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第46話 問題解決
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「ううう。私の中の瘴気が研究のお役にたてれば嬉しいです。今はただの魔力かもしれないですが」
それでも上司の言葉に、私は頷くしかない。
がっくりと肩を落とす私に、ふっと笑い声が聞こえる。
「そうだ。君にはずっと私の隣に居てほしい」
その声がなにかとても甘い響きを含んでいるようで、思わず顔をあげる。
フィスラは胸に手を当て少し残念そうな顔をした。
「こういう時に、君に近づけないなんて情けないな。いや……身体を犠牲にすれば行けなくもないが」
「やめてください! あんな血を吐いたフィスラは見たくありません!」
「わかっているからこそ、節度を守ってこの距離に居るだろう。本当はもっと近づきたい」
真面目な顔で告げられて、何と答えたらいいのかわからない。
「こうして、ポーションに魔力を移していたら、そのうち戻るのでしょうか」
「私の考えだと、あと一週間ほどで周囲への影響はかなり減り近づいても問題なくなるはずだ」
「あと少しですね」
「そうだ。気になっていたのだが、君が、瘴気を抑え切れたのにはおどろいた。どうやったのだ」
「えええ。……それ、聞きます?」
「何が問題なのだ? 私が浄化をかけていたにしても、抑えられるとは思わなかった」
「やっぱりフィスラ様が何かしてくれていたんですね。……ええと、恥ずかしいので近づけるようになった時に言います」
「今すぐ近づきたくなるような誘惑はやめてくれ」
「誘惑じゃありません!」
恐ろしく研究熱心だ。でも、こんな距離感で、フィスラへの愛情が憎しみを上回ったからじゃないかと伝えるだなんて私には無理だ。
どうしていいかわからなくなる。
フィスラは私の顔をじっと見ていたが、どうにも譲らないとわかったようで諦めたようだ。
「私は君を逃がすつもりはない。……君も協力してくれたことで、すべての問題は解決した」
「問題解決?」
急に何の話だろう? 今回の事で魔力不足が解決したとかかな。
全くピンと来ていない私に、フィスラは指を立てて説明してくれる。
「まず、一番ツムギが気にしていた、君と私の身分差だ」
恋愛的な問題の話だった。
思いもよらない方向の話で動揺するが、それはそれで気になる話だったので邪魔しないように頷く。
「ミズキという聖女が居なくなった事で、君が聖女になるだろう」
「えええ。どんな繰上りですか。聖女ってそんな決め方であってます?」
「聖女としての働きは満点だっただろう? 王城に居るものが全員魅了にかかるのを阻止し、瘴気を浄化した」
「そう言われれば、そうといえなくもない、かも?」
「間違いない。それに私という推薦人もいる。確定だ」
「どうにもやらせ感がありますね……」
「私は手に入れたいものの為には手段を択ばないタイプだ」
にやりとフィスラが笑う。
「まあ、それを差し引いても君が今作っているポーション」
「ああ、魔力を抜いてくれるあれですね」
「知っての通り、ポーションは持っている人の魔力分しか作れない。魔力に関しては使い道が幅広いし、魔力量が多いものは魔力を使用する仕事についているものが殆どだ。一日の最後に残った魔力をポーションに移している」
「それはこの間も聞きましたね。意外と世知辛いのでびっくりしました」
「そう。そして君が倒れてから作成したポーションの数は三百を超える。更にそのポーションに一本含まれる魔力量は、だいたいの人間がほぼ全回復する量だ」
「わーそんなにあったんですね。ポーション液の作成お疲れ様でした……。魔力回復ができれば研究がはかどるかもしれませんね」
「これだけで爵位を賜るのに十分な功績となる」
「えっ。それって私の功績になるんですか?」
「当然だろう。君の中にある魔力は、これでもまだ三分の一移した程度だ」
「膨大な量なんですね、瘴気って」
「そうだな。こんなものだとは思わなかった。活用方法を探したいものだ」
「……危なくない方法でお願いします」
「わかっている」
しぶしぶというように頷いたフィスラは、なにか企んでいたような気がする。
「まあともかく、君と私の結婚を反対する人は居なくなった」
それでも上司の言葉に、私は頷くしかない。
がっくりと肩を落とす私に、ふっと笑い声が聞こえる。
「そうだ。君にはずっと私の隣に居てほしい」
その声がなにかとても甘い響きを含んでいるようで、思わず顔をあげる。
フィスラは胸に手を当て少し残念そうな顔をした。
「こういう時に、君に近づけないなんて情けないな。いや……身体を犠牲にすれば行けなくもないが」
「やめてください! あんな血を吐いたフィスラは見たくありません!」
「わかっているからこそ、節度を守ってこの距離に居るだろう。本当はもっと近づきたい」
真面目な顔で告げられて、何と答えたらいいのかわからない。
「こうして、ポーションに魔力を移していたら、そのうち戻るのでしょうか」
「私の考えだと、あと一週間ほどで周囲への影響はかなり減り近づいても問題なくなるはずだ」
「あと少しですね」
「そうだ。気になっていたのだが、君が、瘴気を抑え切れたのにはおどろいた。どうやったのだ」
「えええ。……それ、聞きます?」
「何が問題なのだ? 私が浄化をかけていたにしても、抑えられるとは思わなかった」
「やっぱりフィスラ様が何かしてくれていたんですね。……ええと、恥ずかしいので近づけるようになった時に言います」
「今すぐ近づきたくなるような誘惑はやめてくれ」
「誘惑じゃありません!」
恐ろしく研究熱心だ。でも、こんな距離感で、フィスラへの愛情が憎しみを上回ったからじゃないかと伝えるだなんて私には無理だ。
どうしていいかわからなくなる。
フィスラは私の顔をじっと見ていたが、どうにも譲らないとわかったようで諦めたようだ。
「私は君を逃がすつもりはない。……君も協力してくれたことで、すべての問題は解決した」
「問題解決?」
急に何の話だろう? 今回の事で魔力不足が解決したとかかな。
全くピンと来ていない私に、フィスラは指を立てて説明してくれる。
「まず、一番ツムギが気にしていた、君と私の身分差だ」
恋愛的な問題の話だった。
思いもよらない方向の話で動揺するが、それはそれで気になる話だったので邪魔しないように頷く。
「ミズキという聖女が居なくなった事で、君が聖女になるだろう」
「えええ。どんな繰上りですか。聖女ってそんな決め方であってます?」
「聖女としての働きは満点だっただろう? 王城に居るものが全員魅了にかかるのを阻止し、瘴気を浄化した」
「そう言われれば、そうといえなくもない、かも?」
「間違いない。それに私という推薦人もいる。確定だ」
「どうにもやらせ感がありますね……」
「私は手に入れたいものの為には手段を択ばないタイプだ」
にやりとフィスラが笑う。
「まあ、それを差し引いても君が今作っているポーション」
「ああ、魔力を抜いてくれるあれですね」
「知っての通り、ポーションは持っている人の魔力分しか作れない。魔力に関しては使い道が幅広いし、魔力量が多いものは魔力を使用する仕事についているものが殆どだ。一日の最後に残った魔力をポーションに移している」
「それはこの間も聞きましたね。意外と世知辛いのでびっくりしました」
「そう。そして君が倒れてから作成したポーションの数は三百を超える。更にそのポーションに一本含まれる魔力量は、だいたいの人間がほぼ全回復する量だ」
「わーそんなにあったんですね。ポーション液の作成お疲れ様でした……。魔力回復ができれば研究がはかどるかもしれませんね」
「これだけで爵位を賜るのに十分な功績となる」
「えっ。それって私の功績になるんですか?」
「当然だろう。君の中にある魔力は、これでもまだ三分の一移した程度だ」
「膨大な量なんですね、瘴気って」
「そうだな。こんなものだとは思わなかった。活用方法を探したいものだ」
「……危なくない方法でお願いします」
「わかっている」
しぶしぶというように頷いたフィスラは、なにか企んでいたような気がする。
「まあともかく、君と私の結婚を反対する人は居なくなった」
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