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30 イカリソウ:あなたを離さない

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その日の夜。
一同は既にそれぞれ帰宅し、もう人々は就寝の時間。
ガリーナとパーヴェルはベッドに寝転ぶと、そこにニコライがやってきた。

「マーマ!パーパ!」

ガリーナは飛び込んでくるニコライを抱きしめてあげると、ニコライは楽器を鳴らす。
パーヴェルは驚くと言った。

「お前の部屋はあっちだろ!」

するとガリーナは笑顔で言う。

「ワレリーさんの時は、毎日三人で寝たのよ?
そしたらニコライ、夜でも大人しく寝るようになって。」

「え!?あのニコライがあ!?」

パーヴェルはそこに驚いてしまうと、ガリーナは頷いた。
するとパーヴェルは目を閉じ、笑みを浮かべるとブツブツと言う。

「ワレリー兄様には悪魔をも変えてしまう力があるのですね…!」

「だから一緒に寝よう!」

ガリーナが言うと、パーヴェルはニコライに視線を送った。
ニコライはパーヴェルに目もくれず楽器を鳴らしているので、パーヴェルは溜息をつく。

「ま、ガリーナがそこまで言うなら。」

「ありがとう!」

ガリーナの満天の笑顔に、単純なパーヴェルは頬をピンクにして承諾して良かったなと思うのだった。

 =====

パーヴェルの家では、リビングにてワレリーとフロルが夕食中。
フロルはワレリーの料理を口にすると、一つ頷く。

「美味しいですね。」

それを聞いたワレリーは目を輝かせる。

「わかりますか?やっと私の味覚が通じる人間に出会いました…!」

フロルは頷いて料理を頬張りながら答えた。

「集落の飯と同じ味がします。」

それにワレリーはガクッと体制を崩すと、苦笑してしまう。

「そうですか…」

薄味のスープをフロルは飲み干すと、次にバターの付いたパンに手を出した。
ワレリーはよく食べるパーヴェルを思い出したので、フロルに言う。

「よく食べますね。」

「普通ですよ。お兄様が少食なだけで。」

フロルは口にものを入れたまま、もごもごと話す。
ワレリーは呆然としてしまい、普通の食欲というものがわからなくなって暫く熟考していた。

 =======================

そして人々が眠りに就いた真夜中、レギーナは村の花畑まで来ていた。
これは、外に売る為に大事に育てている村の花畑だ。
綺麗に咲いている花を見ると、レギーナは怒気が溢れそうになる。

レギーナは花を一つ毟る。
それだけではない、その隣の花も、その隣も、全て全ての花をだ。
毟った花はその場に捨て、その日の夜中はずっと花畑の花を毟っていた。

 ============================

次の日。
ガリーナとパーヴェルは部屋ですやすやと眠っていると、そこにフロルが入ってくる。

「失礼、パーヴェルお兄様!」

フロルの意外と大きい声に、パーヴェルは飛び起きた。

「なになにい!?」

「大変です!村の花畑が、何者かによって荒らされたのです。」

「え!?今行く!」

パーヴェルはそう言って急いで着替えると、ベッドで寝ているガリーナやニコライを放置して外に出た。

二人が家から出たのを、家の裏からこっそりレギーナは見ていた。
するとレギーナは家に侵入し、家の間取りや物を確認。
そして寝室に入ると、ベッドに眠るガリーナを発見した。

レギーナはガリーナに目もくれずにタンスを開くと、ガリーナの服を拝借。
そしてその服を着た。
レギーナは若干キツそうに服を着ると呟く。

「ちょっと胸の辺りがキツイけど…着れないことはないわね。」

着替えを終えると、次にガリーナの元へ。
レギーナはこっそりニコライを抱き上げると、ガリーナの耳元で言った。

「起きろ!」

その声にガリーナだけではない、ニコライまでも目覚める。
ガリーナはレギーナを見ると、一瞬だけ驚いた。

「私が二人…!?ってレギーナねあなた!」

するとレギーナは舌を出して言う。

「ニコライ返して欲しけりゃ走れ!」

そう言ってレギーナは走って家から出ると、ガリーナは寝巻きのまま外に出た。

「待てレギーナ!」

ガリーナはそう言って追いかけ、レギーナは物陰の後ろに回ったりして逃げていた。

(そんな事したって見失わないんだから…!)

ガリーナはそう思いつつ追いかけていると、レギーナはパーヴェルの家の駐車場裏に回る。

「そこね!」

ガリーナは裏に回ると、目の前には硬そうな木の板が一枚。
ガリーナは勢いよく板に顔面をぶつけてしまい、気絶してしまった。
それを見たレギーナはクスクスと笑う。

「しめしめ。」

「マーマ!」

ニコライはそう言ってレギーナを見ていたが、気絶しているガリーナを見るとどちらがママかわからなくなる。
ニコライはその場に下ろされ、レギーナはガリーナを背負って駐車場に入った。
それからガリーナの服を脱がせると、ガリーナに自分がいつも着ている服を着させる。
ニコライは暫く駐車場前で遊んでいたが、駐車場からレギーナが出てきた。

「マーマ!」

ニコライはレギーナにしがみつくと、レギーナはニコライに眼帯を付けた。
それからレギーナは手を出す。

「ほら、いっつもアンタ、ガリーナと手繋いでるでしょ。」

ニコライは手を出されるとすぐに手を繋ぐので、そのままレギーナは花畑に向かった。
レギーナは早足で、ニコライのペースに全く合わせてくれない。
ニコライは引っ張られつつも、レギーナに追いつく為に小走りした。

 =========================

パーヴェルは花畑に着くと、荒らされた花畑で絶望の表情を浮かべる。
無残に毟られ、毟られた花々は萎れている。
村人も多く集まっており、ざわざわと話し声が聞こえた。

「鳥の仕業じゃないよねぇこれ…?」

「誰が一体…村で大事に育ててる花を毟るだなんて…!」

「悪魔の仕業か…?」

パーヴェルはそんな声など耳に入らず。

「大損害だ…!」

パーヴェルは小声で嘆くと、そこにワレリーが来た。

「来ましたか兄様。
ここら一面の花畑がほぼやられています。」

「そうですね…一体誰が…」

パーヴェルはショックしているのか元気がない。
ワレリーは眉を潜めると続けた。

「花畑だけではありません。周辺の畑もです。」

すると、急にパーヴェルは瞳に炎を宿らせる。

「農作物もだと…!?」

飯の事とあらば、それはそれはお怒りだった。
フロルは花畑を見ると言う。

「村に損害を与える辺り、村の人間の仕業とは思えませんね。」

それを聞いたパーヴェルは無表情で言った。

「それを村人じゃないあなたが言っちゃいますー?」

フロルは冷汗を浮かべると、ワレリーは溜息。

「こんな広範囲…一人でやるなら夜中からやっていた事になります。
フロルは昨夜は私といたのです、そんな隙ありませんよ。」

「じゃあ誰ですか…?」

パーヴェルは困り果てた様子で聞くと、ワレリーは考える。

「暫く様子を見ましょう。皆には怪しい人物を注意して探すよう言ってください。」

「はい!」

パーヴェルがそう答えると、そこにレギーナとニコライがやってきた。

「おはようワレリーさん、どうしたの…?
って…!」

レギーナは花畑を見ると、衝撃を受けた顔をして驚いてみせる。

「ガリーナ、これどうやら夜中の内にやられたものっぽいんだ。」

「酷い…」

レギーナは眉を困らせると、ワレリーも困った顔を見せた。

「そうですね。
私は心当たりのある人に聞いてみます。」

ワレリーはそう言って立ち去ると、パーヴェルはワレリーの様に深く考え込む…フリをした。
ワレリーが立ち去ると、レギーナはパーヴェルの服を掴んだ。

「どうしましたガリーナ?」

パーヴェルは聞くと、レギーナは言う。

「実は…さっきレギーナに会ったんだけど…」


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