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154話.異世界の放浪画家、過去の面影を見つける。(閑話)

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 僕の名前は佐藤初サトウハジメという。
 俗にいう異世界転生を行い放浪の旅をしている画家である。

 元々から、絵を描く事が好きで死ぬ前も絵を描いていた。
 僕を転生させた女神に頼んで、この世界でも絵を描かせてくれと頼み、コッチの世界でも絵を描ける環境を自在に取り出せるスキルを持っている。
 それと魔法が使う事ができる……。

 30過ぎても魔法使いだったら魔法が使えるって話が、こんな形で実現するとは思わなかった。
 しかし、先日は軽く餓死寸前になりそうでヤバかったな。
 砂漠を抜けた直後に道に迷うとは思わなかった。

 見知らぬお姉さんが僕を助けてくれた。
 もし彼女がピンチの時は僕が助けてあげよう。

 ある時は貴族――そして、またある時は放浪画家。
 そして、悪事を裁いてが回るのがこの私の趣味である。

 この[サドタの街]には、子供を無理やり働かせるド外道のなる人物がいるらしく。
 その悪事を裁く為、砂漠を抜けてきたのはいいが道に迷い餓死寸前になった。
 僕は女性から貰った食料おにぎりによって命を救われたのである。

 紆余曲折はあったが、当初の目的地の[サドタの街]に着いたので、くだんの飲食店に行ってみるとしよう。

 件の飲食店は、なんと言おうか異世界感をぶち壊す素敵仕様だった。
 な、何故? 屋上に太陽光パネルがあるんだ?
 売っているモノがよりによって、ハンバーガーとコーラ?

 お店の中を見回すと子供がチョコチョコと食器を片付ける姿が見えた。
 いたいけな子供達を無理やり働かせる外道ニカイドゥー!! この私が成敗してやる。
 お店の前で張り込みを行い一週間が過ぎた。
 こ、来ない。な、何故? ニカイドゥーは、お店から出てこないのだ!!

 しかし、ニカイドゥーらしき人物は1週間以上お店を張っても出てくる気配がなかった。
 もしや、僕の気配を察して裏庭から逃げ出してるのではと考えた。
 そして、僕は警備の冒険者の制止を振り切り裏庭へと突入した。

「あのぉー、お客様。
 ここは関係者以外は立ち入り禁止ですよ」

 お店の従業員と思われる腰の低い男が私に注意してきた。

「ココに、ニカイドゥーという男が現れているんだろう?」

「ニカイドゥー?
 あぁ、二階堂ですね。それなら私ですが?」

「お前が、子供達を無理やり働かせる外道のニカイドゥーか?
 この僕が来たからには成敗してくれるわ!!」

「ファッ!?  な、なに言ってるんですか!! お客様?」

 僕はこの悪漢ニカイドゥーを成敗する為に武器を構えた。

 ニカイドゥーに「その武器を降ろせ!!」と言われ、彼からの異常なまでの圧を感じ武器を降ろした。

「お客様どうされたのでしょう?
 子供達が無理やり働かされていると言われてますが、働いている子供達をみて無理やり働かされてるように見えますか?」

 お店の中で子供達が凄くイイ笑顔で一生懸命に働いている。

「確かに私は孤児院の子供達に寄付する代わりに、子供達に働いてもらってます。
 しかし、これも社会活動の一環として働いてもらってるんです。悪事呼ばわりされるのは流石に心外ですね」

「ごめんなさい……。
 噂と全く違っていて貴方が一向に現れなかったんで、つい行動に出てしまいました」

「まぁ子供達の為って事で今回は許しますけど……
 次に、やったら牢屋に叩き込みますよ」

 相手は商人なのだが、何故か勝てる気がしない……

 ぐぅぅぅうーー と、大きな腹の音が響いた。

「あら……お腹が空いてるんですね。
 貴方が何者か教えてくれたら食事を用意しますよ」

「僕は旅の放浪画家なんだな。
 お腹が空いてるんでオニギリが食べたいんだな」
 ……と、某画伯のドラマみたいなセリフでこの場を誤魔化そうとした。

「ブッ!!  アンタは某画伯のつもりか!!」と、商人の男から鋭いツッコミが入った。

「え? あなた日本人?  
 しかも、このネタが解るのなら、ソコソコ年齢いってますよね?」

「もしかして、転生者? 
 ちょっと社長室に来ようか?」

 二階堂という男の指示通り、僕は社長室についていった。

「さっき言ってた、オニギリだけど。ホレッ」と言って、オニギリを皿ごと手渡して来た。

 あぁ、オニギリを【アイテムボックス】に入れてたのか。

「塩握りだが米は日本のヤツだ。
 たまに昼食を食べに帰れないから、弁当として作り置きしてるんだよ」

 僕は、オニギリを一気に貪るようにして食う。
 懐かしい味だ……何故だろう懐かしい味に涙が出てきた。

「二階堂さん。アンタいい人だな」

「まぁ、先に自己紹介をしておくよ。
 私は二階堂始。転生者で現在商人をやっている」

「僕は、佐藤初だ放浪画家をしている。
 一応画家として教会のお抱え絵師として有名になって貴族の地位を持っている」

「君もハジメなのか? 奇遇だな?」

「それじゃ、お互いの職業で呼び合うか? 商人の旦那」

「そうしよう。画家の旦那」

「それで、私が悪さしてるってドコからの情報だったんだ?」

「あぁー。砂漠を抜けた所にある小さな村さ、そこで軽く聞いた話だったよ」

「画家の旦那は、放浪画家って言ってたが実際の職業とは違うよな?」

「あぁ、色々と逃げ回ることが多くて職業は盗賊やってるよ」

「逃げ回るって、何か悪さでもしたのかい?」

「あぁ、娘達といつも編集みたいな連中に追われてる」

「画家の旦那も難儀なモンだな……
 ただ、それ程に有名な画家ならば、いつか描いてもらいたい絵が一枚あるな」

「どんな絵だい?」

「あぁ、家族の団欒かな」

「それなら、手が空いた時にでも描いてやるよ」

「おう、ありがとよ!!」

「しかし、なんだって私を成敗しようと思ったんだ?」

「ああ、それは趣味だ? 金もあるし地位もある。
 私は勇者でもないからモンスター討伐する必要ないから世直しでもしようと思ってな。
 この世界は色々と悪事が多いので、放浪画家しながら悪事を探してる」

「変わった奴だな画家の旦那」

「いやいや、アンタも負けてないだろ」「そりゃ、そーだ」

「「あははははは」」

 それから、画家と商人の二人で色々と話し合い意気投合して4ヶ月後に一緒に狩に行くという約束を取り付けた。
 商人の旦那から、お屋敷の一室を間借りさせてもらうことになり転送の魔道具の使用許可をもらえた。
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