陽のあたる場所

儚いユートピア

儚いユートピア22

「フク、ごめんっ!!」

「あのなぁ…

俺はおまえの母ちゃんじゃねぇんだぞ!?ｗ

そんなおまえの着替えまで用意してねぇよ!?

しかもおまえデカ過ぎてサイズねぇし!!


…しかもタイミングわりぃな

俺、昨日デカい洋服全部捨てちゃったんだよ…。」


「えっ!?そうなの!?」


昨日鳥飼さんと電話した後、俺は大掃除して要らない服をほとんど処分してしまった…。


家についてから、ケンジが着れそうな服を探してみたけど…


「２枚しかおまえ着れそうなのないわ。

この誕生日におまえにもらったＴシャツと、昔のおまえの服屋のノベルティだけだわ(笑)」


「ぉおっ!!懐かしいっ!!ｗ」


「だろ？ｗ」


「フクありがと♪２枚あれば充分♪」


「パンツは貸せねぇからてめぇで用意しろよ!?(笑)」


「え～。パンツはだめなのぉ？ざんねぇ～ん。」


「ハハハっ!!ｗ」



それから２人で当時一緒に暮らしていた日々を思い出して、昔話をしていた－－。


「いろいろあったけど楽しかったな♪

そういや初めて一緒に暮らした時、おまえの表札だけなかったよなｗ」


「そうそうｗ

それでも変な封筒いっぱい送られてきてさｗ」


ケンジの家庭はワケありで、その昔、福島でラブホテルを経営する母親の会社が倒産して

家を失ったケンジ一家は２年間も廃墟と化したラブホに隠居生活をしていた。


その後、更に夜逃げして横浜までやってきたけど、

借金取りに追われ、家がバレては引っ越して、ずっと引っ越しばかり繰り返していた…。


俺らと一緒に暮らしてからも、母親の請求書と思われる封筒が俺らの家にまで届いていた…。


破天荒で無茶苦茶な母親だけど、ケンジにとって母親の存在は偉大で、

ケンジは母親のことが大好きだった－－。


「今日さ、フクは母ちゃんの話してたけどさ、フクの母ちゃんは元気なの？」