うちでのサンタさん

うてな

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うちでのサンタさん3

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夕食を終えた僕は、部屋のベッドで寝転んでいた。
僕は壁の写真を眺めながらも、さっきのケン兄さんの話を考えた。

今から丁度三年前。
人間不信だった中学生の僕は、サンタの格好をした父さんに出会った。
父さんは僕を養子にするつもりらしく、僕は勿論の事反対した。

『金が欲しいのか?』

僕はそんな事を聞いた覚えがある。
そうまでしても金を得ようとしていた人は、これまで僕を養子にしようと考えていた里親候補に沢山いた。
だから今回もそうだろうと思っていた。

『お金?そんな物サンタさんは、沢山持ってるよ。』

『じゃあ何が欲しいんだ?
何が欲しくて、僕を養子になんか…。』

『富、名声、それらを持っていても絶対に手に入らないもの。
勿論君の力でも与えられないもの、一体なんでしょう?』

父さんは変な人だった。
あの時の僕は答えられずにいた。
その時の父さんの言葉は、今でもハッキリと覚えている。
父さんは僕の胸に人差し指を当てて言った。

『心の繋がりだよ。
サンタさんは、君のソレが欲しいんだ。
それがないと…この世界のどこのサンタさんもね、来年のこの日まで元気に過ごせない。
子供の幸せや笑顔ほど、サンタさんを元気にさせるものはないからね。』

聞いた当初は意味がわからなくて、気持ちが悪いとさえ思った。
だけど父さんは笑顔で僕に手を伸ばして言ったんだ。

『約束しよう、サンタさんは君の力を利用しない。
君の力は、君の為だけに使えばいい。
だから、サンタさんと家族になろう。』

『……。
幼い頃サンタに、一度だけ願い事を送った事がある。』

『何を書いたの?』

『…「本当の家族が欲しい」って。』

その後は驚いた事に、父さんがその時の僕の手紙を持っていた。
その時に思った。
この人は、僕の願いを叶えに来たサンタかもしれない…と。

だから今の僕はこうして、父さんやケン兄さんに心を開いている。
今の家族は僕に欲を見せる事はなく、家族として常に見てくれている。

僕が小さい頃から憧れていた、家族の姿だった。

僕はそう考えると、胸に手を当てて深く目を閉じた。

(結局、こんな事を僕に思い出させてケン兄さんは何がしたかったんだろう。
僕の願いは、家族みたいな存在が欲しい…そんな願いだけど、
太一くんの肉親に会いたいって願いとは全く別の話だろ。)

僕は天井を見上げた。

(…明日も休日だし、太一くんともう少し話してみるかな。)





次の日。
僕は太一くんと一緒に、公園に来ていた。

(ヤバイ…!
二人でゆっくり話したいって思ってたから、気づいたら一緒に遊ぶ形になってしまった…!
困った…子供と外で遊ぶなんて全くした事ないのに…!)

焦っている僕に気づいたのか、太一くんは言う。

「やっぱり帰る」

「待って!」

僕が止めると、太一くんは足を止めた。
僕は言う。

「アスレチック好きなんだ!一緒に遊ぼう!」

「うん、僕も好き。」

太一くんはそう言うと、僕と一緒にアスレチックで遊び始めた。
太一くんは最初は黙って遊んでいたものの、本当にアスレチックが好きなのかいつの間にか笑顔が浮かんでいた。

(孤児院の遊具にアスレチックなんてないもんな。
太一くんが楽しそうで良かった。)

暫くして、太一くんは遊び飽きたのか遊ぶのをやめた。
僕は聞く。

「ねえ、今度は遊園地行こうか。」

それを聞いた太一くんは、目を光らせた。

「本当…?!」

「うん!」

僕は笑顔で答えた。
普段暗い表情をしている太一くんは、意外と笑顔を見せる子だった。
僕は安心した。

(僕と似た感じになっていると思ったけど…意外と元気そうだ。)

遊園地でも、太一くんは楽しく遊ぶ。
僕はそれを隣で見守っていた。

丁度昼頃になって、遊園地で昼ご飯を一緒に食べている時。
太一くんは僕に聞いた。

「ちとせお兄さんは、どうして僕と遊んでくれるの?
他の子と遊んだ方が、そっちの方がきっと楽しいのに。」

「え?
そりゃもう…」

(…本当の事を言ってもいいかな…。)

「太一くんを見てると、昔の僕にソックリなもんでね。
妙に気になっちゃうんだよ。」

「え?ちとせお兄さんと僕、似てるの?」

太一の言葉に、僕はクスッと笑った。

「表情がね。
僕は孤児院に来る前、孤児院にいた時も、ずっと孤独を貫いてたから。」

「孤独…」

太一は僕の話に反応を見せた。
僕は目を丸くする。

(こんな幼い太一くんでも、孤独を考えたりしているんだろうか。)

すると太一くんは言った。

「ちとせお兄さんの本当のお父さんとお母さんって、どんな人?」

「ああ、関わった事もないし顔も知らないんだ。
だから教えられない。」

それを聞き、太一くんは驚いた様子の次に申し訳ない表情を浮かべた。
反省した様子の太一くんは言う。

「ごめんなさい。」

「いいんだよ!今は本物の親同然の人がいるし!」

「他人なのに?」

口を尖らせた太一くんに言われ、僕は思わず目を丸くした。
僕はそんな事を考えた事がなかった。
自分の肉親は既にいないから、親を知る術はなかった。
だから他人の父さんを普通に受け入れる事が出来た。
きっと本当の親を知っている人は、そう簡単に他人を親として受け入れる事は出来ないだろう。

「…それでも、僕の家族だよ。
だけど太一くんの言った通り、今の家族以外の他人を家族として受け入れられるかは微妙だな。」

「そう…」

太一くんはそう言うと、ご飯を食べる手を止めた。

「太一くん?」

僕が聞くと、太一くんは真剣な表情で僕を見た。
僕はそれを見て目を丸くすると、太一くんは言った。

「ちとせお兄さん、一緒に来て欲しいところがあるんだ。」

太一くんが真正面に、僕にお願いをしている。
きっと深い意味のある場所なのだと、僕はそのお願いを了承した。
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