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~糸から外れて~無力な鍵

本懐

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 強さこそ全てだ。



 かつて従軍したことのあるジュリオ・ドレイクは、雲上人のレスリー・ディ・ロッドに憧れていた。



 彼を何度か見たことがあるが、確かに強くとても魅力的な人物だった。

 整った外見や、胡散臭いような話し方が不思議と引き込まれる。



 だが、ジュリオは彼の中に儚さを見ていた。



 その通りだったのか、レスリー・ディ・ロッドは、伝説のままいなくなった。



 彼がいなくなり、軍にいる意味も意義も、目的もなくなったジュリオは軍を辞めて、どうせなら憧れた人と肩を並べたハクト・ニシハラがいる大学に行こうと思った。



 だが、難関過ぎて入れず、今の大学に入った。



 何度かフィーネの戦士の噂は聞いたし、救ってもらったことに感謝して尊敬している。



 新たな地連軍最強の男の話はそりゃあ聞いている。



 昔軍にいたことからいろんな話は聞く。



 どれも皆本物だと言う。興奮して話しくれる者も多く、ジュリオも興味を持った。

 確かに語られる武勇伝はとても強く、まるでおとぎ話のようだった。



 ただ、彼の功績は力だけという、悪く言えばとても頭の悪いもののように思えた。



 本物を、本人を見るまではそうだった。



 彼が、ドールではないのだ、使っているのは鉄の塊なのだ。



 武器を振り回す様子はジュリオの心を強く揺らした。いや、今までの概念を破壊した。



 ひたむきな、強さ。圧倒的な力。



 射撃の腕がすごいとかではない。彼の強さは、確かに力だ。だが、纏う空気が違う。



 レスリー・ディ・ロッド中佐が軍神というのならば、シンタロウ・ウィンクラー少佐は鬼神だろう。

 その違いだ。



 目の当たりにした強さに加え、彼の真っ黒な目が映す、計り知れない暗さ。

 功績や強さから考えていなかった、理知的な顔つきと話し方。



 俺は、なんで軍を辞めたんだ?



 ジュリオはこの強い軍人と出会えたことに感謝と同時にとてつもない後悔をした。



 憧れがここにあるではないか。









「少佐。お願いがあります。」

 ジュリオは空賊対応のために待機放送がかかったにも関わらず、ウィンクラー少佐の元に向かった。



「俺を少佐と呼ぶ必要は無い。」

 ウィンクラー少佐はジュリオの言葉を聞く気がない様で、待機場所に戻るようにジェスチャーで示した。



「俺を少佐の外部部下として、扱ってください。」



「何を言っているのか分かっているのか?」

 ウィンクラー少佐はジュリオを見た。



「わかっています。俺は従軍経験があります。…せめて、俺を再び志願兵と認めてください。」



「その権限は俺にはない。」

 ウィンクラー少佐は再びジュリオに待機場所に戻るように示した。



「外部部下の権限はあります。…噂で聞いたことがあります。亡くなったハンプス少佐が、フィーネに乗っているときに、民間人を無理やり外部部下としてドールに乗せたとか…」

 ジュリオは何かを図るようにウィンクラー少佐を見た。



「俺は前例に則るタイプでない。」

 ウィンクラー少佐は表情を変えずに言った。



「有名です。その時の外部部下があなただったのですか?その時から、あなたは強かったのですか?」

 ジュリオは尊敬する眼差しでウィンクラー少佐を見た。



 ウィンクラー少佐は呆れたように笑った。



「…それは俺でない。…コウヤだ。」

 口元に歪んだ笑みを浮かべてウィンクラー少佐は言った。





「…ジュリオ・ドレイク。人の後を追うな。」

 ウィンクラー少佐は、自分よりも背の高いジュリオを見上げて悲しそうに笑った。



「自分は訓練を一通り受けています。あの、ヤクシジよりも信用できるはずです。」

 ジュリオは訴えるように真っ黒なウィンクラー少佐の目を見た。



「彼は信用できる。」



「兄がテロリストです。…家族が、身内がそうなんですよ。」



「だからこそ、信用できることもある。…それに、コウヤとマーズ博士があいつを信じている。」

 ウィンクラー少佐の言葉にジュリオは苦い表情をした。



「…なら、ジュリオ・ドレイク。ヤクシジでなく…他の学生を見張ってくれるか?」

 ウィンクラー少佐は何かを思いついたように言った。



「え?」



「お前がリコウ君を怪しむとしても、彼は我々の目の届くところに常に入るようにされる。だが、他の学生は違う。…もちろん外部部下としてではなく、一般市民の協力としてだが…」



「…少佐。自分は必ず軍にまた入ります。」

 ジュリオはウィンクラー少佐が自分の要請を訊く気が無いのを察したが、諦めない様子だった。



「…その時は、必ずあなたの部下になります。」



「俺の頼みは聞いてくれないのか…」

 ウィンクラー少佐はジュリオの真面目な顔を見て笑った。



「もちろん聞きます。」

 ジュリオは敬礼をしてウィンクラー少佐の前から礼儀正しく去った。





 去っていくジュリオの背を見てウィンクラー少佐ことシンタロウは困ったように笑っていた。



「…強すぎる力は、毒か…」

 シンタロウは自分の左わき腹をさすった。



「俺も彼も、強い力を得るためには犠牲を払った。」

 シンタロウは悲しそうに笑った。



 《とにかく、君が僕の最高傑作ということだ。》

 急に耳元に響いた声にシンタロウは顔色を変えて振り向いた。



 もちろん誰かがいるわけでもないが、シンタロウは確かに人の存在を感じた。



「…グスタフ…?」

 シンタロウは誰かの名を呟いたが、返事はなかった。











 

 コウヤに引っ張られてリコウは操舵室に連れて行かれた。

 操舵室にいる軍人たちはコウヤを眩しそうに見ていた。



 それはフィーネの戦士でしかも戦闘員であったのだから当然だろう。

 さらに言うならば、ウィンクラー少佐と親友であるからだろう。



「シンタロウは?」

 コウヤは空席になっている艦長の椅子を見て訊いた。



「艦長は今、学生の対応に出ています。…全くそんなの我々に任せればいいのに…」

 オペレータの若い男の軍人がため息をついて言った。



「きっと軍志願だろう。あのジュリオ君だと思う。彼、シンタロウに対して物凄く憧れていたから。」

 コウヤはジュリオの様子を思い出したのか苦笑いをしていた。



「え?でも、先輩にも憧れていましたよ。」

 リコウはそこまでジュリオがそこまであからさまにウィンクラー少佐に接している場面を見ていなかった。



「ああ。だって、彼は、とりあえず戦士は尊敬しているから。でも、シンタロウに対しては違ったな。」

 相変わらず何を根拠としているのかわからないが、すごく自信がある口調だった。





「大変です。」

 オペレータが慌てた様子でコウヤ達を見た。



「空賊対応はまだそこまで近づいていないけど?」

 コウヤは未だレーダーに映らないのを確認してだろうか、自信を持って言っていた。



「違います。…あの、総統閣下から連絡が…おそらく隙を見計らって連絡をしてくださったのだろ思いますが…」

 オペレータはウィンクラー少佐にいて欲しいのだろう。



「レイモンドさんか…」

 コウヤが気まずそうな顔をした。



 そういえば、フィーネの戦士なら絶対にレイモンド・ウィンクラー総統閣下と面識があるはずだ。



「先輩顔見知りですよね。代わりに出ればどうですか?」

 リコウは何となく提案してみた。



 その言葉に縋ろうとしていたのか、オペレータの軍人を始めとした操舵室にいる面々はコウヤを見た。



「…余計なこと言うな。」

 コウヤは変わらず気まずそうな顔をしている。



「切るわけにいかないんですよ。」

 縋るようにオペレータはコウヤに言った。



 尊敬すべき戦士であっても、連絡をくれた総統の通信で待たせるわけにはいかないと考えたようだ。



「いないシンタロウが悪い。」

 コウヤが断言すると同時に何やら通信が繋げられた。



「あ…馬鹿!!」

 コウヤは気付いたのか慌てて言ったが、時すでに遅し。



『繋がったか。少佐。本部は完全に君を蚊帳の外に…』

 操舵室のモニターに現総統閣下であるレイモンド・ウィンクラーが映し出された。



 通信が繋がり、おそらく向こうにはこちらの操舵室の様子が映し出されているのだろう。

 ウィンクラー少佐がいないのに気付いたのか、勢いよく言い始めた言葉を止めた。



 何度かテレビで見たことのある総統は、テレビで見たそのままだった。それは今回も画面を通しているから当然なのだが、彼の醸し出す雰囲気に勇ましさがあるのは、テレビだからしている演技ではないようだ。



「…」

 コウヤは無言でリコウの後ろに隠れた。



 コウヤよりもリコウの方が背が高いので、隠れられる。



『…コウヤ君?』

 総統は間の抜けた声を上げた。



「…久しぶりです。」

 コウヤは観念したようにコウヤはリコウの後ろから出てきた。



『君が少佐と合流したというのは聞いていた。キリのいい場所で戻るといいだろう。』

 総統は気を遣うようにコウヤに言った。



「俺に気は遣わないでいいですよ。」



『そうはいかない。公表された今、戦士の全員が危険だ。君には攫われた者の救助に出て欲しいが、シンタロウ君も…少佐もいる。』

 総統はコウヤのことを心配しているようだ。











「遅れて悪い。」

 ウィンクラー少佐が操舵室に飛び込むように入ってきた。



 心なしか、顔色が悪かった。

 初めて会った時から顔色が悪いと思っていたが、それよりも悪く見える。



「シンタロウ。レイモンドさんから連絡が入っている。」

 コウヤはウィンクラー少佐を見て目を輝かせた。



『シンタロウ君…いや、少佐。どうにか連絡をつけることができたが、こちらは君が思っているように完全に蚊帳の外に置きに来ている。』

 総統は表情を引き締めてウィンクラー少佐に話し始めた。



「直ぐに連絡に出られず申し訳ありません。…そのことで、総統閣下に頼みがあります。」

 ウィンクラー少佐は姿勢を正し、艦長席の前に立った。



『頼み?』



「はい。連絡を取って、協力を仰ぎたい人がいます。」

 ウィンクラー少佐は周りを見渡した。



「この操舵室にいる人は安全です。」

 オペレータがウィンクラー少佐とモニターに映る総統を見て言った。



『こっちも大丈夫だ。』

 総統も周りを見渡して言った。







「…タナ・リードに連絡を取って、もしくは連絡手段を教えていただきたいと…」

 ウィンクラー少佐の発言に総統とコウヤが目を見開いて驚いていた。







『タナだと!?』

 総統は声を荒げた。



「本気かシンタロウ!?」

 コウヤも声を荒げていた。



「本気だ。ネイトラルは絶対に協力してくれない。地連もだ。ゼウス共和国だけでは限界がある。」

 ウィンクラー少佐は二人の様子は想定していたことのようで表情を変えずに言った。



 リコウはその「タナ・リード」という名前を知らなかった。

 コウヤと総統は知っているようだが、操舵室にいる面々は誰も知らないようだ。



『…あいつが協力するか?』



「連絡を取る価値はあります。それに、彼の持っている人脈は侮れないです。」



 ウィンクラー少佐に根負けしたのか、総統は諦めたようにため息をついた。





『…第17ドームに行っている。昔目をかけてやった人物が食糧生産施設を持っていることから、そこからゼウス共和国復興のためにノウハウを学ぼうという試みで交渉に行ったらしい。そのままだと聞いている。』

 総統はそのタナ・リードの居場所は把握しているらしく、滞ることなく話した。



「ありがとうございます。これからの進路については…」

 ウィンクラー少佐が話そうとしたとき



「空賊だ。シンタロウ。」

 コウヤが何かに気付いたように止めた。



 コウヤの発言の後にレーダーが、何かを捕えたようで警告音が鳴り響いた。



『後でいい。私は君を信用している。血は繋がらなくとも、我が息子たちだ。』

 総統はウィンクラー少佐達を見て言った。



『では、また連絡をする。』

 総統の言葉にウィンクラー少佐を始めとした軍人は敬礼をした。



 モニターは元通り、外の様子を映し出した。



「空賊対応は、どうしますか?」

 オペレータと操舵士がウィンクラー少佐を期待した目で見ている。



「コウヤ。できるか?」

 ウィンクラー少佐はコウヤを見た。



「どっちだ?」



「遠隔操作か、お前がここで指示だ。」

 ウィンクラー少佐は艦長の席を指した。



「え?俺がドールに乗るんじゃないのか?」



「お前は俺が保護すべき人間で、軍人じゃない。さっきの総統閣下の様子を見てもお前を心配している。」

 ウィンクラー少佐はコウヤに近寄り肩を叩いた。



「俺が空賊如きに負けると思うか?」

 ウィンクラー少佐は挑むような目をコウヤに向けていた。



「…なら、俺がドールに乗って遠隔操作を試みる。」

 コウヤはウィンクラー少佐の肩を押して、艦長席を顎で指した。



「周りを見ていればわかる。あの席はお前が座るべきだと。」



「なら、ここで遠隔操作を試み…」

 ウィンクラー少佐は言いかけた時に何かに気付いた。



 先ほどから二人の話に出てくる遠隔操作の意味は分かるが、意図するものがリコウはわからずにいた。

 首を傾げて訊いているのはリコウだけではなかった。



「コウヤ。空賊だけか?」

 ウィンクラー少佐はリコウを見た。



 リコウは急に視線を向けられたことに驚いた。



 コウヤはウィンクラー少佐の意図を読み取ったのか、リコウの肩に手を置いた。



 その途端、またリコウの目の前に光の糸が見えた。



 不思議と乗っている戦艦の外に続いている糸に目を向けられる。



 周りの風景は知らないが、糸を辿ることは出来る。



 本当に不思議な感覚だ。



 光の糸は、戦艦の遠くに繋がっていた。そして、何かを追っているように動いていた。



「…テロリストがいる。誰かを追いかけている。」

 コウヤはリコウから手を離してウィンクラー少佐を見た。



 コウヤの手が離れた瞬間、リコウの視界は元に戻った。



「追われている奴を助ける。おそらく戦士だ。」

 ウィンクラー少佐はコウヤに頷いて周りの軍人を見た。



「格納庫に連絡を入れろ。俺がドールに乗る。操舵については基本的にコウヤの指示に従え。万一の時はルーカス中尉の言う通りに動け。」

 ウィンクラー少佐はコウヤに頷いて操舵室から出て行った。



 コウヤは仕方なさそうな顔をしていたが、やはり不安そうだった。



「先輩。ウィンクラー少佐は負けないと思いますよ。」

 リコウは何となくコウヤを元気づけるように言った。



「あいつが強いのは知っているし、絶対に負けないと思う。」

 コウヤは操舵室にいる軍人たちを見た。



「…ヤクシジ。手伝えよ。お前がいないと俺はテロリストを察知できない。」

 コウヤはリコウの肩に再び手を置いた。



「…わかっています。」

 リコウは頭の中で



 《選べないじゃん》

 とマックスに悪態をついた。











 地球の表面を飛ぶ小型飛行船と、数機の戦闘機があった。



 戦闘機は飛行船を追っかけている。



 飛行船は不安定に飛んでいる。いつ撃ち落とされてもおかしくないが、戦闘機は飛行船を撃ち落とそうとしなかった。近づいて乗り込もうと試みているのか、挟もうとしていた。



 飛行船の中では、ユイとアリアが必死な表情で操舵をしていた。



「ユイ操作できる?」

 アリアは顔を真っ赤にして何かに集中しているユイに話しかけた。



「アリア。できない。これ、できないよ。私、察知できない。」

 ユイは赤かった顔を真っ青にして言った。



「どこか…このままだと捕まる。」

 アリアは辺りを見渡して隠れられる場所か避難できる場所を探していた。



「…アリア。近くに戦艦がある。…誰か乗っている。」

 ユイは何かに気付いて明るい表情をした。



「誰かって、みんなの中の?」



「うん。…でも、今集中力が切れてそれは察知できない。」

 ユイは疲れ果てた顔をしていた。



 アリアは心配そうにユイを見ていたが、力強く頷いた。

「わかった。…その戦艦まで飛ばすから。」

 アリアはユイの示した方向に燃料を気にすることなく飛行船を飛ばした。



 二人の乗る小型飛行船の後ろには数機の戦闘機と、それの母艦のような戦艦があった。











 《コウノ。止まれ》

 名前も憶えていない人の声が蘇った。



 問答無用で引いた引き金、彼の最期の顔が浮かぶ。



 久しぶりに身に着けるドール用のスーツと神経接続の作業が、シンタロウの嫌な記憶を呼び起こした。



『大丈夫ですか?少佐。』

 シンタロウの様子を察したのか、ドールの整備士が通信で尋ねた。



「あ、…ああ。大丈夫だ。調整は飛びながらする。」

 シンタロウは何かを払うように首を振ると、前のモニターを見た。



『おい。シンタロウ。』



「…待機場所にいるように指示されなかったか?」

 シンタロウは声を聞いてため息をついた。



 整備士の通信の元にマックスもいるようで、整備士を押しのけたようだ。



『これはお前の意地の問題じゃない。何か異変があったら教えろ。テロリスト対策として必要事項だ。』

 マックスは必要事項ということを強調して言った。



「わかった。」



『もしいても、アズマは殺すな。』

 マックスはそれが言いたかったようだ。



「…まだ対策を立ててないから安心しろ。」

 シンタロウの言葉にマックスは安心したように息を吐く音が聞こえた。



 シンタロウは慣れたようにドールを操作し、出撃体勢を整えた。

「開けてくれ。出る。」

 シンタロウは出撃口の方向を見て、操舵室に通信を繋げた。





『シンタロウ。戦闘機と武装装備のない飛行船だ。そして、戦闘機の母艦が近くにいる。』

 操舵室の通信からコウヤの声が聞こえた。



「わかった。詳しいことが分かったらまた連絡頼む。あと、操作できそうだったらいつでもしてくれ。こっちは対応する。」



『わかった。』

 コウヤの声とともに、出撃口が開いた。



「…では、ウィンクラー少佐。出撃する。」

 シンタロウは滑り出すように戦艦から飛び出した。



 彼の乗るドールはグレーで、目立つ派手さがないドールだった。



 グレーのドールは慣れた様子で空中を飛び、目的地に向かった。







 戦艦直属の整備士とマックスは並んで顔を顰めていた。



「マーズ博士。何か?」

 整備士はマックスの表情に戸惑っていた。



「お前は知っていたのか?」



 マックスの問いに整備士は首を振った。



「知りませんでしたけど、きっと適合率は高いと思っていたので、少佐の場合は何も驚かないつもりです。」

 整備士はドール管理用の端末に映し出された数値を見て言った。



「…このこと、外部には漏らすな。」

 マックスは映し出された数値を指して言った。



「え?…はい。」

 整備士は驚いた表情をしたが、立場上扱う機密が多いのだろう。納得した様子で頷いた。





「マーズ博士!!」

 マックスの元にイジーが走ってきた。



「イジーか。」

 マックスはイジーを確認すると彼女が格納庫に入ったのを確認して扉を閉めた。



「マーズ博士。あなたを待機場所に居させるように少佐から…」



「イジー。お前の心配は当たっていた。」

 マックスは端末に映し出された数値を指して言った。



 イジーはマックスの指した画面を見た。



「…これは…」

 イジーは確認すると絶句した。



「適合率100%を超えている。」



「…だって前は60くらいだって…」

 イジーは困ったような顔をした。



「イジー。他の戦士も大事だが、…コウヤとリコウ、そしてシンタロウは絶対にテロリストに渡すな。」

 マックスはイジーを真っすぐ見て言った。イジーは無言で頷いた。



「テロリストの後ろにいるのはドールプログラムだ。そして、狙いは…ネットワークの乗っ取りだ。」

 マックスは最後を強調して言った。



「…乗っ取り…?」

 イジーと整備士は首を傾げていた。



「ドールプログラムは、テロリストを使って、また洗脳の世界を作り出すつもりだ。」

 マックスは苦い顔をした。



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