陽のあたる場所

こたろ

文字の大きさ
上 下
84 / 449
幸福の変革者

幸福の変革者20

しおりを挟む
勉強会が終わった途端に、その女性は俺の元にやってきた。


名刺を渡され、自己紹介してくれたその女性とは

心理カウンセリングのような仕事をしているという"ノンセクシャル"の女性だった。


(※ノンセクシャル=非性愛者。恒常的に他人への性的欲求を持たない、非性愛の性質を持っている人のこと。)



そんな彼女、"鳥飼さん"はFTMの人間に出会ったのが、俺で2人目らしく、

彼女からしたら珍しい存在だからこそ興味をもってくれたようだ。



それから鳥飼さんとも仲良くなって、

鳥飼さんと歌川さんと3人でしばらく話をしていた。



「カウンセラーは確かにもっと必要だよね。


でもカウンセリングって言葉より、

今は"スピリチュアル"が流行りだからね(笑)」



鳥飼さんは仕事の相談を歌川さんにしていて、

歌川さんは率直に意見してくれていた。



そんな中、俺も素人ながら率直な意見をさせてもらった。


「確かに"カウンセリング"って言葉だと少し抵抗があるので

気軽に相談できる感じではないですね…。


もっとフランクに話ができるような…こう、もっと近い距離感が持てる、ライトな言葉はないですかね?」



それから鳥飼さんはすごく悩んでいた。



"カウンセリング"っていうと堅っ苦しいし、

"スピリチュアル"っていうと、なんだかまた種類の違う言葉のような気がするし、

言葉選びとは難しい…。



商売なんて、同じことをするにも謳い文句一つで需要の数は大きく変わってくるから恐ろしいものだ。



それから歌川さんとお別れの挨拶をして、

俺は鳥飼さんと2人で新宿駅まで一緒に帰ることにした。



「言葉選びって難しいですねぇ。」


「でも、歌川さんも言ってくれたように

確かにカウンセラーはもっと必要なのよ。」



彼女はどうやら、同性愛者などの悩めるセクシャルマイノリティな人を中心に

カウンセリングをしたいと考えているようだった。



(※セクシャルマイノリティとは、何らかの意味で「性」のあり方が非典型的な人のこと。

同性愛者、両性愛者、トランスジェンダーなどが含まれると考えられる。)




俺はそんな中、フと明日に控えたアウトレット行きのことが気になり、

いつの間にか鳥飼さんになんとなく真央のことを相談していた。
しおりを挟む

処理中です...