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2章 嫌われ者は家を出る
第14話 ※
しおりを挟む(曲がりなりにも使用人の主人であるエルと親しくしていた僕の顔が分からないだと?)
自分もこの使用人を覚えていなかったのでなんとも言えないが流石にイラッときて顔を顰める。
僕が睨むだけで何も抵抗しないのを見てこんなヒョロガリは放っておいても問題ないと判断したのか掴んでいた髪を離してその場に僕のことを落とす。身体中にはしる痛みに悶え苦しんでいると顎を掴まれ、顔を無理矢理上げさせられた。
「っにしてもお前綺麗な顔してんなあ。下手すればヴィエルジュ様より綺麗なぐらいだ。」
そう言うと僕の顔をじろじろと舐めるように見る。思ってもいないくせに。気持ち悪い。それに、勝手に僕とエルを比べるなんてエルにも僕にも失礼だ。
思わぬところで味わうことになってしまった不快感をできるだけ感じないようにと必死に目を逸らしているとふと、使用人が名案だとでも言うように自身の掌を握り拳でポンっと叩く。
「侵入者だし、俺が味見しても問題ないよな?」
そう言って舌なめずりをした。
此奴は何を言っているのだ。もし此奴が人肉を好んで食べるやつだったとして痩せ細っている僕は味見したいほど美味しいものなのだろうか。食べれるのなんて精々皮くらいだろう。
混乱したまま考え続けているといつの間にか使用人が破れた僕の制服のボタンをぷちぷちと外し始めた。
(は?此奴、本当に僕を食べる気なのか?)
目の前に広がる訳の分からない状態に身体も硬直して動かず、頭までもフリーズしてしまって今の自分の状況がよく理解できない。僕が抵抗しない(できない)のをいいことにシャツのボタンを全て取り終えた使用人は僕のズボンのベルトにまで手をかけ始めた。
カチャカチャという音で意識が段々と現実に引き戻される。はっとして男が手を掛ける先を見るとズボンは既に膝ぐらいまで下ろされて上下とも、身にまとっているのは下着だけになっていた。病人のように白い肌に残る生々しい痣を見てようやくかなりまずい状況まできてしまっていることを理解した。
サーッと全身の血の気がひく。そう、混乱してすっかり忘れていたが此奴は先程僕のことを味見するとだけ言っていた。もしや、味見とは僕が思っていた意味とは違うのではないだろうか。そう、例えば性的な……。そう考え始めて思わず身震いする。
(この状況はまずい…!どうすれば、、、)
正直体格的な話からいって抵抗したところで僕に勝ち目はない。が、だからといって他に方法がある訳でもない。腹を括った僕は足を掴む男の手が緩んだタイミングで頭突きをした。
不意打ちが効いたのか緩んでいた使用人の手が僕の身体から完全に離れた。その隙におでこを含めた全身の痛みに耐えながら這いつくばって必死に使用人から離れようとする。が、そんな一瞬の隙で逃げられるはずもなくすぐに捕まって仰向けに転がされてしまった。
そのまま上に跨り、僕の両手を掴むと片手で僕の頭の上に固定する。
「ってえなぁ?侵入者の分際でいっちょ前に抵抗すんのかよ。あ"ぁ"ん?」
(まだこいつは僕を侵入者だと?何故気づかない?)
いっその事僕だと気づけば普段の様子からしてやめるだろうと震えながらも口を開こうとする。しかし、
(声が出ない……!!)
普段受けるような暴力や暴言に対してとはまた違う恐怖に言葉が出ない。じわっと視界が滲む。それでもなんとか助けを呼ぼうと口を必死に動かした。
そんな僕に痺れを切らしたのか、チッという舌打ちの音と同時に掴まれた手に走る痛みに思わず顔を顰める。
するといつの間にか肌着の下に侵入していたもう片方の手によって土で汚れた肌着が捲られ、薄いピンク色の乳首が露になった。ねっとりと絡みつく視線に手で隠そうとも拘束されているのでうつ伏せになろうと身をよじる。
しかし、そんな僕の抵抗は虚しくふたつの内の片方に顔を近づけだと思うとぺろりと舌でそれを舐めた。
──────ゾゾゾゾッ
あまりの気持ち悪さに全身に悪寒が走り、目に溜まっていた涙がポロリと落ちる。僕の反応は一切気にしていないのか顔も上げずに一心不乱に舐めたり吸ったりする様子を見てさらに絶望した。
自分の身体が他人に弄られているのが見たくなくてぎゅっと目を瞑る。
(っシア。頼むから早く戻ってきてくれ。)
中々戻って来ないシアに心の中で助けを求める。すると男が顔を僕の乳首から離したので逃げられないかと恐る恐る薄目で様子を伺おうとした。
しかし、僕のその目で使用人の姿を確認した瞬間、ものすごい風が吹いた。あまりの強さに薄く開いた目をぎゅっと瞑る。すると風が吹く同時に両手が解放され、僕の上にあった気配が無くなっていたのがわかった。ほっとした次の瞬間、ドンッという何かが叩きつけられるような音が聞こえた。
それが怖くて目を開けられずにいると暖かい布が掛けられてふわっと身体が浮いた。恐る恐る目を開けるとそこには僕を抱き抱えて目に溢れんばかりの涙を溜めたシアがいた。
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