10 / 26
NOVE
しおりを挟む
寮に入ってから3日経ち、今日は入学式当日よ。 ジョージは寮でお留守番兼まだ片付いていない荷物の整理係ね。
そうそうジョージと言えば! ワタシの専属執事になって2年、とうとう聞けたのよ~~~!ジョージの声! 所謂寝言ってやつだけどね。 一昨日の夜、慣れない場所で寝付けなくって、カモミールティーを飲みにキッチンに行く途中、使用人部屋の前を通ったときに「むこうさあべ!」って聞こえて来たの。 ‥‥意外にも低めのバリトンボイスだったわ‥‥
寝言で言ってる意味は分からなかったけど、ウイリアムの言う通り喋れないわけじゃないのが分かってよかったわぁ。
学園は寮の隣の敷地にある‥‥ とは言っても徒歩で20分くらいかしらね。 通学の為に沢山の生徒がこの道を歩く中「エド!」と呼ばれて振り向くとリズが嬉しそうに近づいてきた。
「おはよう、リズ。 もう部屋は片付いたの?」
「ごきげんよう、エド。 ええ、大体は。 後はテレサとマギーがやってくれているわ。」
テレサとマギーはリズの専属侍女で、あのアシュレイド家では、公爵の顔色を窺ってリズには無関心を貫く使用人が多い中、この2人だけはリズを慕ってくれて、陰ながら助けてくれるいい子達なのよ。 彼女たちが居てくれるなら生活面では安心ね。 多分実家にいるよりはあの毒親がいないだけ心の平安を得られるはずよ。
‥‥‥ただ、3日前に偶然見かけたジェラルドのイベント。 当事者がまったくワタシの与り知らぬ人の事なら楽しく(?)傍観できるんだけど、残念な事にジェラルドはリズの婚約者なのよね。(時々忘れそうになるけど) ゲームの悪役令嬢エリザベスとはかなり性格が変わって(変えて?)しまったから、最悪婚約破棄はされてもそれ以上の事はない‥‥と信じたい。 これ以上リズが辛い思いをするのは嫌だもの。 とにかくしばらくは成り行きを見守りましょ。そうしましょ。
「今日は講堂で入学式の後、クラスの発表だったかしら? 新入生代表はエドがやるんですの?」
「今年はジェラルド殿下が居るからね、僕の出番はないよ。」
例年ならプレイスメントテスト1位が新入生代表挨拶をするんだけど、王族がいるときは王族になるのよ。 まあワタシとしてはその方がいいわ。 別に目立ちたくもないしね。 その代わりあいさつの台本はワタシが考えてあげたのよ。
リズと他愛もない話をしながら人波に逆らわず歩いて講堂に入ると、聞きなれた若干うざい声が聞こえて来た。
「うーーっす。 エドにエリザベス嬢」
「ごきげんよう、アイオス様」
「アイオス、君..... 見かけなかったけどいつ寮に入ったの?」
「へへ‥‥ 実は夕べ。 いやさあ、忘れてたわけじゃないんだよ、忘れてたわけじゃ!」
‥‥‥はぁ~、忘れてたのね。 ていうか侍従はどうしたのよ!主人がしっかりしてないんだから部下がしっかりしないとだめじゃない! と、ワタシがアイオスに呆れているとジェラルドの挨拶が始まった。
「ほぅ‥‥ 本当に素敵ですわ‥‥ジェラルド様‥‥」 「ご覧になって、あの青い瞳‥‥ 吸い込まれそうですわ…」 「なんて凛々しいお姿なのかしら‥‥」 「でも、わたくしはやっぱりエドナーシュ様一筋ですわ」
メインヒーローであるジェラルドは見た目だけは金髪碧眼の正統派イケメン王子様ね。 壇上に立っただけで周りの令嬢達から黄色い声が上がったわ。 まあ、王子だけあって外面はいいのよねー。 あ、どなたか知らないけど最後の人、ワタシを持ち上げてくれてアリガトウ。
「暖かな春の訪れとともに、今日この日を貴君らと共に迎えられた事を心から嬉しく思う――――――‥‥ 」
ジェラルドが代表挨拶をしている中、ふと周りを見渡していると先日ジェラルドイベントを起こしていたヒロインちゃんの姿が見えた。 確か名前はアンジェリカだったわね。 あら?気のせいかしら‥‥ 彼女ジェラルドを見て睨んでいるような‥‥。 え、でもこの間ルートに入ったのよね? どう言う事なのかしら? と考えていると、ふいに彼女がこっちに振り返り、バッチリと目があった。 すると見る見るうちに彼女の目が見開いたわ。 見られてる.... 見られてる..... めっちゃガン見されてるわ.....。
あまりの居たたまれなさにワタシから目を逸らしたわよ。 一体なんなのよ、もう。
そんな高度な(?)心理戦を繰り広げている間にジェラルドの代表挨拶は終わったらしい。 盛大な拍手の中ジェラルドが壇上を降りると、今度は在校生代表挨拶が始まる。 挨拶は生徒会長のリオンね。
リオン・フォン・サルーシュ。肩までのさらりとした艶やかな黒髪と切れ長のブルーの瞳、頭の良さを体現するような銀縁眼鏡にすらりとした体躯の、 隣国レブランドとの国境を守護する辺境伯サルーシュ家の次男よ。 これで隠れキャラ以外の攻略対象が出揃ったわね。
そうそうジョージと言えば! ワタシの専属執事になって2年、とうとう聞けたのよ~~~!ジョージの声! 所謂寝言ってやつだけどね。 一昨日の夜、慣れない場所で寝付けなくって、カモミールティーを飲みにキッチンに行く途中、使用人部屋の前を通ったときに「むこうさあべ!」って聞こえて来たの。 ‥‥意外にも低めのバリトンボイスだったわ‥‥
寝言で言ってる意味は分からなかったけど、ウイリアムの言う通り喋れないわけじゃないのが分かってよかったわぁ。
学園は寮の隣の敷地にある‥‥ とは言っても徒歩で20分くらいかしらね。 通学の為に沢山の生徒がこの道を歩く中「エド!」と呼ばれて振り向くとリズが嬉しそうに近づいてきた。
「おはよう、リズ。 もう部屋は片付いたの?」
「ごきげんよう、エド。 ええ、大体は。 後はテレサとマギーがやってくれているわ。」
テレサとマギーはリズの専属侍女で、あのアシュレイド家では、公爵の顔色を窺ってリズには無関心を貫く使用人が多い中、この2人だけはリズを慕ってくれて、陰ながら助けてくれるいい子達なのよ。 彼女たちが居てくれるなら生活面では安心ね。 多分実家にいるよりはあの毒親がいないだけ心の平安を得られるはずよ。
‥‥‥ただ、3日前に偶然見かけたジェラルドのイベント。 当事者がまったくワタシの与り知らぬ人の事なら楽しく(?)傍観できるんだけど、残念な事にジェラルドはリズの婚約者なのよね。(時々忘れそうになるけど) ゲームの悪役令嬢エリザベスとはかなり性格が変わって(変えて?)しまったから、最悪婚約破棄はされてもそれ以上の事はない‥‥と信じたい。 これ以上リズが辛い思いをするのは嫌だもの。 とにかくしばらくは成り行きを見守りましょ。そうしましょ。
「今日は講堂で入学式の後、クラスの発表だったかしら? 新入生代表はエドがやるんですの?」
「今年はジェラルド殿下が居るからね、僕の出番はないよ。」
例年ならプレイスメントテスト1位が新入生代表挨拶をするんだけど、王族がいるときは王族になるのよ。 まあワタシとしてはその方がいいわ。 別に目立ちたくもないしね。 その代わりあいさつの台本はワタシが考えてあげたのよ。
リズと他愛もない話をしながら人波に逆らわず歩いて講堂に入ると、聞きなれた若干うざい声が聞こえて来た。
「うーーっす。 エドにエリザベス嬢」
「ごきげんよう、アイオス様」
「アイオス、君..... 見かけなかったけどいつ寮に入ったの?」
「へへ‥‥ 実は夕べ。 いやさあ、忘れてたわけじゃないんだよ、忘れてたわけじゃ!」
‥‥‥はぁ~、忘れてたのね。 ていうか侍従はどうしたのよ!主人がしっかりしてないんだから部下がしっかりしないとだめじゃない! と、ワタシがアイオスに呆れているとジェラルドの挨拶が始まった。
「ほぅ‥‥ 本当に素敵ですわ‥‥ジェラルド様‥‥」 「ご覧になって、あの青い瞳‥‥ 吸い込まれそうですわ…」 「なんて凛々しいお姿なのかしら‥‥」 「でも、わたくしはやっぱりエドナーシュ様一筋ですわ」
メインヒーローであるジェラルドは見た目だけは金髪碧眼の正統派イケメン王子様ね。 壇上に立っただけで周りの令嬢達から黄色い声が上がったわ。 まあ、王子だけあって外面はいいのよねー。 あ、どなたか知らないけど最後の人、ワタシを持ち上げてくれてアリガトウ。
「暖かな春の訪れとともに、今日この日を貴君らと共に迎えられた事を心から嬉しく思う――――――‥‥ 」
ジェラルドが代表挨拶をしている中、ふと周りを見渡していると先日ジェラルドイベントを起こしていたヒロインちゃんの姿が見えた。 確か名前はアンジェリカだったわね。 あら?気のせいかしら‥‥ 彼女ジェラルドを見て睨んでいるような‥‥。 え、でもこの間ルートに入ったのよね? どう言う事なのかしら? と考えていると、ふいに彼女がこっちに振り返り、バッチリと目があった。 すると見る見るうちに彼女の目が見開いたわ。 見られてる.... 見られてる..... めっちゃガン見されてるわ.....。
あまりの居たたまれなさにワタシから目を逸らしたわよ。 一体なんなのよ、もう。
そんな高度な(?)心理戦を繰り広げている間にジェラルドの代表挨拶は終わったらしい。 盛大な拍手の中ジェラルドが壇上を降りると、今度は在校生代表挨拶が始まる。 挨拶は生徒会長のリオンね。
リオン・フォン・サルーシュ。肩までのさらりとした艶やかな黒髪と切れ長のブルーの瞳、頭の良さを体現するような銀縁眼鏡にすらりとした体躯の、 隣国レブランドとの国境を守護する辺境伯サルーシュ家の次男よ。 これで隠れキャラ以外の攻略対象が出揃ったわね。
0
お気に入りに追加
20
あなたにおすすめの小説
懐妊を告げずに家を出ます。最愛のあなた、どうかお幸せに。
梅雨の人
恋愛
最愛の夫、ブラッド。
あなたと共に、人生が終わるその時まで互いに慈しみ、愛情に溢れる時を過ごしていけると信じていた。
その時までは。
どうか、幸せになってね。
愛しい人。
さようなら。
最愛の側妃だけを愛する旦那様、あなたの愛は要りません
abang
恋愛
私の旦那様は七人の側妃を持つ、巷でも噂の好色王。
後宮はいつでも女の戦いが絶えない。
安心して眠ることもできない後宮に、他の妃の所にばかり通う皇帝である夫。
「どうして、この人を愛していたのかしら?」
ずっと静観していた皇后の心は冷めてしまいう。
それなのに皇帝は急に皇后に興味を向けて……!?
「あの人に興味はありません。勝手になさい!」
運命の歯車が壊れるとき
和泉鷹央
恋愛
戦争に行くから、君とは結婚できない。
恋人にそう告げられた時、子爵令嬢ジゼルは運命の歯車が傾いで壊れていく音を、耳にした。
他の投稿サイトでも掲載しております。
結婚なんて無理だから初夜でゲロってやろうと思う
風巻ユウ
恋愛
TS転生した。男→公爵令嬢キリアネットに。気づけば結婚が迫っていた。男と結婚なんて嫌だ。そうだ初夜でゲロってやるぜ。
TS転生した。女→王子ヒュミエールに。そして気づいた。この世界が乙女ゲーム『ゴリラ令嬢の華麗なる王宮生活』だということに。ゴリラと結婚なんて嫌だ。そうだ初夜でゲロってやんよ。
思考が似通った二人の転生者が婚約した。
ふたりが再び出会う時、世界が変わる─────。
注意:すっごくゴリラです。
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。
【完結】烏公爵の後妻〜旦那様は亡き前妻を想い、一生喪に服すらしい〜
七瀬菜々
恋愛
------ウィンターソン公爵の元に嫁ぎなさい。
ある日突然、兄がそう言った。
魔力がなく魔術師にもなれなければ、女というだけで父と同じ医者にもなれないシャロンは『自分にできることは家のためになる結婚をすること』と、日々婚活を頑張っていた。
しかし、表情を作ることが苦手な彼女の婚活はそううまくいくはずも無く…。
そろそろ諦めて修道院にで入ろうかと思っていた矢先、突然にウィンターソン公爵との縁談が持ち上がる。
ウィンターソン公爵といえば、亡き妻エミリアのことが忘れられず、5年間ずっと喪に服したままで有名な男だ。
前妻を今でも愛している公爵は、シャロンに対して予め『自分に愛されないことを受け入れろ』という誓約書を書かせるほどに徹底していた。
これはそんなウィンターソン公爵の後妻シャロンの愛されないはずの結婚の物語である。
※基本的にちょっと残念な夫婦のお話です
【完結】悪役令嬢エヴァンジェリンは静かに死にたい
小達出みかん
恋愛
私は、悪役令嬢。ヒロインの代わりに死ぬ役どころ。
エヴァンジェリンはそうわきまえて、冷たい婚約者のどんな扱いにも耐え、死ぬ日のためにもくもくとやるべき事をこなしていた。
しかし、ヒロインを虐めたと濡れ衣を着せられ、「やっていません」と初めて婚約者に歯向かったその日から、物語の歯車が狂いだす。
――ヒロインの身代わりに死ぬ予定の悪役令嬢だったのに、愛されキャラにジョブチェンしちゃったみたい(無自覚)でなかなか死ねない! 幸薄令嬢のお話です。
安心してください、ハピエンです――
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる