悲鳴をあげた瞬間、突然ひもが切れて動かなくなった操り人形のように肩がだらんと下がった状態で下を向き、動かなくなった。
「ん? 何だ、邪竜レイラの様子がおかしくなったぞ。何かやばそうだ! 早く倒さなくては!」
ラザードがレイラの異変に気付き急いで攻撃しようと近づいた。
だがレイラの目の前まであと少しというところでレイラ?が顔を正面に向けて笑顔でこう言った!
「おい勇者、今度はこの私…邪竜ヴァルレジア様が相手だ! 覚悟しろ!」
「なにっ!?」
ラザードはレイラの豹変ぶりに驚いた。
言葉遣いが変わったのもそうだが、目の白いところが黒色になっており、そして紅い瞳はさっきよりより紅く血走っていた!
さらに言えば、さっきまで感じなかった恐ろしいほどの殺意と邪悪な気配が感じられた。
「あ……。」
邪竜レイラ…お前はただの竜の少女だ、真なる邪竜とはこいつの方か!
すごい威圧感だ、とても17歳ぐらいの少女とは思えないほどだ。
だがここで負けるわけにはいかない! こいつに負ければ俺の家族も危険な目にあってしまう。
それだけは回避しなくては! だからお前をここで討つ!
「お前が真なる元凶、真なる邪竜か!」
「クックック、そのとおり! 私が真なる邪竜、レイラ=ヴァレルジアのもう一つの人格!
邪竜ヴァルレジアだ! 死ぬ前に覚えておけよ、勇者!」
「あぁ! 忘れずに覚えておこう、貴様を葬ったことを世に知らしめる為にな!」
「いくぞ! 邪竜ヴァルレジア!」
ラザードは先程と同じ技を繰り出すために素早くヴァルレジアに近づき、そして強力なパンチをお腹にくらわせた!
「どうだ! これが先程レイラがくらった攻撃だ!これで貴様も終わりだ!」
「うぐっ!」
邪竜は2発この技をくらった、もう立つこと出来ないだろう、そうラザードは確信していた。
しかしそれに対してヴァルレジアは『にやり』と笑みを浮かべながら余裕そうな態度だった。
「クックック、これがレイラがくらった技ねぇ。あまりに弱すぎて思わず笑ってしまった」
「なにっ?!」
「この程度で吐血するなんて、レイラの身体は脆いと言うこと……また鍛え直さないといけないなぁ~」
「どう言うことだ? 身体を動かす人格によって身体の強度も変わると言うことか!」
「そのとおり、これが本来の邪竜の力! これが我の強さ! これが恐れられる本性!そしてこれから貴様が味わえる絶望だ!」
「受けるがいい、我が武力を!『邪竜の刻印』!」
ヴァルレジアが技名と思われる発言と共に一瞬でラザードのお腹にパンチをくらわせた!
しかも謎の蒼い刻印がお腹についたかと思うとそれが爆発してさらにダメージを与えた!
「うぐっ……こ、これは火炎? いや、それとは別の感覚が」
「流石は勇者、この程度じゃくたばらないか♪」
「たかだか闇と炎の複合属性の魔法じゃあこの程度か」
「ふふふ、でもどうやら少しは効いたようだね」
「ぶはっ………。」
「随分と綺麗な血を吐くじゃない、こっちは赤黒い色をしてたと言うのに……まるで血液の隅々まで光があると言わんばかりの鮮血ね♪」
「くぅ………。」
まさかここまでとは、これではさっきと違い状況が逆転してしまった。
だが俺も負けるわけにはいかないんだ!
「流石は邪竜だ、すごく強い。だがこれで終わりだ!」
「ふぅ~ん、これで終わりねぇ……それはこちらのセリフだ! 消え失せろ勇者!」
「これでとどめをさしてやる! グルアアアアアア!」
「くっ、ここからが邪竜の本領発揮か!」
「グアアアアア!」
「なるほど、最後の最後は本来の姿と言うわけか、だがこれは」
「はぁ、はぁ、どうだ、これが私の……邪竜の姿だ」
「あぁ、驚いたぞ…それがお前の真の姿か」
ラザードはドラゴンに変身したヴァルレジアの姿に驚きを隠せなかった。
何故なら変身したヴァルレジアの姿は直立立ちをして宙に浮いている漆黒のドラゴンで、その大きさは大きなお城くらいの高さで、手のひらだけで人を乗せられそうなくらいのデカさがある。
翼は6枚生えていて、すごくごっつい姿になっていた!
「ゆくぞ? 脆弱な人風情が! 『闇の星々よ、その絶望の力で奴を叩き潰せ! 闇の流星群』」
ヴァルレジアが片腕を天に向かってあげてから呪文を唱え、そして腕を振り下ろすと空から複数の闇の隕石がラザードに向かって降り注いだ!
「これは流星群の魔法か、ならばこちらも!『光の魔力よ、闇の魔術に突き進み向かい撃て! 光の砲撃』」
ラザードが呪文を唱えると沢山の光の弾が出現してヴァルレジアの魔法を打ち消した!
「ほう? これは中々やるではないか、勇者」
「まだだ、今度はこっちからいくぞ!」
「はっ、来るがいい勇者!」
ヴァルレジアはあらゆる攻撃に備えて守りを優先に構えた。
「くはは、これで貴様も終わりだ!」
「どうかな、俺はお前に攻撃が当たると見た!」
「そうか、ならばその希望を打ち砕いてやろう」
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しかしその予想は外れることになった。
何故ならラザードは人間離れした跳躍をしてヴァルレジアに向かい、更には一瞬で消えたと思ったらヴァルレジアの翼を6枚のうち4枚剣で切り落としたからだ。
当然切り落とされたヴァルレジアは痛みにうち狂い、バランスをとれなくなったので落下していった。
「グルアアアアアア!? な、なんだと?! このヴァルレジアが、こんな………っ!」
「人間を侮るからだ、少しは効いたか?」
「おのれぇ! まさかぁ!?」
ラザードにやられたヴァルレジアは落下していくなか、段々とレイラの姿に戻っていき、塔の天辺の床に落っこちてきた。
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「その様子、その目、邪竜レイラか」
「くっ、まだよ、まだ負けない!」
レイラはよろよろと立ち上がり、脚をふらつかせた状態でラザードに近づき剣で攻撃しようとした。
だがラザードはその剣を自分の剣で弾き飛ばし、レイラを切りつけてから雷魔法でレイラを塔の上から吹っ飛ばしてとどめをさした。
そして誰も居なくなった塔の上でラザードは一言呟いた、『すまなかったな』と。
罪悪感からなのか、それはどういう意味で言ったのかはラザード本人にしか分からないだろう。
塔から落下したレイラは、奇跡的に生きていたが虫の息だった。
そんな状態だからなのかふと優しい女の人の声が聞こえてきた。
「レイラ……レイラ…………起きて………………目を覚まして」
「うぅ…だれ?」
「レイラ………まだ死んでは駄目よ、生きて」
「だれ? 誰なの?」
レイラは朦朧とする意識のなかで声の主が誰のものか思い出そうとしていた。
この優しい声は……暖かい、心地よい…………この懐かしく切ない気持ちは。
「レイラ=ヴァレルジア、私のようにはならないで!死なないで! お願い」
「この声はもしかして……お母さん?」
でもお母さんは何年も前に殺されてしまった、ここにいるわけ。
「レイラ……私は確かにあの時殺された、でもね…私と言う存在は貴女とずっとよ、だから復讐なんてやめて……幸せに生きて!」
「うぅうああ……お母さん! わかった、私はお母さんの言うとおり幸せに生きて見せる!」
「復讐なんてものに囚われずに!」
レイラは母親の言葉に従い幸せに生きることを決意した。そしてその瞬間に目を覚ました。
「はっ! ここは……。あぁそうか、私は勇者に負けて塔から落とされたんだ」
「だけどその割には怪我や疲労感がない、さっきまであったのに全部治っている!」
「もしかしてお母さんが治してくれたの?」
「………ありがとう、お母さん」
「私は幸せになるよ……でもその前にこの時代から旅立とうかしら」
「また殺されそうになるのは嫌だしね」
レイラは魔力を高め、時を移動する魔法を唱えた。
そしてその直後、青緑色の光に包まれながらレイラは時を移動して、150年後の未来の塔の上に現れた。
「はぁ~ はぁ~ 移動できたわ」
「でも……すごく眠いわ…………疲れた」
「ちょっとこの辺りで眠るか……。」
「そう言えば、ヴァルレジアの意識が消えている」
「何でかな……でも、考えるのは後にしよう……もう…眠い……すぅ~ すぅ~」
かなり精神的に疲れていたのか、レイラは塔の上で眠りについた。
「すぅ~ すぅ~ お母さん~」
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