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手を取り合う

3.騎士団の精鋭たち

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 帝国の中心地帝都は、巨大な王城を中心として構成される都市だ。



 帝都の外壁は、無機質で飾り気のない実用性を重視したようなものだが、王城の外壁は異様なほど細工を施され、淵には精巧な石像が設置されている。



 騎士団の詰め所、帝国の勇猛なる騎士たちがぞろぞろといる場所だが、その中で異様な雰囲気を漂わせている数人の騎士がいた。



「騎士団長はお宝様の護衛が。」

 その中の一人、長い金髪で緑色の瞳で顔立ちのはっきりとした男がにやけながら言った。

 彼の名は「アレックス」。騎士団内でも精鋭である騎士団長直下の部隊の一員だ。



「なんすか?先輩。羨ましいんですか?」

 アレックスに気安い声色で声をかけるのは、硬そうな短い黒髪をして、眉が太く骨骨しい輪郭をした男だ。

 彼の名は「サンズ」。アレックスと同じ部隊所属であり、彼よりも年下だ。



「一番羨ましがっているのはライガだろ。」

 二人の会話に割り込んだのは、長い濃い茶色の髪をした切れ長の目をした男だ。全体的に細長い印象の外見で、顔の造りは中性的な麗人というの騎士らしさは別の方向で目を引く外見をしている。

 彼の名は「ヒロキ」。二人と同じ部隊で彼は副隊長であり、騎士団自体の副団長でもある。



 三人はライガと呼ばれた男を見た。

「ライガ」は、短い栗色の髪をした茶色の目をした青年だ。

 アレックス、サンズ、ヒロキに比べたらかなり若い、というよりは幼い。



「別に、自分は」

 ライガは三人から顔を逸らした。



「今の王子が気に食わないのはわかるけど、割り切らないといけないだろ。ライガ。」

 アレックスは気を遣うように言った。



「だから、自分は平気ですって!!」

 ライガは声を荒げた。



 三人はライガの様子を見て黙った。



「あ、えっと。わきまえています。彼女とは昔から良くして貰っているだけで、自分は騎士です。」

 ライガは声を荒げたことに驚いて慌てて訂正した。



「…ライガ。あのな。」

 ヒロキが言いかけた時。



 騎士団の詰め所の扉が開く音がした。



 それと同時に三人以外の騎士たちは立ち上がった。



「「お疲れ様です団長。」」

 一斉に戻ってきた団長とその取り巻きをしている騎士に礼をした。

 取り巻きと言っても固定ではなく、任務によって連れる者を変える。



 ただし、それは団長直下の部隊のメンバーだけだ。



「おかえりなさい。」

 ヒロキは団長に手を挙げた。



「失礼ですよヒロキさん。」

 サンズは慌ててヒロキの手を下ろさせて頭を下げさせた。



「かまわない。見えないのだからな。」

 団長は目に包帯を巻いていた。栗色の長い髪を束ねていた。瞳の色は顔にかかる包帯のせいで分からないが、色が白く線の細い輪郭をしている。

 だが、彼は最年少で帝国騎士団長に就いた強者だ。

 彼の名は「ジン」。



 王族でありながら若いころから剣の才能を見せ、前団長を倒し、今の地位を手に入れた。



「せっかく立ったのに失礼ですよ団長。」

 団長の取り巻きにいた若い少年が笑いながら言った。

「団長に失礼とかお前、命知らずだぞ。」

 もう一人の取り巻きが笑いながら言った。

 二人は瓜二つの顔をしており、見てわかるほどの双子具合だ。

 長い赤毛をポニーテールにして全部束ねている。瞳の色は二人とも茶色で、二人の違いは髪を留めている紐の色だけだった。赤と黒だ。

 最初に話したのが兄の「リラン」。紐の色は赤だ。

 その次に話したのは弟の「アラン」。紐の色は黒だ。

 二人とも団長直下隊の隊員だ。



「失礼双子が出たわ。全く声を上げたらいつもろくなことを言わない。」

 取り巻きの一人で、今現在騎士団の詰め所にいる唯一の女性が声を上げた。

 彼女は赤みがかかった金髪で、目はグレーだ。

 中々の美人で、厚みのある唇は色っぽい。

 彼女の名は「ミヤビ」だ。隊の紅一点であり、他の騎士たちの憧れの対象だ。



「でも、リランもアランも本当のことしか言わないから、いいんじゃない?」

 ミヤビの横にいる取り巻きの最後の一人が声を上げた。

 中性的で幼い顔立ちには似合わないオールバックの髪型に、優し気な眉毛とたれ目。瞳も髪も茶色で全体的に穏やかな雰囲気だ。ただ、彼の体つきはがっしりしており筋肉質なのが見てわかる。

 彼の名は「マルコム」。彼も他の者と同様の隊だ。



 ジンはライガとヒロキ、アレックス、サンズを見た。

「何の話をしていた?」

 高圧的ではないが、威圧感のある声だった。



「いえ。ただの雑談です。業務に関係ないことであります。」

 サンズは慌てて姿勢を正した。



「そうなのか?ヒロキ。」

 ジンはヒロキを見た。



「はい。ただ、ライガの人生指南をしていました。」

 ヒロキは少し気安い顔をしてジンを見ていた。

 副隊長であり副団長である彼は、他の者に比べてジンが気が許しているところがある。



 ジンは鼻で笑って詰め所から出て行った。



 見えないといわればかりなのに、他の騎士たちは出て行くジンの背中に礼をしていた。





 最強の帝国騎士団団長「ジン」を隊長とするこの団長直下の部隊は、副隊長「ヒロキ」、隊員の「アレックス」、「サンズ」、「リラン」、「アラン」、「マルコム」、「ミヤビ」そして「ライガ」。この9人は帝国騎士の誇る最強の部隊だ。



 昔は王室直属の部隊が精鋭であったが、今は騎士団長である「ジン」自身の部隊が最高の精鋭部隊となっている。



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