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【最終話】
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「……うさぎ、出来ないですね」
「まったく出来ない」
ミシェラから教わった技術は、確かにまったく今までと違い素晴らしいものだと思われた。
何故確定じゃないかと言えば、誰にもまだ再現できていないからだ。
ミシェラが見せた魔術は、同じものがこの世にはない。しかし、彼女が素晴らしいだけの可能性もまだある。
「皆さんが使う魔法陣と、私が使う魔法陣って根本が違うんですよね。……多分、慣れるまで大変だと思います。私、全然魔法陣安定しませんでしたし……」
おろおろとミシェラが皆の周りをまわりながら手をばたつかせている。
刷り込まれた知識を手放すのは難しいという事だろう。
まずは、氷を出すところから始めているが、うさぎどころか氷が出てこない。マウリゼもフィラッセも、ミシェラが見せる魔法陣を穴が開くほど見ている。
他の団員も、何度も水や霧を出しているだけだ。
そんな中、ハウリーは手を伸ばして、魔法陣を展開した。
「……ふむふむ」
頷くハウリーの手にはうさぎに見えなくもない氷の像が乗っている。チャレンジしていた周りの面々は目を見開く。
「えっ。大体できてる!」
「これは、なかなか難しいな」
「それだけ出来ていてその言葉は、ここに居る皆が傷つきます」
泣きそうな顔で訴えるシュシュに、ハウリーはにやりと笑う。
「新たに覚えられないという事は、これから魔術を覚える子供の方が期待できそうだ。まっさらな子供が使えるようになるのと、お前たちが使えるようになるの、どちらが早いだろう」
「それは……ぐっ」
悔しそうに下を向いた面々だが、再び顔を上げた時は強い光を放っていた。
「子供に負けるわけにはいかない」
「私はずっと、失われた技術を復活させるために研究してきたのだ」
「単純に悔しい」
魔法陣を展開する彼らを楽しい気持ちで見ながら、ハウリーはミシェラを撫でた。
「皆勉強熱心で嬉しいな」
「ハウリー様……ズルは駄目ですよ」
「ズルじゃない。徹夜で練習しただけだ」
こっそりとハウリーとミシェラは囁きあった。
昨晩、ハウリーはミシェラと徹夜で魔法陣の安定の練習をしていたのだ。熱心だなとしか思わなかったが、こんな風に使うとは。
化け物の中身には負けず嫌いの人間がつまっているようだ。
あんなに甘い雰囲気の後に魔術の練習が待っているとは、ミシェラにも予想外だった。
ちょっと残念な気もしたのは内緒だ。
ミシェラが不審な顔でハウリーを見ていると、ハウリーはにやりと笑った。
「師団長も大変なんだ」
「……まあ、徹夜でも使えるようになった事にはびっくりしました。私も先は長いです」
ミシェラもずっとずっと真剣に練習していたのに、一カ月で光の魔術しか使えなかったのだ。うさぎは案外難しい。ハウリーはきっと、努力と才能、両方を備えている。
でも、努力だけでも負けるわけにはいかない。
ミシェラはうんうんうなる団員に混ざって、精度を上げる練習のために魔法陣を展開した。
「ミシェラは実践で使えるような技の練習だな。その辺の選択肢は当然こちらの面々のが上手い。追いつけるように頑張るんだぞ」
「はい。三ヶ月は寝ないつもりで頑張ります」
「うちの団をなんだと思っているんだ。やめろ」
何故か早々に怒られてしまった。
「ミシェラ。ここの説明をしてくれ!」
マウリゼに呼ばれ、ミシェラは慌ててそちらに向かおうとすると、ハウリーに手を掴まれる。
「今日の夜も練習に付き合ってくれ」
「もう。ズルは駄目ですよって言ったばっかりなのに」
「ズルじゃない。恋人特権だ」
にやりと笑って図々しい事を言うハウリーの額をこつんと叩いて、ミシェラはこみあげる嬉しさを抑えマウリゼのもとに向かった。
「まったく出来ない」
ミシェラから教わった技術は、確かにまったく今までと違い素晴らしいものだと思われた。
何故確定じゃないかと言えば、誰にもまだ再現できていないからだ。
ミシェラが見せた魔術は、同じものがこの世にはない。しかし、彼女が素晴らしいだけの可能性もまだある。
「皆さんが使う魔法陣と、私が使う魔法陣って根本が違うんですよね。……多分、慣れるまで大変だと思います。私、全然魔法陣安定しませんでしたし……」
おろおろとミシェラが皆の周りをまわりながら手をばたつかせている。
刷り込まれた知識を手放すのは難しいという事だろう。
まずは、氷を出すところから始めているが、うさぎどころか氷が出てこない。マウリゼもフィラッセも、ミシェラが見せる魔法陣を穴が開くほど見ている。
他の団員も、何度も水や霧を出しているだけだ。
そんな中、ハウリーは手を伸ばして、魔法陣を展開した。
「……ふむふむ」
頷くハウリーの手にはうさぎに見えなくもない氷の像が乗っている。チャレンジしていた周りの面々は目を見開く。
「えっ。大体できてる!」
「これは、なかなか難しいな」
「それだけ出来ていてその言葉は、ここに居る皆が傷つきます」
泣きそうな顔で訴えるシュシュに、ハウリーはにやりと笑う。
「新たに覚えられないという事は、これから魔術を覚える子供の方が期待できそうだ。まっさらな子供が使えるようになるのと、お前たちが使えるようになるの、どちらが早いだろう」
「それは……ぐっ」
悔しそうに下を向いた面々だが、再び顔を上げた時は強い光を放っていた。
「子供に負けるわけにはいかない」
「私はずっと、失われた技術を復活させるために研究してきたのだ」
「単純に悔しい」
魔法陣を展開する彼らを楽しい気持ちで見ながら、ハウリーはミシェラを撫でた。
「皆勉強熱心で嬉しいな」
「ハウリー様……ズルは駄目ですよ」
「ズルじゃない。徹夜で練習しただけだ」
こっそりとハウリーとミシェラは囁きあった。
昨晩、ハウリーはミシェラと徹夜で魔法陣の安定の練習をしていたのだ。熱心だなとしか思わなかったが、こんな風に使うとは。
化け物の中身には負けず嫌いの人間がつまっているようだ。
あんなに甘い雰囲気の後に魔術の練習が待っているとは、ミシェラにも予想外だった。
ちょっと残念な気もしたのは内緒だ。
ミシェラが不審な顔でハウリーを見ていると、ハウリーはにやりと笑った。
「師団長も大変なんだ」
「……まあ、徹夜でも使えるようになった事にはびっくりしました。私も先は長いです」
ミシェラもずっとずっと真剣に練習していたのに、一カ月で光の魔術しか使えなかったのだ。うさぎは案外難しい。ハウリーはきっと、努力と才能、両方を備えている。
でも、努力だけでも負けるわけにはいかない。
ミシェラはうんうんうなる団員に混ざって、精度を上げる練習のために魔法陣を展開した。
「ミシェラは実践で使えるような技の練習だな。その辺の選択肢は当然こちらの面々のが上手い。追いつけるように頑張るんだぞ」
「はい。三ヶ月は寝ないつもりで頑張ります」
「うちの団をなんだと思っているんだ。やめろ」
何故か早々に怒られてしまった。
「ミシェラ。ここの説明をしてくれ!」
マウリゼに呼ばれ、ミシェラは慌ててそちらに向かおうとすると、ハウリーに手を掴まれる。
「今日の夜も練習に付き合ってくれ」
「もう。ズルは駄目ですよって言ったばっかりなのに」
「ズルじゃない。恋人特権だ」
にやりと笑って図々しい事を言うハウリーの額をこつんと叩いて、ミシェラはこみあげる嬉しさを抑えマウリゼのもとに向かった。
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