上 下
11 / 27

5話「妹と温泉旅行」2日目 菜摘side

しおりを挟む
「おーい、菜摘。 起きろ! 海鮮丼」
「え! 海鮮丼? どこ? どこ? ってないじゃん! 陽ちゃんの嘘つき!」
「おはよう菜摘。 そろそろ朝食の時間だぞ起きろよ」
「おー! 朝食かあ! 起きる起きる!」

私、松江菜摘は陽ちゃんの幼馴染だ。
生まれた頃からの幼馴染でかなりの長い付き合いだ。
そんな一番近い存在の陽ちゃんに隠していることがある。
それは……私は本当は天然キャラではないことだ。
恐らく、学校の皆やお父さんとお母さんも気づいていないと思う。
全ては陽ちゃんに「天然な菜摘可愛い」って思ってもらって、私のことを好きになってもらうためなのだ。
だから! 今日も私は天然! 天然なのだ!
ちなみに海鮮丼に反応して起きるのは本当だ。

「陽兄~。 あーんしてー」
「バーカ。 しねえよ」
「いいじゃん。 あーん」

けっ。 この兄妹の妹はいちいち陽ちゃんにベタベタしやがって……
陽ちゃんは私のものだ!

「陽ちゃん、あーん」

私も対抗して陽ちゃんにあーんする。

「菜摘も対抗すんじゃねえ!」
「えへへ~、兄妹仲よさそうだったからさあ~。 私兄妹いないから羨ましいんだあ~」

あはは~と私は微笑む。
双子の妹からは睨まれてるが、陽ちゃんには「まったく、菜摘は天然だなあ」って思われてるだろう。 よしっ。

「陽兄~、あーん!」
「んぐっ!」

双子の妹は陽ちゃんの口へ無理やりほうれん草を突っ込んだ。

「陽兄、美味しい~?」
「ごほっ……ごほっ。 バカヤロウ! 無理やり突っ込むやつがあるか!」

くそが!!!!
私も陽ちゃんにあーんしたい!!!

「ニヒヒッ。 ごめんね陽兄~」

双子の妹は陽ちゃんに微笑み、そして私の顔を見てニヤリと笑った。

こ、このくそアマあああ!!!

「いいねえ~、兄妹仲良しが一番だねっ!」

私は頑張って正気を保ってそんなことを言う。
ここの中では勿論ブチ切れている。
これが十数年かけて築き上げてきた私の天然キャラだ!
陽ちゃんにイマイチ効いているかわからないけど……
とにかくこの旅行中に一歩でも陽ちゃんとの距離を縮めるんだ! 
私はそう決意し、右手の拳を強く握りしめた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

見知らぬ男に監禁されています

月鳴
恋愛
悪夢はある日突然訪れた。どこにでもいるような普通の女子大生だった私は、見知らぬ男に攫われ、その日から人生が一転する。 ――どうしてこんなことになったのだろう。その問いに答えるものは誰もいない。 メリバ風味のバッドエンドです。 2023.3.31 ifストーリー追加

冗談のつもりでいたら本気だったらしい

下菊みこと
恋愛
やばいタイプのヤンデレに捕まってしまったお話。 めちゃくちゃご都合主義のSS。 小説家になろう様でも投稿しています。

【完結】帰れると聞いたのに……

ウミ
恋愛
 聖女の役割が終わり、いざ帰ろうとしていた主人公がまさかの聖獣にパクリと食べられて帰り損ねたお話し。 ※登場人物※ ・ゆかり:黒目黒髪の和風美人 ・ラグ:聖獣。ヒト化すると銀髪金眼の細マッチョ

婚約破棄目当てで行きずりの人と一晩過ごしたら、何故か隣で婚約者が眠ってた……

木野ダック
恋愛
メティシアは婚約者ーー第二王子・ユリウスの女たらし振りに頭を悩ませていた。舞踏会では自分を差し置いて他の令嬢とばかり踊っているし、彼の隣に女性がいなかったことがない。メティシアが話し掛けようとしたって、ユリウスは平等にとメティシアを後回しにするのである。メティシアは暫くの間、耐えていた。例え、他の男と関わるなと理不尽な言い付けをされたとしても我慢をしていた。けれど、ユリウスが楽しそうに踊り狂う中飛ばしてきたウインクにより、メティシアの堪忍袋の緒が切れた。もう無理!そうだ、婚約破棄しよう!とはいえ相手は王族だ。そう簡単には婚約破棄できまい。ならばーー貞操を捨ててやろう!そんなわけで、メティシアはユリウスとの婚約破棄目当てに仮面舞踏会へ、行きずりの相手と一晩を共にするのであった。けど、あれ?なんで貴方が隣にいるの⁉︎

酔って幼馴染とやっちゃいました。すごく気持ち良かったのでそのままなし崩しで付き合います。…ヤンデレ?なにそれ?

下菊みこと
恋愛
酔って幼馴染とやっちゃいました。気付いたら幼馴染の家にいて、気付いたら幼馴染に流されていて、朝起きたら…昨日の気持ち良さが!忘れられない! …え?手錠?監禁?ジョークだよね? んん?幼馴染がヤンデレ?なにそれ?まさかー。 小説家になろう様、ムーンライトノベルズ様でも投稿しています。

×一夜の過ち→◎毎晩大正解!

名乃坂
恋愛
一夜の過ちを犯した相手が不幸にもたまたまヤンデレストーカー男だったヒロインのお話です。

幸せなのでお構いなく!

恋愛
侯爵令嬢ロリーナ=カラーには愛する婚約者グレン=シュタインがいる。だが、彼が愛しているのは天使と呼ばれる儚く美しい王女。 初対面の時からグレンに嫌われているロリーナは、このまま愛の無い結婚をして不幸な生活を送るよりも、最後に思い出を貰って婚約解消をすることにした。 ※なろうさんにも公開中

転生先が羞恥心的な意味で地獄なんだけどっ!!

高福あさひ
恋愛
とある日、自分が乙女ゲームの世界に転生したことを知ってしまったユーフェミア。そこは前世でハマっていたとはいえ、実際に生きるのにはとんでもなく痛々しい設定がモリモリな世界で羞恥心的な意味で地獄だった!!そんな世界で羞恥心さえ我慢すればモブとして平穏無事に生活できると思っていたのだけれど…?※カクヨム様、ムーンライトノベルズ様でも公開しています。不定期更新です。タイトル回収はだいぶ後半になると思います。前半はただのシリアスです。

処理中です...