異世界で生きていく。

モネ

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はじまりの話

雨の夜

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その夜、食堂で夕食を食べていると雨が降り出した。
「雨だ。この世界に来て初めて。」
「スック」
スックも一緒に外を見ていた。
シトシトと雨音も聞こえる。

じっと見ているとガンジーさんがきた。
「久しぶりの雨だなぁ、こりゃ今日は客が少ねぇな。」
「雨の日は混雑しないのですか?」
「あぁ、みんな雨の日は家にいる方が多いな。ここら辺は山の麓で森も近いからな、降り出したら急に激しくなったりもするんだよ。水が豊かだが、大雨だと溢れたりもする。気をつけないとな!」
「そうなんですね、天気は調節できないですもんね。」
「そうだな、今日はゆるりとやるかな!」
そう言ってキッチンに戻って行った。

「モエちゃんも今日は早めに宿に戻ってて良かったね、雨は激しくなりそうね。明日も雨だろうね。」
女将さんが来た。
「明日も雨か。雨だと宿に居たほうが良さそうですね。」
「そうだねぇ、天気の悪い日は居た方がいいよ。ほら、残りのお客さんも帰って行く。」
見るとフェルトちゃんがお見送りしながらお客様が帰って行くところだ。
あと私だけになった。

「あっ、すみません!すぐ食べて部屋に戻ります!」
「あぁ、いいんだよ!せっかくだから私らも一緒に夕食とってもいいかい?もうお客さんも来ないだろうから一緒に飲まないかい?」
ニッコリと女将さんが言った。
「いいんですか?嬉しいです!」
「フェルトちゃん!お客さんも帰ったことだし、みんなで夕食がてらお酒でも飲もう!」
「わぁー、女将さん!それ素敵です!テーブル片付けて準備しますね!」
「私も手伝いするよ!」
「あぁ、モエさんは座っててください!」
「いいのいいの、これくらいさせて!」
2人で片付けをしていると奥からガンジーさんが顔を出した。
「おぉ、盛り上がってるな!夕食と簡単なおつまみを作ったところだ!厨房にいるナルトも呼んでくるよ!」
「あぁ、頼むよ!みんなビールでいいかい?」
「「「はい!!」」」
3人で返事をした。

ナルトさんはキッチンで働いてる調理師さんだ。
フェルトちゃんと同じ年らしい。

「「「「「カンパーイ♪」」」」」
ガンジーさん、ナルトさん、女将さん、フェルトちゃん、私で夕食を始めた。
ガンジーさんは美味しそうなおつまみを作ってくれてとてもおいしかった。

トマトと生ハムのサラダ、ピクルス、フライドポテト、野菜たっぷりなオムレツ、チキンのソテー
どれも美味しい。
今日はお酒も飲み放題。

みんなでワイワイしながら楽しむ。
こんなのいつぶりだろう。

「モエちゃんは次の街はマリンの街に行くそうですよ!」
「マリンか!それはいい。あそこは食材も豊富だし、どの店も料理が美味い!貿易もしてる街だからいろんな食材や酒がある。」
そう言ってガンジーさんがニカっと笑う。
「貿易が。楽しみです。いろんなものがあるんでしょうね!」
「あぁ、港町だからな。荒い奴もいるから気をつけろよ!旅をするなら野営とかもあるな。」
「はい、少し料理もしながら楽しむ予定です。」
「料理か。料理は好きなのか?旅途中のオススメ料理はやはりその場で取れる食材を味付けして焼いたり、スープを作ったりがいいな。その日によって食べる物が変わるから楽しみができる。あとはフルーツとかで肉を揉み込んでおくとジューシーで柔らかくて仕上がるぞ。」
「料理好きです!そうなんですね、やってみます!楽しみです!」

賑やかな食卓でみんなでお酒を楽しみながら過ぎて行った。
結局雨も降り続いてお客様は来ず、閉店となったので、みんなで片付けをして部屋に戻った。

良い夜だ。
私は雨も好きだ。
災害級とかは困るけれど。

窓から外を見ると雨が結構降っていた。
街灯はついているが人はいない。
みんな家や宿に帰ったのだろう。

「スック」
スックがそばにきてくれた。
一緒に窓の外を見る。
今の生活は楽しいけれど、これから知らない人ばかりの知らない街に行く。
旅途中も不安はある。

新鮮で楽しいってことばかりではないかもだけれど、スックがいるから心強い。
この街ともあと数日でお別れ。
仲良くなった街の人とのお別れはとても寂しい。
夜の雨を眺めながらふと弱気になってネガティブなことばかりを考える。

…ダメダメ!
また来ればいいし、永遠のお別れではない。
自分で決めた道だ。
それにまだこれからたくさんの出逢いがある。

気を取り直してお風呂に入って暖かいお茶を飲もう。
暖かい季節でも雨の日は少し肌寒い。

ゆっくりと雨の夜は過ぎていった。


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