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第7話
しおりを挟む地獄のような空気は部長がいつも通り部活を始める声でようやく終わった。耳にタコができちゃうほど聞いた注意事項と今日作るくっきーの説明を聞いてそれぞれの班で作り始める。
こねこねした生地をいくつかに分けて抹茶やココアパウダー、食紅などを入れてカラフルにしてから生地をねかせるために冷蔵庫に入れてタイマーをつける。そうするとしばらくは待つだけなのでそれぞれテキトーな椅子に座っておしゃべりをし始めた。
(今がチャンスっ!)
普段ならそのまま班の子たちと喋るかほかの班に突撃しに行くが、本日、目的のある僕はささっと食器棚からポットとカップを取り出してお気に入りのいちごの香りがする紅茶を入れた。それらをトレーにのせて慎重に運ぶ。
「ねぇ、僕とお茶しない?」
首をこてんと傾げて誘うとゆいちゃんはこれでもかというほど目を見開いて頬を赤く染めた。
— ♡ — ♡ — ♡ — ♡ — ♡ — ♡ — ♡ —
「ぁ…っあの!あ、ぁまみや先輩、こっ…紅茶!そっ、そのー………飲みにくくないでっ、す…か…………?」
「んぅ?ぜんぜん平気だよ~!あと、天宮先輩じゃなくて美緒ってよんでぇ?」
「ぁっ、はぃ……。」
小さく返事をするとゆいちゃんは僕の膝の間で縮こまった。
そう、今日は絶対にゆいちゃんと仲良くなろうと思って話しかけたのだ。戸惑って逃げようとするゆいちゃんをつかまえ………抱きしめて引き寄せることで誘導して僕の膝の間にストンと座らせた。
目を泳がせながら「なっ、なんでここ………。」と聞いてくるゆいちゃんに「だってゆいちゃん逃げちゃうんだもん。」と言って頬を膨らまして、ぎゅーっと背中に抱きつきすりすりするとなんだか大人しくなってしまった。
と、まあこんなふうに"ゆいちゃんと仲良しさんになっちゃおう大作戦"決行中なのだ。それにしても…
「ゆいちゃんかあいいねぇ」
そう言って、ゆいちゃんの首元に顔を埋める。あまり言われ慣れていなくてどう反応していいのか分からないゆいちゃんが言葉を探して目を泳がせる。
実際世間一般的に見てゆいちゃんがすごく可愛いとなることはあまりないだろう。彼は良くも悪くも平凡だ。でも、そこがいい!
背がかなり低い僕より少し高いくらいの身長とチョコレート色の癖のない髪。少し童顔で際立ったところがない顔のパーツは逆に整っていると言える。
「あっ、ぁま………み、お先輩のほうが、ぁ…かっ、、かわ、いすぎます…。」
ようやくぴったりの返事を見つけたのかそう言いながら微かに震えるゆいちゃんの首筋は真っ赤だ。かわいらしくて思わずんふふっと笑うとくすぐったかったのかゆいちゃんはビクッと跳ねた。かわいい。
「ぁ、あの……っす、少しくすぐったい…です…」
少し身をよじって僕の頭があるのと逆方向に顔を向けた。僕は首筋から顔を離してそれをじーっと見つめる。
(んぅー、やっぱりお化粧がとっても映えそう)
僕の視線に耐えられなくなったのか口を開いたゆいちゃんの言葉は僕の言葉にかき消された。
「ぁっ、あの「ねぇ、ゆいちゃん今日僕のお部屋に(お化粧を試すために)お泊まりに来ない?」」
どうしてもゆいちゃんのお顔にお化粧をしたくて必殺のお願い♡ポーズをしながらお誘いしてみる。
さっきまで楽しそうなおしゃべりの声が聞こえていた調理室の中が途端に静まりかえる。不思議に思ってキョロキョロ見回してみてもみんな口を開けて呆けた顔をしたまま固まっている。
ゆいちゃんなら原因がわかるかもと思って視線を戻すとみんなと同じ様に固まってた。寧ろ真っ赤になって白目を剥いてるのでより重症かもしれない。ゆいちゃんに保健室に行くか聞こうとしたその時
ガタンッ
静かだった調理室で椅子が倒れる音がすぐ真横から聞こえた。
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