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手を取り合う
2.真実の鑑目
しおりを挟む重々しい鉄格子が組み込まれた石造りの部屋。
「俺は何も知らない!!何も知らない!!」
情けない叫び声が響く。叫ぶ男は手足を拘束されている。
叫び続ける男を取り囲む男達。
「そうか。そうか。お前が嘘をついているかどうかはわかる。嘘をついていたのならどうなるのか・・・・」
取り囲む一人の男が叫ぶ男に笑いかけた。
「おい・・・・お宝様が来られたぞ。」
誰かがそう言った。その言葉を聞くと拘束されている男の様子が変わった。
「お・・・お宝様・・・だと?」
男は顔色を変え、顎をがくがくと震わせた。
「嘘がないのなら大丈夫だろ?」
「まさか嘘をついていたのか?」
「あらら、吐かせて処刑だね。」
取り囲む男たちは芝居がかった言い方で男を笑った。
ギギギ・・・
と重い鉄の扉が開かれる音が聞こえた。
開いた扉の先に数人の騎士に取り囲まれた少女がいた。
少女を確認すると拘束された男以外皆立ち上がり、姿勢を正し敬礼をした。
「お宝様!!お願いします。」
男達はそう言うと深く頭を下げて花道の様に拘束された男への道を開いた。
お宝様
お宝様は国のお宝だからお宝様。
お宝様の瞳は、見ると本当のことを言ってしまう。
お宝様の目は鑑目かがみめと呼ばれるものであり、見てしまったのなら本当のことを言ってしまうから見なければいいのだろうが、目に入ったら魅入ってしまうほどのそれはそれは美しい目だった。
拘束された男と目を合わせただけなのに、お宝様は丁重に騎士に囲まれて、石造りの部屋から出て行った。
「…あの男はどうなりますか?」
か細い、消えそうなお宝様の声が、彼女を囲む騎士の一人にかけられた。
「お言葉ですが、あなたが知ることではないです。」
声をかけられた騎士は淡々と答えた。
それを聞いてお宝様は悲しそうな顔をして俯いた。
お宝様が声をかけた騎士は、目に包帯を巻いていた。
それだからその騎士は本当のことを隠していられるのだろう。
「私は知りたいです。」
お宝様は拗ねるように言った。
「あなたは王子様との婚礼のことだけ考えていればいいのです。」
包帯を巻いた騎士は変わらず淡々と言った。
お宝様は、さらに悲しそうな顔をした。
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