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~糸から外れて~無力な鍵

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 沢山のことが起こりすぎて現実なのか夢なのかわからなくなっていた。

 それは、リコウだけでなく、数日前まで気楽で希望にあふれた大学生活を送っていた他の学生もそうだろう。



「他の大学の人は無事かな…」

 リコウはこの戦艦に乗り込んだのが自分の大学の学生だけなことから、他大学の大量の学生たちを心配していた。



「大丈夫だった?リコウ君。」

 他の学生たちのいる部屋に戻されたリコウにルリは走り寄ってきた。



「大丈夫。そっちは…何かあったの?」

 リコウは他の学生たちの顔色がよくないことに気付いた。



「いや、ただ事情聴取されたんだけど…」

 どうやら根掘り葉掘り聞かれて参っているようだ。



「誰に事情聴取された?」



「何か男の軍人だった。下っ端だと思う。」



「俺なんかウィンクラー少佐だぜ。」



「いいなー」



 どうやらウィンクラー少佐もじきじき事情聴取を行ったようだ。





「リコウ君は誰だった?あの女?」

 ルリは詰め寄るように訊いた。



 あの女呼ばわりは少し如何なものかと思って苦笑いしてしまった。



 リコウはイジーが淡々と自分に興味がないと言っていたことを思い出して少し寂しいような安心したような気になったのを思い出した。



「どんな話したの?」

 ルリはさらに食って掛かった。



 この子、こんな子だったっけ?

 と思ったが、非常事態だから仕方ないのだろうと思った。



「イジーさんはウィンクラー少佐と深い関係みたいだった。」

 リコウはあの二人の間にある特別な関係性を思い出した。



「あ、そうなの。」

 ルリの表情はがらりと変わった。



「確かに、当然だよね。…だって、可愛らしい人だったし、ウィンクラー少佐って、強いけど知的な感じでかっこいいもんね。」

 いつもの優し気なルリだった。



「なあ、ヤクシジ。」

 ルリと話している途中で、一人の学生に話しかけられた。



 話しかけてきたのは、確か従軍経験のあると言っていた青年だ。

 体つきも逞しく、いかにも強そうだった。



「何だ?」



「お前の兄が、テロリストだったんだよな。」

 青年の言葉は直球だった。



「…そうだ。兄さんが、そうだった。」

 リコウはテロリストという言葉を言うのが嫌で、肯定の言葉だけで頷いた。



「お前は大丈夫なのか?仲間でないのか?」

 青年の言葉で、他の避難した学生たちも一斉にリコウを見た。



「ちょっと、みんな。リコウ君だって危ない目に遭ったのに」

 ルリがみんなの視線からリコウを守るように立ちはだかった。



「それはこいつの兄貴だってそうだっただろ。信用できない。」

 一人の学生が言った。



「そうだ。だいたいお前がマーズ博士を連れていた理由もわからない。」

 他の学生が言った。





「…俺は、ゼウス共和国の生まれだ。マックスとは、マーズ博士とは同郷だ。だから仲良くなった。」

 リコウは自分を取り囲む学生たちを見て言った。



 その言葉に学生たちは目を見開いた。



「ゼウス共和国って…なんでお前の兄貴は地連軍に」



「兄さんは、ゼウス共和国にいたときからロッド中佐に憧れていた。その気持が大きくて、簡単に祖国を捨てられた。」



 リコウがゼウス共和国の出身であったことは、学生たちへテロリストの協力者の疑いを和らげるのに効果的だった。



 空賊ならまだしも、テロリストは狂信的に「フィーネの戦士」を崇拝している。



 他の戦士ならまだしも、ロッド中佐はゼウス共和国の兵士を大量に殺している。

 彼の力を羨むことはあっても、犠牲に対する恨みはそう簡単に消えない。



「リコウ君は、兄とは関係ない。」

 学生たちを沈めるような声がかかった。



 その声の主を確認してリコウやルリを始めとした全員は緊張した。









「彼は我々に協力してくれる。」

 声の主のウィンクラー少佐は学生たち一人一人見て言った。



 視線を向けられた学生は一人一人息を呑んでいた。



 ウィンクラー少佐の横にはコウヤが立っていた。



「シンタロウ。あまり学生たちを緊張させないでくれ。お前怖い。」

 コウヤはウィンクラー少佐の様子を見て苦笑いをした。



「そうならざる得ない状況だから仕方ない。」

 コウヤに向かってウィンクラー少佐は困ったよう肩をすくめて言った。



 やはり、付き合いが長いだけあって二人は信頼し合っているような空気だった。



「あの、ハヤセさん。」

 リコウに声をかけた学生がコウヤに声をかけた。



「なんだい?そんなに俺らの作戦が気になるか?ジュリオ・ドレイク君」

 コウヤは学生の聞きたいことが分かっていたようで、余裕を持った表情を見せていた。





「…はい。」

 ジュリオと呼ばれた学生は出鼻をくじかれたように質問した時の勢いを失くしていた。



「これからのことは教えられるけれど、過去のことは言えないことが多い。悪いがこれは俺らの意志とは関係なしに、上のお偉いさんが決めたことだ。」

 コウヤは困ったような素振りをした。



 ジュリオはコウヤの解答に黙った。流石に密約や機密の匂いがすることが分かったようだ。リコウも何となく分かった。









「君たちの滞在する部屋、施設については事情聴取の時に話しを聞いたはずだ。」

 ウィンクラー少佐はコウヤ達の話が落ち着いたのを見て、学生全員に向かって話し始めた。



「完全中立ドームに君たちを下ろそうと思っている。第16ドームに向かう。そこで滞在費等はこちらで一定期間分出すが、連絡移動については向こうに着いてから各国の機関を使ってくれ。こちらからも手配はする予定だが、移動先についてはギリギリまで機密にする。君たちも外部に漏らさないでほしい。」

 ウィンクラー少佐の説明に学生たちの数人は首を傾げた。



「この戦艦には、命は狙われていないがテロリストの標的が四人乗っている。一緒に戦艦に乗っている間は下手に襲われることは無いだろうけれど、目的地に回り込まれる恐れがある。第三ドームの惨劇を経験して分かるだろうが、奴らは残酷だ。」

 ウィンクラー少佐の説明で状況が分かったのか、学生たちは顔を青くした。



「追加で連絡することがあるが、これから通る空域は、空賊が多数出ている。戦闘態勢に入るかもしれないが、この戦艦が沈むことは絶対にない。慌てずに待機場所に控えてくれ。」

 ウィンクラー少佐は、補足のようにとても大事なことを言った気がした。



 リコウを始めとしたが学生たちは納得したように頷いたが、言葉の意味を理解するのに時間を置いて、驚いていた。



「絶対に沈まないって…自信過剰だな。」

 コウヤはため息をついて呆れたようにウィンクラー少佐に言った。



「この戦艦には、とりあえずドールを数体乗せている。」

 ウィンクラー少佐はコウヤを顎で指して言った。



「俺に乗れと?」

 コウヤは困ったようにウィンクラー少佐に訊いたが、少佐は口元に笑みを浮かべるだけだった。





「君たちは、悲劇を経験した。それによる心の傷は大きい。」

 ウィンクラー少佐は学生たちを見渡しながら言った。



「この戦艦の乗っている軍属と違い、君たちは一般人だ。戦艦に乗っている以上、艦長の言うことには従ってもらうが、君たちは階級を気にして接する必要は無い。俺は知っているだろうが、君たちと年齢も変わらない。」

 ウィンクラー少佐は労わるように学生たちを見ていた。

 リコウは、彼の冷たい目に人間らしい優しさが見えたのがとても意外だった。



「乗組員への接し方で精神を摩耗する必要は無い。それだけは言っておく。」



 ウィンクラー少佐は連絡事項が済んだのか、さっさと部屋を出て行った。









「結構気を遣ってくれているんだな。」

 ジュリオはウィンクラー少佐がいなくなって緊張が解けたのか、強張っていた肩の力を抜きながら言っていた。



「シンタロウ…ウィンクラー少佐もドームが襲撃されて軍の戦艦に避難した経験があるから、気持ちはよくわかるんだ。」

 コウヤは昔を思い出しように目を細めて言った。



「…あの、フィーネの戦士なんですよね。どうして…軍に入らずにいたんですか?」

 ジュリオと呼ばれた生徒は不思議そうにコウヤを見ていた。





「…いや、俺も実は軍属だったんだ。君たちと同じように住んでいたドームが襲撃されて、戦艦に避難して、そしてその時に軍に志願した。」

 コウヤは何でもないことのように話した。どうやらこれは機密ではないようだ。



「戦艦に…では、どうして残らなかったんですか?」

 ジュリオはどうやらコウヤには敬語で通すつもりのようだ。



「俺の周りはとても優秀な軍人が多かったから、やっていける自信が無かったからな。」

 コウヤは遠い目をしていた。



「その避難した時って、ウィンクラー少佐も一緒だったんですか?」

 ジュリオはどうやらウィンクラー少佐とコウヤの関係が気になるようだ。ただの戦友よりも旧友に近い二人の関係が見えているのだろう。



「ああ。その時はまだウィンクラーじゃなかった。有名だろうけど、あいつは昔「コウノ」だった。俺と同じドームに住んでいる俺の親友だった。」

 コウヤはすらすらと話し始めた。だが、彼が話しているウィンクラー少佐のことは公表されていることであるので、その気になれば誰でも知れることだ。





「じゃあ、古い仲なんですね。普通に授業を受けている少佐は想像できないな。」

 ジュリオは授業を受けているウィンクラー少佐を想像できないのか顔を顰めていた。



「まあ、彼も君たちと同じときがあったということだ。必要以上を気を張る必要は無い。」

 コウヤは自分も気を張られている人物であるというのに、どの口が言うんだという発言をした。



 ジュリオの他にも何人かの学生がコウヤに質問したそうな顔をしていた。





「リコウ君。少しここから出よう。」

 ルリは質問攻めされているコウヤを見て、チャンスだと思ったのだろうか、リコウの手を引き、部屋の外に引きずり出した。



「え?っちょっと」

 リコウは驚きながらも逆らわずに部屋から出て行った。



 何となく質問攻めされているコウヤに睨まれた気がした。











「気を遣っているんだな。昔のお前を思い出す。少佐。」

 マックスは廊下を歩いているシンタロウに笑いかけた。



「長い下積みだったからな。」

 シンタロウは苦笑いをして振り向いた。



 マックスは周りを見渡した。

「何となくだけど、あの学生たちの何人かは軍に入るぞ。」

 声を潜めてシンタロウに言った。



「それくらい俺だってわかる。何て言ったって、俺は軍の広告塔だからな。」

 シンタロウは自嘲気味に言った。



「ネイトラルとは連絡取れたのか?」



「全く取れない。会ったことないのに俺はナイト・アスールさんに警戒されているみたいなんだ。」

 シンタロウは参ったような顔をした。



「俺の予想だと、ディア・アスールは十中八九ネイトラルから出ている。あの女が大人しく国に収まるとは思えないし、あの親子仲だ。」

 マックスはディアに対して苦い思い出があるようで、顔を顰めた。



「フィーネ戦闘員の良心が一緒にいるから大丈夫だろ。」

 シンタロウはマックスの様子を見て苦笑いをした。



「ハクト・ニシハラがか?あいつのどこが良心だ?あいつはとんでもないエゴイストだろ。」

 マックスは首を全力で振って否定した。どうやらハクトの人物評価は良くないようだ。





「散々な言われようだな。」



「当然だ。言っとくが、俺の中での人物評価でまともなのはジョウ・ミコトぐらいだからな。戦闘員では…」

 マックスは最後に付け足すように言った。



「耳が痛いな…」

 シンタロウは情けなさそうに笑ったが、マックスを心配そうに見た。



「…先生は何か言っていたか?」

 シンタロウは気を遣うように慎重な様子でマックスに訊いた。



「殺されることはないからって…俺を逃がしてくれた。」

 マックスは俯いたが、顔を上げてシンタロウを真っすぐ見た。



「そうか。…総統は先生が攫われたことによって神経質になっている。」



「レイモンド・ウィンクラーか。…なあ、あいつって変態じゃないのか?俺はつくづくそう思うんだが。」

 マックスは現総統に対しての人物評価も中々なものの様で首を傾げていた。



「…とりあえず、父だからな。深くは言わない。」

 シンタロウは、現在の養父にあたるレイモンド・ウィンクラー総統閣下を思い浮かべて苦笑いをした。

 彼の中の人物評価もマックスに近いものがあるようだ。



「やっぱりお前も変態だと思っているんだな。」

 マックスはシンタロウの様子を見て納得したように頷いた。



「…最近妹生まれただろ?俺たちとは血は繋がっていないが、戸籍上の妹になるんだが…」

 レイモンド・ウィンクラー総統は、3年前の作戦終了後、総統に就いて直ぐに結婚した。それまで頑なに独身を貫いてきたが、やはり支えてくれる存在は必要だったようだ。

 その結婚相手との間に1年半ほど前に女の子が生まれた。





「…「レイ」って名づけようとして喧嘩になっていた。」

 シンタロウは夫婦げんかの様子を思い出したのか、頭を抱えた。



「…」

 マックスは気まずそうに目を逸らした。









 ルリはとてもご機嫌だった。正直言って、命からがら逃げていた学生達とは違った。彼女は目の前でリコウの教授が亡くなっているはずなのに元気すぎる。



 現実感が無いからだと思えるが、リコウも現実を見ないでいたいと思うと同時に思考を慌ただしくして紛らわせたいという気持ちがあった。



「ルリは心配じゃないの?」

 リコウは聞きたかったことを訊いた。



「何が?」

 ルリは首を傾げていた。



「だって…あんなに死んだんだ。俺の目の前でも、ルリの前でも…」

 リコウはあっけらかんとしているルリを見て更に心配になった。



 ルリは何かに気付いたようで笑った。



「大丈夫なの。お店の人もみんな生きているって。連絡取れたし。心配してくれたんだね。リコウ君の方が大変なのに…」

 ルリはリコウの質問が嬉しかったのか、はにかみながら言った。



「あ…そうなんだ。よかったね。」

 リコウは拍子抜けしたが、正直すごく安心した。



「リコウ君。これからすごく大変なんでしょ?」

 ルリは上目遣いでリコウを見た。



 ルリの言っていることは本当だった。

 テロリストに対抗するにはリコウが必要だった。

 それだけならいいが、テロリストの中にリコウの兄がいる。





「…そうだと思うけど、俺が兄さんを止めないといけないから。」

 リコウはマックスの言葉で気付いた自分の本心を、自分に言い聞かせるように言った。



「…私、リコウ君に協力するよ。…なんなら軍に志願しちゃうよ。」

 ルリはリコウを見上げて、ひたむきな様子で言った。





「それはお勧めしません。」

 話し込む二人の間に冷たい言葉がかかった。



 振り向くとイジーがいた。



「失礼しました。ただ、ここから先は関係者以外立ち入り禁止なので、それをわかっていただきたく思いました。」

 イジーは機械的にルリとリコウに礼をした。



「お勧めしないって…仮にも軍人のあなたが?」

 ルリはイジーに軽く敵意を持ったようだ。



「あまり言うべきではないのでしょうけど、あなたは軍人でなくても充分やっていける人間です。まして、ご家族がいるのなら…」

 イジーはルリを見た。



「家族は、私の決断を尊重してくれます。関係ないのにそこまで言われることは無いと思います。」

 ルリはイジーを睨んだ。



 睨まれたことにイジーは臆することなかった。

 リコウは臆した。



「…彼を支えることは、軍に居なくてもできます。命があって、支えられるものでもあるのですよ。」

 イジーはルリを見て、微笑んだ。



 言っていることがルリの心に響くことだったようで、彼女はイジーに向けていた敵意を解いた表情をした。



「…命があって…」



「そうです。では、これ以上先は立ち入りしないでくださいね。」

 イジーは二人を追い返すように、リコウ達が向いている方と逆方向を指し示して、引き返すように促した。



「イジーさんは、ウィンクラー少佐を支えているんですよね。」

 ルリはリコウがこっそり教えたことをよりによって本人に言った。



 リコウは思わずルリの口を塞ごうかと思ったが、イジーは気にする様子が無かった。





「支えている…というのでしょうか。でも、彼の支えにはなっていると思います。」



「同じ軍にいて…ですよね。」

 何となくルリが言いたいことが分かった気がした。



「ええ。ですが、私と彼が出会った時は、もうお互い軍属で、後戻りできない状況でした。」

 イジーはその時のことを思い出したのか、苦笑いをした。



「後戻りできない?」

 リコウがイジーの言ったことを繰り返し言った。



「ええ。彼と会った時、詳しい状況は言えませんが、お互いが命を狙われている状況でした。私たちは二人で逃げるしかなかったんです。」

 イジーは、ルリもリコウも想像ができない奥行きを思わせる表情を見せた。



「さて、折角の時間です。どうぞ、彼女の滞在する部屋なら二人でいられるはずです。」

 イジーはルリを見て微笑んだ。





 彼女に促されるまま立ち入り禁止場所から引き返して歩いていると、ルリがリコウを見た。



「リコウ君。…あの、イジーさんも言っていたし、私が滞在する予定の部屋、行かない?」

 ルリは少し照れた表情をしていた。



「え…」

 いくらリコウといえども、そんなこと言われたら変な期待をしてしまうのと同時に変に勘ぐったりもしてしまう。



 少し考えて、リコウはルリを見た。



 彼女に好意を持たれているような気はしているし、自分もまんざらでないはずだし…



「…う」



「ヤクシジ!!」

 リコウが了解の返事をしようとしたら廊下の向こうからコウヤが走ってきた。



「せ…先輩?」



「ルリちゃん。彼借りるね。」

 コウヤはルリの横にいるリコウを問答無用で引っ張った。





 ルリはコウヤを睨んでいたが、正直リコウは助かったと思っていた。



「先輩どうしたんですか?」

 リコウは慌てた様子で自分の手を引くコウヤを見た。



「もうすぐしたら艦内放送がかかると思うけれど、空賊だ。」



「え?」

 リコウはそもそも何で分かるのか聞きたかったが、廊下を走っていると艦内放送がかかり始めたから訊くのを止めた。











「…これはどういうことだ?」

 オクシア・バティに案内された金髪の女性は、彼が差す人物を見て青筋を立てていた。



「どういうって…教授ですよ。」

 オクシアは自分のいる農学部の教授を指差して言った。



「違う。その隣にいるやつだ。」

 彼女が言っているのは、教授の隣にいる服装は汚れた作業着だが、滲み出る育ちと品の良さが印象的なロマンスグレーの髪をオールバックにした初老の男を指していた。

 長い顎髭はきちんと整えられていて、正直このドームにやこの農学部の学生が滞在する宿泊施設には不釣り合いだった。



 彼は、食糧確保の術を学ぶべく、ゼウス共和国側から来た者だ。



「おや、これはこれはレイラちゃん。」

 男は彼女を知っているようで、オクシアの聞いていなかった彼女の名前を言った。



「知り合いですか?」

 オクシアは男の名前を思い出そうと記憶を辿った。



「タナ・リード…」

 オクシアが記憶を辿る前に金髪の女性は彼の名前を言った。



「ははは。ジョウ君から聞いていないのか?私が今どこにいるのか。」

 タナ・リードはレイラを見て懐かしそうに笑った。



 話について行けない教授とオクシアとその場に居合わせた学生たちはポカンとしていた。



「ああ、失礼皆の衆。」

 タナ・リードは、ポカンとしているオクシア達を見て立ち上がり礼をした。



「彼女は、私の古い知り合いで「フィーネの戦士」の一人、レイラ・ヘッセだ。」

 タナ・リードは金髪の女性、レイラを指して言った。



 レイラは彼の紹介に目を見開いて驚いて、直ぐにタナ・リードを睨んだ。



「お前。」

 どうやらバラされたことに対して怒りを露わにしているようだ。



「いいだろう。別に。」

 タナ・リードはレイラを見て笑っていた。



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